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技を「つかいきる」器づくり、やってみました Vol.02

2021.12.10

技を「つかいきる」器づくり、やってみました Vol.02

あなただけの一枚との出会いを。

私たちは日々さまざまなものをつかいながら暮らしていますが、大切に「つかう」ことはできているでしょうか? なんでもすぐに手に入る世の中で、ものを丁寧に扱い、長く付き合っていくことが少なくなったように感じます。そんな現代だからこそ、じっくりとものに向き合うことで新鮮なよろこびを発見できるのではないでしょうか。例えば、当たり前のようにいつもそこにある『器』。器ができる背景に、どんな「技」がつかわれているのか思いをはせたことはありますか? 信楽焼の窯元、丸十製陶さんとのモノづくりを通して、職人の技に魅せられてきたプランナーが、窯元の職人さんたちの技術をフルにつかいきったモノづくりにトライしてみました。そこには、丸十製陶の山野さんと、GO BEYOUDの田中さんのお二人のコラボレーションがあり・・・「おもしろいモノづくりをしたい!」という思いを共有した3人が、60枚以上ものサンプル制作を経てついに出来上がった器のストーリーを3人の対談でお送りします。

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山野耕司さん

1937年創業の信楽焼の窯元「丸十製陶」の商品企画本部長。器づくりでいちばん楽しいのは、土と釉薬の組み合わせを考えているとき。

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田中圭さん

暮らしの道具をプロデュースするGO BEYOND代表。自身のブランドでも山野さんと商品企画をしていて、旅や音楽からインスピレーションを得たものづくりが信条。

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矢野

フェリシモの生活雑貨プランナー。長くつかうことのできる物に魅力を感じていて、小学生のころ使っていたマグカップを今も使っている。

矢野雄大 矢野雄大

「技術をつかいきる」器づくりですが、具体的にはどのような工程を経てこんな独創的な器ができあがるのか聞いてみたいです。

山野 山野

まず土についてですが、実は元々の使う土っていうのに何十種類もレシピがあるんですよ。それは、うちはうち、個人の作家さんは個人の作家さん、自分たちが使う釉薬と相性がいいようにとかで土を選びます。

田中 田中

今回の一期一会の信楽焼小皿の場合は3種類の土をが使われています。お皿の裏側を見てもらえればわかりますよ。例えば「Snow and Ice(氷雪)」だったら白土、「Lagoon(ラグーン)」だったら赤土、というふうに。

器の裏面。土の色や釉薬の垂れがまさに自然のままに見てとれます。 器の裏面。土の色や釉薬の垂れがまさに自然のままに見てとれます。
山野 山野

そして次に釉薬。例えば「Lagoon(ラグーン)」だったら、2種類の釉薬を掛け合わせることにより緑にも青にも見える表情に焼き上がります。釉薬の掛け合わせ方によって、ひとつひとつが生き物みたいに表情が違ってきます。

釉薬掛けの作業の様子。 釉薬掛けの作業の様子。
2種類の釉薬を掛け合わせた「Lagoon(ラグーン)」。緑にも青にも見える表情に焼き上がります。<br />
2種類の釉薬を掛け合わせた「Lagoon(ラグーン)」。緑にも青にも見える表情に焼き上がります。
矢野 矢野

この柄は、貫入の入り方もそれぞれですよね。

矢野 矢野

ですが今回は、職人の技術を使いきることを楽しんでいただくために、その個体差を個性として楽しんでいただければ、という企画です。例えば「Northern lights(オーロラ)」の焼きあがりは、こんなに表情豊か!どれも自然の神秘的な印象を感じることに変わりはありません。ひとりひとりのお客さまのもとに、どの「Northern lights(オーロラ)」が届くのかもお楽しみいただきたい、という商品です。

山野 山野

さっき窯で取り出したときにパキッパキッていうてたのは、大きなところから(貫入は)入っていくんですね。そっからチチチチチって細かい部分に入ってきます。

矢野 矢野

そして使っていけばいくほどさらに増えていく。

山野 山野

貫入っていうのはね、延々入り続けるんです。なので器を使いながら、使い込んで、グーっと風合いを出していく楽しみがあります。

田中 田中

自分で育てながら雰囲気を出していくと愛着が湧いてきますよね。

矢野 矢野

土、釉薬と来て、あとは「火」も大切な要素ですよね。

焼きあがって窯を開けた瞬間。 焼きあがって窯を開けた瞬間。
矢野 矢野

「窯変」(※窯の中の火の入り方で予期せぬ色や文様に変わること)の表情がいちばんわかるのがこの「Deep Woods(奥深い森)」です。この色目は以前から信楽の石を含んだ土と窯変でなにかを作りたい!と考えていたものです。土は鉄分を多く含んだ荒目の土で、二種類の緑色の釉薬を掛け合わせることで、変化に富んだ窯変の表情が生まれました。今回の6柄の中で焼き物の神秘性がいちばん高くて、思い入れのある焼き上がりになりました。

山野 山野

そうなんですよ。なのでね、結局一番大事なのは僕たちがふだん知り尽くしてる、使いこなしてる釉薬じゃないと、絶対手は出せないんです。主成分が分かってないっていうのと、癖が分かってないので、もう無茶苦茶なことになってくるっていうのがあるので、基本はこういう感じなんですよ。ウチも50-60種類くらいの釉薬を使い込んでて、そこに動きやすい変化を遂げてくる釉薬ってなると十何色まで絞られてくるんですよ。あとは縦軸横軸の組み合わせなんです。でもここまでの組み合わせのことをするのはふだんはないから、、、こんな65種類のサンプル作成とはこういう企画をやらない限りはありえないんですね。なのでそれだけでも十分やったことのない表情が出てくるんですね。

矢野 矢野

そんなふうに計算されて、再現可能な技に落とし込まれた中で焼き物って作られているんですよね。たくさん決まりごとがある中で存分に技術を発揮しているという感じが、とてもおもしろいなと思って。なんか、知ってるからこそ遊べるみたいな感じがして。

山野 山野

結局ね、感覚っていうものって、持ち合わせてる人はねそれなりにいけるんですよ。でも先ほども見ていただいたように、窯場には近所の主婦がいたりとか、そういう人たちもいてる中でウチはやってるというとこをですね。ここがいつも、僕の商品開発のいつもの基準なんですよ。行き過ぎることは絶対できなくなるし、その担当者を苦しめることになってしまうんですよ。なのではじめにちゃんと歩む道を付けるっていう、あとは(自然に)もたれかかっていいところと、絶対コントロールしないとダメなところをきっちり棲み分けして伝えていくっていうことをしないといけない。僕たちは個人工房とか作家さんじゃないので、あくまでも商品で、素人でも一週間やってくれたら絶対このものはちゃんとあがってくるっていうラインの作り方をしてないと、1ヶ月経ったら全然モノが変わってることがないようには心がけるんですね、はじめに。なので、先ほどもお伝えしたみたいに、こう釉薬をかけるっていることを徹してくれてたら、あとは勝手に火と釉薬が動いてくれるのでっていう方が絶対素直なんですよね。

矢野 矢野

聞けば聞くほどおもしろくて神秘的ですね。そして、その神秘的な部分を、しっかりした技術によって支えて作られる器。そんな、この信楽焼の器をどのように使っていただきたいですか?

山野 山野

ひとつひとつの器を、ご家庭で日々使うことで物語が始まっていきます。抹茶茶碗の古いのがすごくいい!っていうのは、百年とか何十年っていう使い込みによる趣なんです。この器もそんな変化を楽しめるものになっています。

田中 田中

まさに「一期一会」の器、届いたモノを、あなただけの世界にひとつの器として楽しんでいただきたいです。

次回は、すべて表情が異なる一点もの、自然が生み出す窯変が美しい「一期一会の信楽焼小皿」の6枚をご紹介します!

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