menu

しまう

menu

しまう

にぎるって愛!おばあと孫のおにぎりストーリー【第1話】

2022.4.14

にぎるって愛!おばあと孫のおにぎりストーリー【第1話】

11年間、7000個以上、孫のためにおにぎりを作り続けているおばあと、それを食べ続けている大迫知信さん。彼らのおにぎりには、どんな愛が込められているのでしょうか。第1話は、孫を支え続けるおばあのおにぎりの始まりのお話しです。

profile

大迫 知信(おおさこ とものぶ)

ライター。大阪府在住。2011年、勤めていた電力会社を辞め、京都芸術大学文芸表現学科に入学。生活費を浮かすため大阪の祖母の家の近くに住み、料理を作ってもらうようになる。この祖母の手料理を「おばあめし」と呼び、ブログやSNSで発信。工夫を凝らした晩ごはんや、ランチのおにぎりが話題となる。

profile

おばあ

6000個以上のおにぎりを作ってきた大迫さんの祖母。今年米寿を迎える。 他では見ないユニークなおにぎり作りが得意。

おばあのおにぎり7000個

昼食におばあの作るおにぎりを食べ続けて、もうすぐ11年がたつ。数年前まで朝ごはんにも食べていたから、僕のお腹に消えた『おばあのおにぎり』はざっと7000個。はじめは20代だった僕も、いつの間にやら30代後半のアラフォーだ。体調も体脂肪も気にせず、大量のごはんのかたまりをガツガツ平らげていたころが懐かしい。それもこれも、はじまりはおばあのひとことからだった。

おばあめしの始まり

 2011年、僕は勤めていた会社を辞め、以前の経歴とはまったく違う分野で学ぶため大学に入学した。当然、収入はなくなり、学費と生活費をすべて貯金でまかなうことは難しかった。それを可能にしたのが「ごはんくらい作ったる」という、おばあの心強いひとことだった。

 大学入学のタイミングで、僕はおばあの家の近くのボロい倉庫の一室に引っ越した。晩ごはんはおばあがひとりで住む家に食べに行き、朝と昼用のおにぎりも作るから持って帰ればいいと、おばあが提案してくれた。

 朝と昼は食べに行くのではなくおにぎりを持ち帰るのは、大学にも持っていけてしっかり勉強できるからというおばあの優しさ……だと思ったら「朝も昼も来られたら面倒や」というもっともな理由だった。

 とはいえ、さすがにおにぎりオンリーはきついかも……。朝ごはんならまだしも、ランチにおにぎり単体は勘弁してほしい。という身のほど知らずの不安が湧き上がってきた。コンビニのおにぎり弁当も、たまご焼きとウインナーくらいは入っているし、当時20代だった僕にはおにぎりだけでは物足りないと感じたのだ。

おにぎりは出陣の合図

 それから初めて昼のおにぎりを作ってもらった日、おばあが差し出したのは、本当におにぎりだけだった。しかも想像の2倍以上の大きさで、ごはんがぎゅっと詰まってずしりと重い、流行りの糖質制限とは正反対のおにぎりだ。

 ガブリとかじれば……今、僕は米を食っている!と実感させられ、気分はまさに合戦にのぞむ足軽だ。遠くからほら貝の出陣の合図が聞こえてくる気さえして、たちまちやる気もみなぎってくる。

おにぎりにつまったおばあのエール

 このおにぎりにつまっているのは、ご飯粒だけじゃない。僕の祖母、おばあの、これ食べて頑張れや!という熱いエールもこもっている。僕の意識の奥底でほら貝を吹いているのは、おばあに違いない。
ごはんは少し固めでほどよく塩が効き、噛めば噛むほど甘みが出てくる。シンプルだからこそ、米のおいしさがダイレクトに感じられる。そして具材は、瓶詰のフレークではなく焼いた鮭の身がゴロっと入っていた。

 この最初のおにぎりが、新たな生活への不安を打ち消してくれた。サッと食べられておいしくて、ひとつでお腹も満たされ闘志まで湧いてくる。こんな食べ物は『おばあのおにぎり』意外に考えられない。

 その後、おばあは持ち前のサービス精神と独創性を発揮して、見たこともないおにぎりを作ってくれるようになった。とはいえ、どんな形になってもその大きさと、僕のやる気を鼓舞してくれることに変わりはない。今日も昼食後の気だるさを、おばあの出陣の合図が吹き飛ばし、僕は全速力で動き出す。

第2話はこちら

この記事はいかがでしたか?

  • やってみる

  • ジ〜ン

  • ひろめたい

  • メモメモ

~ Thank You! ~

みんなの感想みんなの感想

  • 1. naoさん 2022年04月27日 13:51

    「具材は、瓶詰のフレークではなく焼いた鮭の身がゴロっと入っていた」のところで、実家の「おにぎりエピソード」を思い出しました。
    朝ご飯のときに、姉に「卵焼き食べて、食べて」としつこく言っていた母。原因は何だったか忘れましたが、食べずに学校へ行った姉は、お弁当を広げてびっくり。おにぎりの中味が、朝食で食べなかった卵焼きだったそう。
    おにぎりには、作る人のなんとも言えない愛情が乗っかってるんだなーと、この記事を読んで改めて思いました。
    それと……文章上手いですね!

  • 2. ミミママさん 2022年05月25日 19:18

    私も、そんな愛情あふれるおばあちゃんになりたいです。

  • 3. うたばあさん 2022年05月25日 20:03

    私の孫はまだ離乳食中。なので、おばあのおにぎりは、まだ未経験。
    食べられるようになったら、こんなふうにパワーとラブをいっぱい込めたおばあおにぎりを作ってあげたいです。
    でも実は、息子たちには、私のおにぎりは不人気‥美味しく作れるように今から修行しなきゃー‼️

  • 4. けいたままさん 2022年06月29日 16:36

    心温まるお話(о´∀`о)
    今、お弁当は、おにぎりだけでいい!という旦那さんに毎日巨大おにぎりを作る私です。大切な人の為に毎日違うおにぎりを考えて握る。おばあさんも毎日楽しみだったに違いない(^^)今日は、どこをかじっても、具があるように考えて握りました。中身はたらこ、梅干し、昆布です(笑)ほっとするお話続きが楽しみです。

  • 5. おこチャンさん 2022年07月18日 15:16

    私達夫婦と義母とで初めて高尾山に登った時に義母が作ってくれた焼きシャケが入ったジャンボおにぎりのことを思い出しました。食べるものなんか現地で買えばいいのに‥と思ってしまったのですが、山頂に着いて食べたおにぎりの美味しさと言ったら言葉に表せませんでした。義母はきっとそれをわかっていて私達に食べさせたかったのだと思います。
    あの時現地で買えば‥などと思ってしまった自分を反省しました。この次に山登りをする時はお手製のジャンボおにぎりを持って行きます!

記事の感想をおくる

  • THANK YOU♡

あなたの前の読者が
を押しました!