2022.10.14
からだのこと、友達や家族や周囲の人と話していますか?
「なかなかわかってもらえない」「話しづらい」そんな風に思ってしまう背景は、実は少し根深いものなのだとか。わたしたちは、どんな言葉で、どのように話していけばよいのでしょうか。産婦人科医の宋美玄さんとモデルの前田エマさんがじっくりと語り合いました。
文/アケミン 写真/高見知香
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宋美玄さん
産婦人科専門医・医学博士・FMF認定超音波医。2017年に「丸の内の森レディースクリニック」を開業。最新刊に『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』(小学館) ほか著書多数
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前田エマさん
ファッションモデル。東京造形大学在学中からモデル、エッセイ、写真、ペインティングなど幅広い分野で活動。2022年6月に初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓
前田さんは、モデル仲間やお友達とからだについて話すことはありますか?
友達とは、生理について結構オープンに話をしていますね。「今日は生理痛がしんどいから、明日一緒に遊ぶ予定を別日に変更してもいい?」とか。昔から「今日、生理だから最悪~」とわめいても、弟も「大丈夫~?」といろいろと助けてくれましたね。そういう意味では、からだの変化や不調について周囲と話しやすい環境なのかなと思います。
それぞれにからだが不調な時期があることを理解して、伝えあえる環境、とても素晴らしいですね。
ただ、からだについての知識は、あまり自信がないかも。私、今回の対談がきっかけで、はじめて“フェムテック”という言葉を知ったぐらいですから。
月経時にたとえ体調が悪くても、職場などでは周りの人から十分に理解してもらえないこともありますよね。「具合が悪くても男性の上司には言い出しづらい」「女性の先輩にもわかってもらえない」という話も耳にしました。残念ながらコミュニティによっても差があるのかもしれませんね。
生理については、正しい理解が広まっているとは言えませんよね。今、職場で管理職についている40代~50代は、義務教育の過程で性にまつわる正しい知識を学んだり、親ときちんと性について話す機会もないまま大人になった世代なんです。
そうなんですね。
私が小学校高学年のころは、女子が体育館に集められて、生理についての授業を受けて、そのとき男子はというと校庭でドッジボールをしている……という時代でしたからね。
保健体育の授業も男女が別々だったんですね。私は今、29歳なんですが小学校のときは、生理用ナプキンを男子も女子も一緒に触って説明を受ける授業がありました。先生もすごくマジメに話していたので、みんなとても真剣に聞いていましたね。
どんな性教育を受けてきたって、世代によってかなりバラつきがありますよね。男性だけでなく、女性も男性のからだを知ることはもちろん必要ですし、正しい知識を義務教育の場で得られる機会がないまま大人になってしまうと、性に対するタブー意識が根付いてしまうこともあります。
からだのことって、生きていく上ではとても大切なこと。性教育の機会は、誰しも同じように与えられるべきですよね。
ご家庭でもからだのことについて話すのは、なかなか難しいと思っている人も多いですよね。いざ母さんから娘さんになにか聞かれても、必ずしも正しい知識があると限らない。「生理は大人になったら来るもの。病気じゃないんだから我慢しなさい」とか「温めておけば生理痛は治る」など、ときにあやまった知識を伝えてしまうことも懸念されます。
今はYouTubeなどで子どもに正しい知識を啓蒙する動画を発信している人もいるので、そういう動画を使ったりするのも手ですよね。
子どもって思った以上に早い段階から、固定観念や偏見をインストールしてしまうんです。
話が少しそれるけど、私の知り合いにゲイの男性がいて、うちの娘もよく彼と遊んでもらっているんですね。娘は無邪気に「●●のおじちゃんのパートナーは男性なんだよね~」となんの偏見もなく話していますが、同じぐらいの年齢の子どもでも「男が男を好きなんてキモい!」と差別的な発言をすることもあるみたいなんです。
となると、中学校や高校になってから授業で「ジェンダー平等」について話を聞いても、ちょっと遅かったりするんですよね。
からだについてきちんと話し合える機会もない一方で、逆にSNSなどでは「これって本当かな?」という情報も目にすることもあります。
ネットの情報は玉石混交、情報リテラシーを身につけるのも大切ですよね。
正しく見極めるためのコツってありますか?
ひとつ言えるのは、「これさえやればいい」という言説は危険ということ。たとえば「このベルトを骨盤に巻くだけで痩せる」とか「布ナプキンを着けるだけで生理が軽くなる」とかね。
あとは「生理用ナプキンに含まれる有害化学物質は、腟の粘膜から吸収されて子宮にたまってしまう」などいわゆる”トンデモ”な言説も散見されます。
確かに子宮や卵巣って、自分では目に見えない部分なだけに「ひょっとして病気?」などと、不安を煽られてしまいますね。
ある程度の基礎的な学力と知識があれば「そんなわけないよね」と見分けられる話も多いですが、まずはSNSで名前や顔を出して発信している産婦人科など専門家を複数人フォローしてみるのもいいですね。
何人かフォローしてると「あれ? この人、なにか変なこと言ってるぞ」と気づくようになりますよ。
いまや例えば月経アイテムひとつとっても、布ナプキンや月経カップ、吸水ショーツやピルなどいろんな選択肢がありますよね。
そんな中では、まずは女性が情報を得て、さまざまな選択肢を知ること、そしてそこから自分の意思で選ぶことが大切です。
しかし全体で見ると、必ずしもそういった環境が整備されているわけではない。社会に対してそういった疑問を呈していくことも大切だと思います。
そのためにもわたしたちが話してみることが、ますます必要ですね!
やってみよう
からだやこころについて知ろう!
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あなたの心をくぐって出た、ほんとうの言葉が、やがて、社会のしくみごと変わっていくかもしれない。そのきっかけとなる試みと取り組みを、おとどけします。
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