「フェリシモ 地球村の基金」が今年支援したい6つの自立を支援するプロジェクト。その中から、世界をよりしあわせにするためのプロジェクトの1つをみなさまにご紹介します。
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はじめまして、難民を助ける会の紺野です。私たちはパキスタンで15年以上活動を続けており、現在は障がいのある子どもも、障がいのない子どもと一緒に学べるように、ハイバル・パフトゥンハー(KP)州でインクルーシブ教育の普及に取り組んでいます。
パキスタンの教育環境はとても厳しい状況にあります。政府の調査(2021-2022年)によると、学齢期の子どもの約39% にあたる2,620万人が学校に通えていません。特に女の子は教育の機会が限られており、2022年の調査では1,371万人の女子が学校に通えていないことが報告されています。たとえ入学できても、途中で通学を止めてしまう子どもも少なくありません。その背景には、学校にトイレが不足しているため、衛生面も深刻になり、特に女子児童が多い学校では待ち時間が長くなります。女子が通いづらかったり、机や椅子がなく床に座って学ぶしかないため体調を崩してしまったりと、環境面での課題が大きく影響しています。
そこで今回、私たちはアボタバード郡にある2つの小学校で、教育環境の改善を進めたいと考えています。1つ目は「ミルプール公立女子小学校」です。510人(男子210人、女子300人)が通う学校(パキスタンでは男子小学校が遠くて通えない男子は、女子校に通うのが一般的)で、隣接する女子中学・高校の生徒も教室不足のために一部小学校の校舎を使っています。ところが、これほど多くの児童・生徒がいるにもかかわらず、使えるトイレはわずか4基。校舎裏には壊れたトイレが3基ありますが、修繕のための資金が確保されないまま放置されています。校長先生からも、「必要なのはわかっていますが、政府からの年間予算は教室1つにつき6,300円程度で、授業に必要な消耗品や教材を購入するため、とてもトイレの修繕に回せないのです」と苦しい現状を伺いました。

影、KP州アボタバード郡)

もう一つの対象校は「アボタバードシティ公立女子小学校」です。子ども493人(男子208人、女子285人)が通っていますが、1年生から3年生の教室には机も椅子もなく、子どもたちは床に座って授業を受けています。アボタバード郡は冬の平均気温が10度を下回り、床は冷えきってしまいます。暖房もない教室で冷たい床に長時間座っていると、学習に集中できないだけでなく、風邪をひいたり、体調を崩す子どもも出ています。

さらに病気から身を守るための、手洗いや歯磨きの習慣が身についていません。また、生理についての知識の不足やトイレ問題を理由に、生理を迎える時に就学を止めてしまう女子児童もいます。
このように、トイレや学習環境といったごく基本的な環境が整っていないために、子どもたちが学ぶ機会を失ってしまう現実があります。私たちは、トイレの修繕、机や椅子を届ける支援、衛生教育の実施を通じて、子どもたちが安心して通学を続け、小学校を卒業できるよう後押ししたいと考えています。
小さな環境の改善が、子どもたちにとっては「学校に通い続けられるかどうか」を決める大きな分かれ道になります。今回の取り組みが、一人でも多くの子どもたちに学ぶ喜びと未来への希望を届けることにつながればと願っています。
〈主な活動内容〉
難民を助ける会では、安心して学び続けたいと願う子どものために、学校環境を整える3つの活動を進めます。まず、.ミルプール公立女子小学校では使えずに放置されているトイレ3基を修繕し、安心して利用できるようにします。次に、アボタバードシティ公立女子小学校にはテーブル付きの椅子130脚を届け、寒い冬でも床に座らずに勉強できる環境を整えます。そして両校で、手洗いや歯磨きなどの基本的な衛生教育を行い、病気を予防して元気に通学できるよう支援します。さらに高学年の女子には月経についての教育も行い、安心して学校生活を続けられるよう応援します。これらの取り組みを通じて、子どもたちが笑顔で学び、小学校を卒業できるよう後押ししていきたいと考えています。
〈期待される効果〉
今回の支援によって、子どもたちが安心して学校に通い続けられる環境が整います。ミルプール公立女子小学校ではトイレの修繕により、児童が我慢せずに利用できるようになり、通学をあきらめる要因を減らすことができます。アボタバードシティ公立女子小学校では、学習机・椅子の整備によって床に座らずに授業を受けられるようになり、寒い季節でも体調を崩さずに学習に集中できるようになります。また、両校で実施する衛生教育を通して、手洗いや歯磨きなどの基本的な習慣が定着し、病気の予防につながります。高学年の女子には月経に関する教育も行うことで、思春期を迎えても安心して通学を続けられるようになります。
こうした教育環境の改善は、女子児童の退学を防ぐ大きな効果があります。パキスタンでは、1,371万人もの女子が学校に通えていないとされ、その理由の一つにトイレ不足が挙げられています。日本では当たり前のようにある学習環境や衛生習慣が、ここでは子どもたちの未来を左右する大切な支えとなります。
学校は知識を学ぶ場であると同時に、友達と出会い、社会性を育み、心身ともに成長する大切な場所です。子ども時代という限られた時間を、少しでも安心して、楽しく過ごせるようにすることが、この支援の大きな効果です。
■パキスタン公立女子小学校における教育環境整備支援
実施場所:パキスタン ハイバル・パフトゥンハー州 アボタバード郡
実施期間:2026年1月1日~12月31日
・難民を助ける会(AAR Japan)さまのその他の支援活動はこちらから
「フェリシモ 地球村の基金」より、世界をよりしあわせにするための6つの自立を支援するプロジェクトの応援投票を2025年10月31日から11月13日まで行います。
期間中、応援したいプロジェクトを選んで投票することで、そのプロジェクトを応援することができます。(投票の数は、各プロジェクトへの拠出金額の参考にさせていただきます)
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