
―フェリシモの商品・サービス企画の根底にあるサステナビリティ・ストーリー―
事業性、独創性、社会性が重なり合い生み出されるフェリシモならではの商品やサービス。 この連載では「社会性」にフォーカスし、プロジェクト担当者たちの想いをお伝えしています。
今回ご紹介するのは、2023年に始動した「オールライト研究所」。前編ではイベントや商品の取り組みを紹介しましたが、後編では、商品企画や対話の場づくりを通して見えてきた筧さんの気づきや、フェリシモだからこそ実現できる「そのままでいい、そのままがいい社会」のあり方について伺いました。
話し手:筧麻子さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
垣根のない対話が無意識のフィルターを外す

9月に開催した「スナックAllright」では、カジュアルな雰囲気の中、視覚障がい者と晴眼者が同じテーブルで、事前に参加者からいただいた質問を手がかりにざっくばらんに語り合ったといいます。実はこのイベント、筧さんが仕事で万博の会場を訪れた時に、車いすで来場された方々を見かけ、ふと、「みなさん、普段はお酒は飲まれるのかな?」と素朴な疑問を持ったことがきっかけになっています。
筧さん:自分の中で、無意識にフィルターをかけているのでは?という疑問があったんです。例えば、居酒屋であまり車いすの方をおみかけしないことで、お酒を飲まれる方が少ないのかな、といった思い込みです。そうした素朴な疑問を安心な場で対話することで、お互いの理解が少しずつ、進むのではないかなと思ったんです。
スナックという場の設定でゆるりとした雰囲気を作ることができ、会場では参加者同士でお話が盛り上がっていました。例えば、話題の一つとなったタッチパネル。便利になった一方で、点字などがついていないため、視覚障がい者の方には使いづらいという課題があるそうです。
筧さん:こういった話も、聞いて初めて気づいたことです。また、会場までの導線で点字ブロックが途切れているところがあったため、希望者には駅までの送迎を行いました。改めて、”合理的配慮”とは何か?を考える機会になりました。

使いやすく工夫された商品を身近な価格で
筧さんが商品開発やトークイベントを通して得た気づきのひとつが、フェリシモならではの価格設定。オールライト研究所のアイテムは、シャツが4,900円、コートが17,900円と手に取りやすい価格です。それまでの活動では、フェリシモならではの価格設定が当たり前だったので、自分たちでは気づけませんでした。「この価格なら洗い替え用にもう一枚買える」と言ってくださった方もおられます。
筧さん:アドバイザーさんからいただいたお声のなかで、「これまでは、特別な位置づけの作品としては向き合ってもらえたけれど、製品としては対象にならなかったことも多かったように思う」という意見がありました。わたしたちは、いろいろな方を対象にし、またプランナーの努力もあって、この価格に設定できているのかなと思います。

その例として、以前インタビューで木戸さんが挙げてくださったのがハンドソープのポンプのお話です。筋力の低下でプッシュ式のものを使うことが難しくなり、自動のディスペンサーを使い始めたのですが、当初は1種しかなかったものが、コロナ禍で非接触需要が高まり、多様な商品が登場したのだそうです。
筧さん:「ここに需要がある」と気づけば市場が動く。たくさんの人が使うようになったら進化しやすくなる、そんな研究をオールライト研究所では続けていきたいなと思っています。
マイノリティとは、特別な誰かのことじゃない

筧さん:オールライト研究所の活動は、「インクルーシブデザインだね」と言っていただくことが多いのですが、自分たちでは「マイノリティデザイン」を意識しています。
マイノリティデザインとは、単に弱さを補うのではなく、むしろその弱さを社会の“伸びしろ”として捉える考え方です。たとえば、物をよくなくしてしまう、道に迷いやすい……そうした日常のささいな困りごとも、広い意味でマイノリティととらえ、「できないことを、そのままでどうやったら生活できるか、一緒に考えてみよう」という発想で、今までの商品を見直してみたり、新たなきっかけを生み出していく。フェリシモではこれまでも、左利きの方のためのカタログや、レジカゴにすっぽり収まるリュックなど、個別の困りごとや生活に寄り添うアイテムをかたちにしてきました。
筧さん:例えば「朝急いでいて、ネックレスをポケットに入れて出社したら、くしゃくしゃに絡まっていて困ったひと」のためのネックカフであってもいいんです。そういう視点で見ると、誰もが何かしらマイノリティな部分を持っているのではないでしょうか。自分もそのひとりだと思えたら、もう少しやさしくなれる。そんなふうに思うんです。
想像する力が、みんなの「そのままでいい」を実現していく
現在も、日用品の開発やアクセサリーの新展開が進行中。一人ひとりの感性や小さな“困りごと”を出発点にした商品開発と並行し、イベントや対話の場も広げていく予定だという筧さん。2025年12月5日には2回目の「スナックAllright」も予定されており、「自分のマイノリティ性」について考えてみるテーマを検討中です。

また、オールライト研究所の商品を知った理学療法士さんが、利用者さんに紹介してくださるなど、届けたい人たちに少しずつ広がりはじめています。リアルな出会いも大切にしながら、もっと多くの方に知っていただける機会をつくっていきたいと筧さんは話します。また、いろいろ方とお話をする中で、ある方から聞いた話が印象的だっという筧さん。
筧さん:「ある日、朝起きたら全盲になっていた」という方とお話する機会があったんですね。「そんなことってあるんだ」と。障がいは誰にでも起こり得るもの。そのとき、生活を支える工夫やアイテムを少しでも知っていれば、前向きに生きられるかもしれない。だから、自分とは違う誰かを想像してみることが大事だと思うんです。
オールライト研究所の提案は、特別な誰かのためだけでなく、“今ここにいる自分”にもつながっています。日常の小さな不便や違和感に目を向けることで、「そのままが楽しい暮らし」はより多くの人へ広がっていくはず。これからの展開にも、ぜひご期待ください。

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