
―フェリシモの商品・サービス企画の根底にあるサステナビリティ・ストーリー―
事業性、独創性、社会性が重なり合い生み出されるフェリシモならではの商品やサービス。 この連載では「社会性」にフォーカスし、プロジェクト担当者たちの想いをお伝えしています。
今回ご紹介するのは、2023年に始動した「オールライト研究所」。コピーライターの澤田智洋さんが提唱する「マイノリティデザイン」をテーマに、誰かの“弱み”をきっかけに、誰もが「そのままでたのしい、そのままがたのしい」社会を目指す取り組みで、アパレル商品を企画したりイベントを実施したりしています。この記事では、2024年にリリースされた「one hand magic(ワンハンドマジック)」の企画背景と、リアルイベントを通じて見えてきた気づきをご紹介します。
話し手:筧麻子さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
リアルで広がる、共感とつながり
2025年、「オールライト研究所」は共感の輪をさらに広げるために、さまざまなリアルイベントを開催しました。4月には大阪・関西万博の会場で展示を、5月は梅田にて試着・展示・トークの複合イベントを実施。また、6月は東京にて「インテリア ライフスタイル 2025」の中の「インクルーシブデザイン展示」に参加、そして9月は「スナックAllright」を実施と、まさにイベントづくし。お客さまと直接お会いする機会や、他社との連携、そして社会とのつながりがこれまで以上に広がった一年となりました。

また、2024年にリリースした片手で着脱できる洋服や小物を展開する「one hand magic」のアイテムは、さまざまな機能性を備えながら、デザイン性も高く、障がいのある方々にとどまらない多くの方々に共感が広がっています。展示会では、商品を実際に「着て、試してみる」という体験を通じて、これらの商品の魅力をダイレクトに伝えることができました。
筧さん:やはり、機能面のよさは実際に身につけていただいたほうが、伝わるものだと思います。展示会では試着を通して、多くの方に共感していただけた実感があり、こちらが気づけていなかった課題にも出会うことができました。だからこそ、こうしたリアルな場を作ることは、商品づくりをするにあたりすごく大事なことだと感じています。
場づくりから生まれた対話と出会い
5月に開催した「オールライトDAY@OSAKA」では、インクルーシブをテーマに掲げたアパレル・雑貨ブランドが一堂に会し、試着会とトークイベントを行いました。ふだんはなかなか実現しづらい他ブランドとの共演も叶い、貴重な交流の場となりました。

トークイベントでは、ソーシャルデザインの最前線を走るプレーヤーたちをゲストに迎え、実践に基づく知見や想いが語られる機会となり、参加者の声も交えながら、終始あたたかな雰囲気で進行しました。

「自分とは違う特性を持つ友だちがいると、“こんなとき、あの子ならどうするかな?”と、少し、想像力を働かせることができる」という清田仁之さんのお話が心に残ったという筧さん。
筧さん:例えば、商業施設を歩いてみると、目的地にたどり着く前に展示ブロックが途切れてしまうことはめずらしくないんです。身近に視覚障がいのある知人の顔が浮かんで、「一緒に来たら、ここで困るかも」と自然に想像できました。顔が浮かぶだけで、想像力の幅がぐっと広がることに気づかされました。
たとえば大阪・関西万博(2025年開催)の会場では、視覚障がい者のために、床面の点字ブロックだけでなく、QRコードなどを活用した誘導システムも整備されていたそうです。こうした、利用する方の視点から生まれる工夫や技術が、社会に少しずつ広がっていることに、大きな可能性を感じたと教えてくれました。
お客さまの声がきっかけでうまれた「one hand magic」

オールライトの公式Webサイト内にはアンケートフォームが常設されており、さまざまな声が集まっています。実は「one hand magic」が誕生したのも、そのなかで「片麻痺のため肩が下がっており服がずれてくるので困る」「家族に向けて、片麻痺でも着られるもっとおしゃれな服が欲しい」と寄せられた声が開発のきっかけになっています。そして、オールライト研究所のアドバイザーでありモデルもつとめてくださっている「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー」をお持ちの木戸さんの、ある困りごともヒントに。
筧さん:お子さんの七五三のときって、 きちんとした格好をすることが多いですよね。木戸さんにお聞きした話なのですが、普段はひとりで着脱可能なお洋服をお召しになっているけれど、お子さまの七五三の時に来ていたお洋服は、介助が必要だったそうなんです。このお話を聞いたときに、きちんとしたファッションのときって、私も含めて窮屈さを我慢している方が多いのではないかと思ったのです。
そこで、おでかけの時にも対応できる、シャツ・コート・パンツ・靴・バッグ・アクセサリー、つまり、トータルで揃うラインナップを展開することになりました。これさえあれば、どんなシーンでも困らない“安心の一式”です。
全アイテムの細部に宿る「使いやすさ」
「one hand magic」の各アイテムには、一見して気づかない細やかな工夫がちりばめられています。たとえば、「オールライト研究所 one hand magic 片手で着られるスナップシャツ」の袖口はゴム入りに。そうすることで、片手がつかいづらい方だけではなく、日常を忙しく過ごす方が帰宅してすぐ袖をまくって家事ができる、というようなシチュエーションにも対応可能に。

また、「オールライト研究所 one hand magic 片手で着られるアウター」の前ボタンにはマグネット式を採用。片手での着脱が可能になっただけではなく、視覚障がいのある方は、音がすることでボタンが留まったことも確認できます。首のカーブに沿ったワイヤー仕様で簡単にさっと装着できる「オールライト研究所 one hand magic 片手で着けられるネックカフ」を、認知症の方にモニターとして使っていただくと……。
筧さん:その方は普段あまりアクセサリーを身に着けることがなかったのですが、「ネックカフをつけてデイサービスに行ったら、みんなが『かわいいね』って言ってくれてね」と、とてもうれしそうに話してくださいました。ただ便利というだけでなく、普段アクセサリーをつけない方にとっても、身につけることで日常に彩りやハリをもたらすきっかけになるのかもしれません。

【後編につづきます】

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