ここが旅のクライマックス〈デスペンサ デ パラチオ〉
ついについに、ここまで来ました。これからはすごいお話なので覚悟して聞いてください。
〈デスペンサ デ パラチオ〉。ついにこのお話をします。

今回のミラクルなチョコのお話です。私は30年近くチョコレートバイヤーをやってきました。
ある意味、世界のローカルチョコを見てきた変わった経歴の中では、自分で言うのもおこがましいですが、世界ランキングトップクラス間違いないと思うんです。
世界のショコラティエにもよく言われます。「世界のローカルチョコかぁ。確かにそんなところにフォーカスした人いないよ」と。
そうなんです。誰もいないところで必死でがんばるのが大好きだったので、同じコンセプトのお仕事の人に30年間会ったことがなく。有名とか優秀とかのチョコには興味がなかった。
その地の人に愛される地元のスターチョコが専門です。
そんな私がある意味、その最高峰のひとつに出会いました。
個人店で、すごいショコラティエが人里離れたところに住んでいる。この話はある意味私の理想ではあったのですが。
ここはそれに“歴史”が加わりました。
前回からご紹介している通り、エステパ村はほんとに何もないのです。〈デスペンサ デ パラチオ〉はそこで創業1743年ですって?!にわかには信じがたいんですが。

もともとこのアンダルシアのエステパ侯爵のパン屋さんからスタートしたのです。セビリア侯爵がマドリードに移った後でも、この地に残り続けたそうです。まさにこのエステパの地で守り続けられました。
狭い村なので、何度もデスペンサの前を通ってはいましたが、その時はほかとの差がわかってなかったです。普通の郊外のイマドキアトリエかと。
いよいよ商談の時間が来て、デスペンサの中に入りました。一歩入ると外観とは違い、クラシックな建物が入れ子で中に入っているよう。

オーナーのアントニオさんが迎えてくれました。家族経営らしく、娘さんも一緒です。
このアントニオさんがスーパーマンなんです。
30年前まではほんとに小さなお店だった。
でも、アントニオさんがチョコレートに目覚めます。フランスにチョコの修行に行ったそうです。
その修行先はポール・ボキューズ。そして、あの。あの。ベルナシオン。
日本でチョコを趣味にしている人がハマるのが、このフランス・リヨンにお店があるベルナシオンです。
日本でとにかくスターなのです。生産量が少なく。買えないというのは価値が上がるんですよ。
しかし、こんな人の名前が出てくるとは思わなかった。このフランスの方々とどうも馬が合ったそうで、仲の良い写真が飾られています。
それから、どんどんチョコの研究が進み、チョコの製造にまい進していき、気がつけば、今までの地元の歴史的クッキーとチョコが合わさり、どんどん進化していきました。今はビーン トゥ バーも作って現地のカカオ農園にも行くと。
それだけではなく、チョコレートミュージアムまで作ってしまったのです。その話はおいおい。
もう、一歩入っただけでこの興奮の有様です。

このクラシックなお店に、クリスマスシーズンになると、スペイン全土から毎日2,000人の人が買いに来て並ぶそうです。ここに?この村に?渋滞ができると?こっ、この村に2,000人が毎日?
これまたクラシックな整理番号の発券機が。本当だということを物語っています。

お店の奥がすぐ製造アトリエになっています。
広い空間に昔ながらの機械が現役で働いています。

250年前の窯も。
かっこいい…


気になったのはこれ。なにやらボックス?
そうなんです。こちら、夏場にボックスも自社で印刷して作ってるそうです。このクラシックなボックス。手作業なんだ……。

ちょっと信じがたいんですが。
絵描きさんがいるんです。3人。このデジタルな時代に絵具でちゃんと手で描いてる。
日本からバイヤーが来るということで、なんと絵描きさんに日本のジブリをイメージしたイラストを用意するように言ってたみたいです。飾ってました。
よく勉強されてますよ。日本で何が人気かとか。
でも、すみません。これじゃないんです。
アンダルシアの歴史が見たいのです、と。あんまり納得してなかったですが。とにかく、mangaではないです。
チョコの大きな実験室もあって素材が並んでいます。日々新しいチョコも研究を欠かしません。
デスペンサの歴史もシアターがあってちゃんとしたかっこいいムービーで見せてくれる。
しかし、家具はめっちゃクラシック。

よく見たら木製の机や棚はすべてカカオの彫刻がされてる徹底ぶり。「これはお父さんのこだわり」って優しい娘さんが教えてくれました。
実はこの時点ですでに気が付いていました。このオーナーのアントニオお父さん。お話から70歳前後だと思います。スーパーアナログの人だと思うじゃないですか。
さっきからiPhoneバシバシ使いこなしてます。
どうもちゃんと残すところとアナログな部分を使い分けてるのがわかります。
私はずっと不思議な感じがしています。
目の前にあるものは100年、200年前の世界、しかしそこで話をしてるのはバリバリハイテク現代人。
そして、その中心にいるのが若くないお孫さんをかわいがるおじいさん。
いろいろ情報が今までの概念とは違い。
私の常識ではない時間軸がゆがむような感覚。
しかし、ここが未来かも。
もうすでにヘロヘロですが。ここからが試食タイムです。

次々出てくるいろいろなタイプのチョコたち。チョコがけクッキーたち。
どれも、うまい。
クッキーがうまいのは、この地の歴史が作り上げたものだからでしょう。
そこにかかったチョコがガチです。それはアントニオさんのなせる技。
しかも、ちょうどいい。
万国共通、老若男女が好きな、家族で楽しめる味がしてる。
やばい、運命の出会いかも。
出会っちゃったかも。


この味わいとクラシックなパッケージ。
日本に紹介したい一番のチョコ現れました。もう、全力で喉ちぎれてもみなさまに知ってほしいのでしゃべります。
まだまだ続くデスペンサのお話は後半に。
スペインのチョコレートの他の記事
SPAIN
チョコレートバイヤーみりの2026チョコ旅振り返り
2026.09.15
SPAIN
スペインのセビリアフェスティバル、かっちょいいー
2026.09.08
SPAIN
〈デスペンサ デ パラチオ〉セビリアのお店に行く
2026.09.04
SPAIN
〈デスペンサ デ パラチオ〉幻級のチョコレート
2026.09.01
SPAIN
こんなことある?アンダルシアのサンタクララ修道院
2026.08.25
SPAIN
スペイン伝統スイーツの隠れ里、エステパに到着!
2026.08.21
チョコレートバイヤーみり
フェリシモでのチョコレートバイヤー歴28年。「チョコで世界中を笑顔にしたい」と世界各国のショコラティエをめぐり、数々のレアチョコを発掘。これまでに訪ね歩いたショコラティエは34カ国約400件。約590ブランド・約2,900種類のチョコレートを輸入販売した実績を持ち、その中でも日本に初上陸させたチョコレートは329ブランド。チョコのストーリーを語らせたら止まりません! まだ知られていない素敵なチョコを紹介するため、今日も世界の果てまでチョコ探し!
これまでの主な紹介メディア








