パリの老舗“ロワ”訪問記③ パリチョコの日常を知る
今回ロワのステファンさんとお話して、前のオーナーさんを思い出しました。
私がもともとお仕事を始めたのは、初代のオーナーご夫妻でした。
ほんとうにきりっとしてて、服装もビシッっと隙がない感じで。パリの気合を身なりからも感じました。手ごわかった……。
あるときオーナーが引退されると聞き、新しいオーナーに代わりました。日本では家族で継承しますが、海外ではそういうことがほとんどなく、別の方に売買されます。
それで引き継いだのがステファンです。日本にも来てくれました。私は「ロワ=手ごわいご夫妻」だったので、今後このロワがどういう感じになるのだろうと思っていました。実際、オーナーが代わるとブランドはごろっと変わります。
しかし、ロワはお店のイメージそのままに、押しも押されぬ老舗として進化しました。一瞬同じように見せて、気付かれないように時代に合わせて変化していくのが老舗です。
初代のご夫妻はほんとうにロワを愛していて、そのうえでステファンを選んだんだなと今回思いました。
見事なまでにロワはいい感じに進化しています。オーナーがステファンじゃなかったら、こうはなってなかったと思います。
彼も心からパリを愛してるパリっ子だと、ひしひしと感じます。クルーズや最後は自分の車でパリを案内してくれました。大事な愛すべき尊敬するパリのすべてを紹介しようとしてるように感じました。
ほんと、こうあるべきだと思いました。自分の街を大事に誇りに思うことこそが、外から来た人の心を打ちます。お店からもチョコからも、端々にパリ16区の「ロワ」であることの誇りと、厳しいチェックの視線を感じました。
そんなロワにはひっきりなしにお客さまが来られます。
もちろん、大使館やホテルなどのすごいVIPもいらっしゃいますが。エッフェル塔の近くなので、英語を話す観光客も結構いて驚きました。英語率高いです。そして、なんと言っても16区の地元の人たち。ちょうどイースター前だったので、ミニサイズのイースターチョコもよく売れていました。あと、やっぱりパリではプレゼントの定番がチョコなのです。お花かチョコかというところでしょう。そして、見ていたら、ミルクが好きとかビターが好きとか、ちゃんと自分の好みをはっきり言っていました。お客さま一人一人にも主張があって、一個のチョコにもしっかりやりとりがあるのです。



私たち日本人のように「お任せ」が好きじゃないんでしょう。
それぞれ、ちょっと店員さんとコミュニケーションを取るのも楽しみにされているようで、全員が常連さんに見えたんですが、そうではなく、会話が大事なんでしょう。
ロワのスタッフさんもほんとうに感じのいい方ばかりです。
中には日本のことが大好きで、10回も来てる人とか、私よりも関西グルメに詳しかったなあ。あと、何でも聞いてくださいねと、私にフランスのイースターの習慣をいろいろ教えてくれたり。
ちょっと、小ネタですが。
イースターには、卵やうさぎの形のチョコを庭に隠すのです。それを子どもたちがイースターの朝に探すという習慣があって、私がまだイースターを知らなかったとき、ゆで卵にペイントしたものを銀行で渡されて、「え?銀行でなんかくれた。卵??これなに?」とびっくりしたことがあります。それほど大昔からやっぱりイースターはこっちでは春の一大イベントなのです。私は個人の家の話だと思っていたら、パブリックの公園でも、イースターエッグのチョコを隠すそうなんです。
え?まじで?犬が食べたらどうするの?と聞くと。
公園は犬が入っていい公園と入れない公園があるから大丈夫と。
えー知らなかった。同じ公園にしか見えなかった。
そんないろんなパリの話をたくさん教えてもらえた素敵な時間でした。
確かにフランスの人はお話好きだと思います。外のテラスやバーで、ずっとしゃべっています。
そもそも晩ごはんは9時かららしいです。
日本だと7時とかでしょうか。ごはん食べたら、バーに行ってひたすら仲間か知り合いか、とにかくしゃべってます。そんなに外が好きな意味がわかりませんが、フランスだけでなく西洋の人は壁がないところで過ごすのが好きですね。きっと冬場の太陽のない暗さがよっぽどつらいんだと思います。必死さすら感じます。
これまで足早に通り過ぎてきたパリが、ロワさんでの滞在を通して、なにか立体的に見えてきた。そんな1週間の訪問でした。

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チョコレートバイヤーみり
フェリシモでのチョコレートバイヤー歴28年。「チョコで世界中を笑顔にしたい」と世界各国のショコラティエをめぐり、数々のレアチョコを発掘。これまでに訪ね歩いたショコラティエは34カ国約400件。約590ブランド・約2,900種類のチョコレートを輸入販売した実績を持ち、その中でも日本に初上陸させたチョコレートは329ブランド。チョコのストーリーを語らせたら止まりません! まだ知られていない素敵なチョコを紹介するため、今日も世界の果てまでチョコ探し!
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