羊毛フェルトに命を宿す魔法をかけて

2022年10月27日(木曜日)

ふわふわの羊毛を、専用の針でサクサクと刺しながら形作っていくニードルフェルト。児玉彩さんの手から生まれるもふもふの小動物たちは、まるで生きているような愛らしい存在感で多くの人々を魅了しています。たくさんの作品が見守るアトリエで、羊毛フェルトへの愛にあふれるさまざまなお話を伺いました。

いきいきとした存在感を大切に

物心ついたときから工作が大好きで、幼稚園でも常に何かを作っていたという児玉さん。美術系の大学に通っていたときにニードルフェルトと出会い、グループ展や手づくり市、WEB販売などを経て、文化センターの講師やキットの監修など、少しずつプロの作家として活動の幅を広げてきました。

 

「はじめて作品が売れたとき、自分の作ったものが誰かから求められるってこんなにうれしいことなんだ、と心から感動しました。今もその気持ちを大切にして、日々創作をしています」

動物を作るときは、いつも顔からスタート。手際よく羊毛フェルトを丸めると、サクサクと専用の針で刺していきます。だんだんと愛らしい動物の頭部が姿を表す様子は、まるで命を生み出す不思議な魔法を見ているようです。

「ニードルフェルトの魅力は、表現の自由さ。羊毛に木材や粘土を組み合わせたり、つま先や尻尾に針金を入れたりと、ほかの素材と合わせてアレンジしやすいのも特徴です。使う道具も少なく、手順もシンプル。なのに表現のバリエーションは幅広く、アイデア次第で多彩な作品が生み出せる。とても楽しく柔軟な技法だと思います」

愛らしい作品たち。

つぶらな瞳ともふもふの毛並みがなんとも愛らしい、手のひらサイズの動物たち。羊毛フェルトでできているのが信じられないくらい、今にも動き出しそうなリアルさなのに、決して生々しくはなく、絵本のようなファンタジックなムードを放っています。児玉さん特有のこのバランス感は、どのようにして作られているのでしょうか。


「特に計算してやっているわけではないのですが……、ディテールのリアルさにはかなり意識を注いでいて、顔はもちろん、肉球からつま先まで、徹底的にていねいに作りこんでいます。ただし、リアルを追求しすぎて剥製のようになってしまうとちょっと違うなと思っているので、小物やポーズなどにひと工夫して、ファンタジックな要素をほんのり足すことも忘れません。ただ本物の動物の再現を目指すのではなく、いきいきとした愛らしさや、やさしい物語が感じられるような雰囲気を大切にしたいな、といつも考えています」

一体の制作にかかる時間はだいたい丸2日。自然光で色合いを確認しながら刺していきます。アトリエのあちこちに小さな動物たちが。

自他ともに認める動物好きだという児玉さん。アトリエを見渡すと、あちこちに小さな動物たちが飾られています。


「基本的に動物はみんな好きだし、猫も大好きで一緒に暮らしていますが、実際に作るのはネズミやリスなどの齧歯類や小鳥が多いですね。ただただ好きだから、ということもありますが、小さな動物だと実物大で作ることができるので、よりリアルな存在感を出せるというのも魅力のひとつ。齧歯類も小鳥も家にはいないので、動物園やペットショップの小動物コーナーに通って観察したり、絵本や図鑑、写真集などを参考にしたりして、全方位どこから見ても自然な造形を追求しています」

羊毛フェルトはカゴにまとめて。
羊毛は種類ごとに押し入れに収納。個人的な創作では、染色されていないナチュラルな羊毛を使うことが多いそう。
作業に使う道具類は、座卓の引き出しにコンパクトに収納。

創作の合間に不定期に受け付けている個人オーダーも、毎回大人気です。
「いただいた写真などをもとに、ハムスターやリスをお作りすることが多いです。自分は会ったことのない子でも、飼い主さんにとっては人生を共にした、唯一無二のいとしい子。そのぶん責任重大ですが、特別なやりがいを感じるお仕事です。完成品をお届けしたときに、『亡くなった子が帰ってきたみたい』『魂が宿っているよう』と言っていただいたときは本当にうれしかったですね」

リラックスして刺す時間を楽しんで

クチュリエで始まったばかりの「羊毛フェルトで作る 愛らしく健気な 北の小さなもふもふ動物の会」は、北国に生息する動物が作れるキット。エゾモモンガやキタキツネなど、胸がキュンとする愛らしい姿がさっそく話題を集めています。


「かわいい北国の動物たちを羊毛フェルトでぜひ作っていただきたい……というのは大前提ですが、エゾモモンガはしっぽのふわふわ感、キタキツネは4本の足で立つバランスなど、実は動物によって異なる技法が学べるようになっています。楽しくサクサク刺しながら、いろんな技法を体験していただけたらなによりです」

左:やわらかな光が差し込む自宅のアトリエ。作業に夢中になると、数時間が一瞬で過ぎることも。
右:壁には新作の壁掛けタイプの作品が。

心惹かれるオブジェや季節の花を自由に飾って。

ニードルフェルトを上手に仕上げるコツはあるのでしょうか?
「夢中で刺していると、つい視野が狭くなってしまいがちですが、部分的に集中すると全体がゆがんでしまうこともあるので、ときどき遠くから眺めてみたり、ほかの部分と比べてみたりと、客観的な視点を持つことも大切。まずはシンプルな球体から練習してみるのもおすすめ。何度か同じ作業を反復していると、『この硬さでいいんだ』『このパーツの羊毛はこの量でいいんだ』など、だんだん感覚がつかめてくると思います。あとはとにかく焦らず、気負わず、作りたいもの、会いたい子を思い浮かべながら刺すこと。ゆったりとした気持ちで、刺す時間を楽しんでくださいね」

coto coto felt works
児玉 彩

羊毛フェルト動物作家。2011年より、羊毛フェルトを用いたニードルフェルテイングの技法で小動物をメインとした作品の制作を開始。個展の開催、手芸メーカーのキットの監修、雑誌への作品提供など、多方面で活躍中。

Instagram:@cotocotofeltworks

 

 

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