フェリシモCompany

カカオ農家さんも、食べる私たちも。チョコレートに関わるみんなを笑顔にしてくれる「幸福のチョコレート」と「LOVE&THANKS基金」にまつわる15のこと。ー前編ー

こんにちは、フェリシモ環境コミュニケーション事務局のFukuです。

チョコレートバイヤーみりさんは25年ものあいだ、世界中のショコラティエをめぐり、カタログ『幸福(しあわせ)のチョコレート®』を通じてお客さまへお届けし続けてきました。
「チョコレートの魔力にとりつかれた…」というみりさんは常に、名もなきローカルチョコレートを追い求めて世界を駆けめぐっています。
2009年からは、「LOVE&THANKS基金」がスタートし、『幸福のチョコレート』に掲載しているすべての商品に基金が付くようになりました。大好きなチョコレートを通じた支援先が、認定NPO法人ACE(以下、ACE)が取り組む「スマイル・ガーナプロジェクト」です。ACEは、カカオの産地であるガーナの児童労働をなくすためにさまざまな活動を手がけています。
チョコレートづくりも、食べることによって得られるしあわせな気持ちも、すべてのみなもとは、カカオ農家さんあってこそ。
大のチョコレート好きで、チョコ談義に花が咲くこともあるというお二人に、“チョコレートで幸福になること“にかける思いと背景をお聞きしました。

話し手: 認定NPO法人ACE副代表/共同創業者  白木朋子さん、チョコレートバイヤーみりさん
聞き手:環境コミュニケーション事務局

みりさん

Q1、みりさん、まずはじめに「幸福のチョコレート」のはじまりについて教えてください。

みり:私はフェリシモに入社してすぐ、食品担当になりました。チョコレートも取り扱っていたのですが、どんなときもお客さまに人気があって、とても売れるんですね。そういった経験から、チョコレートの持つパワーのようなものを感じ「なに、この子(チョコレート)!」と思っていました。まるでお客さまの手が伸びてくるようなエネルギーに溢れていたんです。当初はファッションカタログの見開き1ページのチョコレート特集だったのものが、チラシ1枚になり、少しずつページ数を増やして、やがてカタログへと発展していきました。はじめてカタログをつくったときに、「幸福のチョコレート」と名づけました。

「チョコレートが好きでこの仕事ができてよかったね」と言われますが、私の場合はバイヤーになってからチョコレートを好きになったんです。いえ、好きというのもおこがましいくらい。もはや、尊敬です。やがて「幸福のチョコレート」という言葉が、私のスローガンへと変わっていって。お客さま、生産者さん、ショコラティエのみなさん、このカタログに関わるすべての人たちにとって「しあわせのチョコレートたれ!」という思いで続けさせてもらっています。でも、私もまさか25年にもなるとは思っていませんでした。

幸福のチョコレート

Q2、小さなショコラティエにこだわって世界中をかけめぐってこられたみりさんの、今の思いを聞かせてください。

みり:私が家族経営などの個人の小さなチョコレート屋さんをまわっていて思うことは、チョコレートをつくる人も、食べる人もみんながすごくハッピーだということ。ショコラティエは自分の作品を食べてもらってうれしいと思っているから、発送してくださるときもどこか誇らしげです。海外ではショコラティエって職人として究極のステイタスとも言えるんですよ。「なぜチョコレート職人になろうと思ったのですか?」とお聞きすると、「カカオ・砂糖・ミルクだけを主原料に、無限の表現に挑戦できるから、人生をかける価値がある」とおっしゃるんですよ! そして、そのチョコレートを買って食べてくださるお客さまが感動して、私あてに電報をいただくことがあるんですよ!そういうことって、ほかの仕事ではなかなか体験できないことなんです。

今の思いを語るみりさん

Q3、「幸福のチョコレート」のカタログをめくっていると、みりさんが手渡しでチョコを届けてくれているような気分になりますね。「LOVE&THANKS基金」はどのような思いがあってスタートしたのでしょうか?

みり:フェリシモは、事業性、独創性、社会性の3つが重なる部分を大事にしていて、私はこの理念が大好きです。ものを売ることで人の役に立つような仕事がしたいと、ずっと思っています。だから、ずっと基金を付けたいと思っていたのですが、関わる人も多いことですから、いろいろと準備も必要で2011年にようやく実現できたんです。
けれど、「LOVE&THANKS基金」がスタートした当初は、広くアフリカのこどもたちに栄養補給の支援を行なっていて、チョコレートにまつわるダイレクトな支援が実現できていませんでした。どうにか直接的に、農家さんに基金をお届けできないかと思っていたときに、ACEさんと出会ったんですよ。

白木:私たちはフェリシモさんと出会った頃から親和性が高いと感じていました。出会いは別のかたちでサポートしていだいたことがきっかけでしたが、チョコレートを通してガーナのこどもたちを支援していただけることは、私たちもとてもうれしいんです。いつも本当にありがとうございます。

みり:ACEさんがガーナのカカオ農家さんの児童労働をなくすために活動されていると知ったときは、「やっと出会えた!道が開けた!」と、私たちの目指す目的と同じだと感じて感激しました。

白木さん
今回は白木さんとはオンラインでつなげてお話を伺いました!

Q4、白木さん、「LOVE&THANKS基金」で支援をしている「スマイル・ガーナプロジェクト」について教えてください。

白木:2009年にACEがスタートした、ガーナのカカオ生産地域で児童労働をなくす活動です。もともと、サハラ以南のアフリカ地域は児童労働が多い地域なのですが、なかでも農業分野での問題は深刻で、私たちは日本に暮らす消費者や企業を巻き込みながら継続的な支援を現地で行なっています。

ガーナのカカオの産地では、いろいろな事情からこどもたちも働かざるをえなくて、危険な環境での労働を強いられたり、学校に行けず教育を受けられなかったりと、さまざまな課題を抱えています。また、カカオ農家は小規模で決して裕福ではありません。しかし、教育機会がないことから、将来の選択肢が狭まってしまい、貧困から抜け出せないという負のスパイラルに陥ってしまうのです。そこで、ガーナのこどもたちが教育を受けて学力を身につけること、そして、きびしい生活を強いられている小規模農家が経済的に自立できるための支援を行なっています。

Q5、日常的にチョコレートは食べていても、なかなか産地の問題を知る機会はないものですね…。ガーナでは児童労働のほかにどのような課題があるのでしょうか?

白木:ガーナは縦に長く、南部一帯がカカオの生産地です。北部は乾燥地のため農業もままならないことから、南部への移住労働者が多く、カカオ農業の労働は移住者が支えているような状況です。家族で移住するのならば問題はないのですが、こどもだけが親から引き離されて連れて来られ、学校にも行けずに働かされるケースがあるのです。これが一番最悪な状況で、「人身取引」に当たります。

地図
ガーナはカカオの生産量は世界2位。
日本はカカオ輸入量のおよそ7割をガーナに頼っています。

また、こどもにとって危険で有害な作業が多いんです。カカオポッド(カカオの実)の殻を割るためには大きなナタを使います。この作業は一見簡単そうに見えるのですが、大人でもかなり力を入れないと難しく、防具もつけずに素手での作業は、ひとつ間違えると大けがをするリスクがあるんです。さらに、カカオの実を農園の森の中で発酵させたあとに、天日干しするために別な場所に運ばなければならないのですが、頭にかごいっぱいに積まれたカカオを乗せて、森の中まで30分から1時間ほどかけて徒歩で長距離移動します。こどもの体の大きさに見合わない、重さ20キロを超えるようなものなので、長時間運ぶ行為はこどもの身体に大きな負担を強いることになります。

Q6、世界中をかけめぐっているみりさんですが、それまで産地とのつながりはあまりなかったのでしょうか?

みり:そうなんです。けれど、世界のショコラティエのところにいくと、カカオ農家の児童労働の問題についてはほぼみなさん知っていて、背景に児童労働があるクーベルチュール(*2)は選ばないとおっしゃるんです。海外ではあたりまえの意識なのですが、日本ではまだ浸透していないので、微力ながらカタログを通じて関心を持っていただけたらという思いがあります。
そして、幸福のチョコレートを生み出しているみなもとはカカオ農家さんです。だから、その事実を農家さんたちが知らずに児童労働を伴った生産を続けていることは残念ですし、チョコレート好きの方たちからいただいた基金をお渡しできるようになって、やっとダイレクトにお返しができる!と心からうれしく思っています。

*2:クーベルチュールとは溶かして再成型する製菓用のチョコレートで、カカオ分35%以上・カカオバター以外の代用油脂が使われていないもの。

それまで産地との関係について話すみりさん

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