こころの深呼吸
「こうあるべき」を、脱ぎ捨てよう
2026.03.04

首元が開いた服じゃないと、わたしのからだはきれいに見えない。厚着はやぼったい。そんな思い込みが、いつのまにか、わたしのこころに根づいていた。
「おしゃれは我慢」。
その言葉をこころの底から、“美意識の証”として信じていた時代がある。「寒い」なんて思いは二の次。なにより大事な「おしゃれ」を実現するために、我慢は当たり前だと思っていた。
デコルテのラインは美しく。タイトな服を選ぶ。コートを脱げば、薄着。震えながら歩く夜道も、「これが、わたしなりのおしゃれ」だと信じてきた。
我慢を重ねることで、自分のスタイルを貫く。その徹底ぶりは、今思い返すと潔かったとすら思う。
でも、数年前から空気が変わってきた。ほどよいリラックス感があるもの、「ゆるめる」をテーマにしたファッションが流行りはじめた。
「お腹が苦しいなら、ゴムにしよう」「体型が気になるなら、生地を工夫しよう」。そんなファッションがどんどん発信されるようになった。
それと同時に、ファッションの技術もアップデートされていく。締め付けなくても、きれいに見える素材の開発。からだのラインを自然に整える、機能性インナーの登場。ストレッチ性とシルエットの美しさを両立させた生地。おしゃれの選択肢が、我慢を前提としないものへと、静かに変わっていった。
……わたしは戸惑っていた。
「お腹が苦しいのは、我慢するものじゃないの?」「体型が気になるなら、補正下着で締め付けるんじゃないの?」。シルエットを保つために、わたしにとっては当たり前だった「我慢」から、解放されていく人たち。我慢しないなんて、アリなの?という違和感がずっとあった。
同時に、これまでがんばってきた自分って何だったんだろう?とも思った。あんなに苦しい思いをして、寒さに耐えて。ムダだったのかな。
そんな気持ちが変わったのは、とある旅行に出かけたときだった。
お風呂に入るとき、友達が「リラックス」をうたうインナーをつけていた。なににもとらわれずに、自分の心地よさに重きをおく姿勢が、すごく格好よく見えた。我慢していないから、余裕があって、たたずまいまで洗練されている感覚。
すると「戸惑い」が、「興味」へと変わった。(そうだ、私はミーハーでもあったんだった!)
早速、リラックス系の下着を買ってみたら、びっくりするほどラク。「こんなに締め付け感がなくても、いいの!?」と感動した。だって、ラクなのに、からだのラインはきれいに見える。このときをきっかけに、服の選び方も変わっていった。

……過去の自分の「我慢」があったから、気づけたことがある。それは、ラクをすることは、手を抜くことじゃないということ。
むしろ、リラックスした状態でいることが、「大人の余裕」につながる。格好いい大人って、余裕だし、ご機嫌だし、力がほどよく抜けている。
大切なのは、自分にとって「心地いいかどうか」。心地よさを手放さず、ポジティブな気持ちでトレンドを取り入れていく。それこそが、今の居心地がよくなるおしゃれなんだ。
夏を快適に過ごすための機能性インナーもそう。リラックスファッションに合わせられる、一枚でサマになるブラキャミだって、手に取っていい。自分のファッションに合った、足の形にマッチした疲れにくいスニーカーを選ぶ……とか。
こういうふうに、ちょっとしたアイテムからアップデートしていくだけで、おしゃれはもっと楽しくなる。
これからは、「おしゃれは我慢」という視点は、いったん横に置いておく。
「もっと心地よいものがないかな?」と、プラスの視点で下着や服を見ていくことにしよう。
トレンドをうまく生かしながら、わたしたちは、おしゃれをアップデートしていけるんだから。
そう思えたら、なんだか、我慢していたあのころの自分もちょっと愛しく思えてくる。
あ、いいかも
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