ミシンの歴史 〜ブラザーミュージアムを訪ねて〜後編〜

2023年4月27日(木曜日)

今回も、前編に引き続き、ブラザーミュージアムにてお聞きした、ミシンの歴史についてお届けします。

別な存在として、昔も今もこれからも

試行錯誤の末、安井兄弟がはじめに完成させたのは、麦わら帽子を作るための環縫ミシン。このミシンは兄弟の協力を象徴する「ブラザー」と命名され、国産ミシン開発の大きな足がかりとなりました。

ミシンの変遷を見てみよう!

1861

日本に最初に伝わったミシンと
言われる、ウィラー&ウィルソン
社(米)のミシン。ペリー提督が
十三代将軍徳川家定に献上したも
のと同型のミシン(写真)。

1908

安井兼吉氏がミシンの修理業を
営む「安井ミシン商会」を創業。

1928

ミシンの国産化を目指し、安井正義
・実一兄弟が「麦わら帽子製造用環
縫ミシン」を完成させる。

1932

ブラザーの家庭用ミシン第一号機。
当時の国内技術では困難とされてい
たシャトルフックの量産化に成功し、
創業者兄弟の長年の夢であった家庭
用本縫ミシンを完成させた。

1947

終戦後に初めて製造された家庭用ミ
シン。さらに同年、政府からの要請で
次のモデルであるHA1-B3型200台
を上海に輸出。

1932年には、ブラザーの家庭用ミシン第一号機が完成。さらに第二次世界大戦を経て、1947年には政府の要請により上海に輸出され、「輸入産業を輸出産業に」という安井兄弟の夢はついに実現。壊れにくい国産のミシンは、こうして世界へと広まっていきました。

高度経済成長期を経て、日本の一般家庭でのミシンの普及率はどんどん高まり、ついに一家に一台の時代へ。コンピューター技術の発展に従い、1979年には業界初の家庭用コンピューターミシンが発売。針と送り歯の動きをマイコンで制御することで、より複雑で種類の多い模様縫いもできるようになりました。

2008年には、業界で初めてカメラを搭載した刺しゅう機能付きミシンが登場。その後も開発者の努力により、ミシンはより手軽で、より自由なものへと、日々進化を重ねています。

さらにブラザーでは、ミシンで培った技術を活かして、編み機、家電、タイプライターなど、さまざまな製品の開発に着手。現在では、プリンターやカラオケシステムなど、さらに多彩な分野で新たな市場を切り拓いています。

改めて、私たちにとってミシンとは、いったいどのような存在なのでしょうか?
「ブラザーミュージアムに訪れる方と接して感じるのは、高度経済成長期を経験した世代の方々にとって、ミシンは生活を共に過ごしたかけがえのない相棒であり、青春そのものであるということ。当館の存在を知ってくださった方々から、『母が大切にしていた足踏みミシンが家に眠っているので、ぜひ引き取ってください』というお申し出もたくさんいただきます。寄贈いただいたミシンを拝見するたび、持ち主の方のミシンに対する深い愛情と思い入れが伝わってきます(小原さん)」

2011年の東日本大震災では、南三陸の避難所にミシンの寄贈が多くあり、ブラザーは支援のため使い方講習会やメンテナンスに訪問。当時の担当者として何度も現場に赴いたという小原さんの心には、現地の方々の言葉が今も強く残っているそうです。

「最初は、震災で生活を奪われた方々が『ミシンを使っていると無心になれる。その間は嫌なことも忘れられる』とおっしゃっていたのが印象的でした。そのうちに、ミシンを通して新たなコミュニティが生まれたり、縫った作品を販売することで収入を得ることができたという話をお聞きするようになりました。ミシンがただの機械という存在を超えて、気持ちを慰める相手にも、コミュニケーションのツールにも、そして生活の糧にもなるんだということに改めて気づかされました。ブラザーのグループビジョンに『世界中のあなたの生産性と創造性をすぐそばで支える』という言葉があるのですが、現在の、そしてこれからのミシンの在り方も、この思いに通ずるものがあるのではないかと感じています(小原さん)」

お話をお聞きしたのは…

ブラザーミュージアム館長 小原 啓寿さん

国内販売部門の責任者を経て、5年前より館長に就任。豊富な知識をもとにミシンの歴史を教えてくださいました。

ブラザーミュージアム

100年以上続くブラザーの歴史と最新技術が楽しく学べる、体感型の展示館。圧巻のミシンゾーンでは、世界最初のミシン(複製)や海外のアンティークミシン、ブラザーの代表的機種など、国内有数のコレクション70台以上を公開中。
名古屋市瑞穂区塩入町5番15号 https://global.brother/ja/corporate/museum

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