フェリシモCompany

地球の環境や日本の伝統工芸に、ともに思いを馳せる。「GO! PEACE!」BOOKより、6つのプロジェクトにまつわる10のこと。

GO! PEACE!

こんにちは、フェリシモしあわせ共創事務局のfukuです。

2023年10月に刊行したカタログ「GO! PEACE!」。“みんなで「うれしい未来」をつくる”をコンセプトにしたこのカタログには、30のソーシャルグッドなプロジェクトを掲載しています。

わたしたちの周りには、身近なことから世界にまたがることまで、さまざまな問題があります。わたしたちが生きる時代、そしてもっと先の未来を考えた時に、「どうにかしなくちゃ」と思う気持ちを抱きつつも、「まずは何からしよう?」と迷っている人はきっと多いはず。

そんな思いを行動に変えるヒントが詰まった本カタログは、「地球とともに」「世界とともに」「日本の地域・文化とともに」「あなたとともに」そして「ひとりひとりの願いとともに」の、5つのブロックで構成されています。

今回は「地球とともに」「日本の地域・文化とともに」をテーマに、6つのプロジェクトを担当した、小倉志都香さんと山川千尋さんにお話をお聞きしました。

話し手:小倉志都香さん、山川千尋さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局

Q1、まずは、お二人が普段携わっているブランドについて、教えてください。

小倉:私は2021年に入社し、現在は「YOU+MORE!」と「USEDo」、「am&be」の3つのブランドに携わり、商品の開発をしています。「YOU+MORE!」は、“すっかり見慣れた日常が、もっと楽しく、もっと笑えるように”というブランドコンセプトで、楽しい妄想から商品企画が始まることが多いですね。「USEDo」は“ふつうだけどスペシャルなもの”というテーマで、「am&be」は“私(l am)が心地よくある(be)時間を大切にしたい”という思いで生まれたブランドです。どちらも「YOU+MORE!」に比べ、生活に根付いた視点を大切にしているというか。利便性などに焦点を当てながら企画しています。

山川:私は2020年に入社し、同じく「YOU+MORE!」「USEDo」「am&be」の3つのブランドの商品を企画していました。「YOU+MORE!」の視点は自分の興味にとても合っていて、「USEDo」「am&be」の企画も生活のなかに遊び心を添えられるような商品を考えてきました。

Q2、これまで手がけた商品を、まずは小倉さんから紹介してください!

小倉:好きな景色を生活の中に再現するような商品が多いかもしれません。例えば「雨空に咲きこぼれる 紫陽花の傘」という商品は、お寺で目にする花手水の景色がすごく好きで、それを傘で再現できたらいいなと思ったもの。美術系大学でガラス専攻だったこともあり透明なものに惹かれるんです。そこで、傘の透明感を活かして紫陽花の美しいグラデーションがいつでも楽しめるようなものが作れたらと考えました。

雨空に咲きこぼれる 紫陽花の傘
透け感を大切にし立体的な印象になるように、イラストレーターさんと相談しながら作った傘。

小倉:紫陽花は梅雨に咲く花ですし、雨の日の水に濡れている姿が一番きれいだと思うんですね。だから傘にすることで、雨粒がキラキラと光り、紫陽花がおめかししているようなシーンも楽しめるようにしました。他には、靴下好きが高じて「靴下飯店のおいしい中華ソックス」なども企画しました。

みんなお馴染みの中華料理のメニューが靴下に! 左から、麻婆豆腐、焼き餃子、チャーハン、ラーメン、天津飯、シュウマイ、杏仁豆腐、冷やし中華。
みんなお馴染みの中華料理のメニューが靴下に! 左から、麻婆豆腐、焼き餃子、チャーハン、ラーメン、天津飯、シュウマイ、杏仁豆腐、冷やし中華。
「中華料理が大好き!」と語る、小倉さん。ファッションの中でも靴下は身につける面積が小さく、デザインを選ぶ時に冒険がしやすいからと、アイデアが形になったそう。天津飯の靴下は、グリンピース入りのあんをトロリとかけるシーンをシースルー素材で再現。
「中華料理が大好き!」と語る、小倉さん。ファッションの中でも靴下は身につける面積が小さく、デザインを選ぶ時に冒険がしやすいからと、アイデアが形になったそう。天津飯の靴下は、グリンピース入りのあんをトロリとかけるシーンをシースルー素材で再現。

Q3、山川さんは、どのような商品を手掛けてこられましたか?

山川:私は動物が大好きで、例えばこの「丸すぎる世界最古の猫 マヌルネコもっちりクッション 」は、準絶滅危惧種のマヌルネコをクッションにしたもの。自宅で飼育できない生き物が家の中にいたらおもしろいし、このまん丸のかわいい姿を伝えたい!と思って企画しました。

「マヌルネコに初めて出会ったのは動物園」と、楽しそうに語る山川さん。
「マヌルネコに初めて出会ったのは動物園」と、楽しそうに語る山川さん。
「丸すぎる世界最古の猫 マヌルネコもっちりクッション 」のお隣には、美味しそうなピザが…!
「丸すぎる世界最古の猫 マヌルネコもっちりクッション 」のお隣には、美味しそうなピザが…!

山川:こちらは、ピザを食べた時のシーンを再現した「チーズがびよーんと伸びる ピザのキーケースの会」。みんなでピザを食べる時、手に取ったらチーズがめちゃくちゃ伸びちゃったという経験ってありませんか。「わ〜!めっちゃ伸びる!」って、テンションが上がりますよね。その瞬間の楽しい気持ちを、いつでも味わえる商品です(笑)。他には、愛知県にある「世界のタイル博物館」さんとマルチクロスを作ったことも。生き物でも食べ物でも、そのもののチャームポイントを見つけ、商品化するということを大切にしています。

Q4、まさにユーモアのあふれる商品が多く、日常生活が楽しくなりそうです! 山川さんは今回の「GO! PEACE!」で、どのような商品を作ったのでしょう?

山川:まず一つ目が、「小笠原海洋センター」さんと「YOU+MORE!」、「海とかもめ部」がコラボレーションした商品。「応援したくなる アオウミガメの赤ちゃんのぬいぐるみポーチの会」と「アオウミガメの生態を描いた 片面ガーゼ&コットンパイルハンカチの会」です。この企画は、「小笠原海洋センター」さんから商品企画のご相談をいただいたのがきっかけではじまりました。「小笠原海洋センター」さんはアオウミガメをはじめとする小笠原の生物保全に力を注いでおり、ウミガメの保護活動を発信したりさまざまな活動をしています。実はウミガメってまだまだその生態について知られていないことが多い、未知の生き物なんだそう。世界には7種類のウミガメが生息していますが、そのうちの6種類は絶滅危惧種に指定されています。センターの方のお話は、私自身全然知らなかったことばかりで、そんな知られざる魅力を商品を通して発信し、環境問題に目を向けるきっかけになったら……と考えました。かわいさを伝えることが、私たちがまずできることだと思い、ポーチとハンカチをつくることになったんです。

ウミガメの赤ちゃんが殻を割って出てきた姿を「PIP(ピップ)」と呼ぶそう。そんなPIPの瞬間がポーチに! こちらは購入金額のうち50円が「海基金」として運用されます。
ウミガメの赤ちゃんが殻を割って出てきた姿を「PIP(ピップ)」と呼ぶそう。そんなPIPの瞬間がポーチに! こちらは購入金額のうち50円が「海基金」として運用されます。

山川:センターの方々に「ウミガメの一番かわいい瞬間って、どういう時ですか?」と尋ねたところ、「やっぱり卵からかえった瞬間」という声が多く、その瞬間をぬいぐるみポーチにしようと思いました。ハンカチにはウミガメの暮らしを守るというメッセージを込めて、センターの方が特に力をこめて話していた3つのシーンを選びました。ウミガメは生まれたあとお母さんと出会うことがないんです。センターの方からも親と子を別々に描きたいと希望があって、ふ化のシーンだけでなく、月の光を目指して子ガメが海に向かっていく光景や、産卵後にのびのびと泳ぐお母さんの姿を表現しました。

ウミガメは光に向かって歩いていく習性があり、月の光に導かれるそう。こちらも、購入金額のうち50円が「海基金」として運用されます。
ウミガメは光に向かって歩いていく習性があり、月の光に導かれるそう。こちらも、購入金額のうち50円が「海基金」として運用されます。

山川:「マムアンちゃん やさしいメッセージにキュンとするマルチケースの会 」は「フェリシモの猫基金」との合同プロジェクトです。イラスト作家のタムくん(ウィスット・ポンニミットさん)の描く「マムアン」シリーズが以前から大好きで、今回の「GO! PEACE!」をきっかけに商品化に携わることができ、とてもうれしかったです。

「マムアンちゃん やさしいメッセージにキュンとするマルチケースの会 」。購入金額のうち70円は「フェリシモの猫基金」として運用されます。
「マムアンちゃん やさしいメッセージにキュンとするマルチケースの会 」。購入金額のうち70円は「フェリシモの猫基金」として運用されます。

山川:マムアンちゃんはかわいいだけでなく、正直なところや、ときに怒ったりパニックになったりと、人間らしい姿が描かれているところが魅力。猫のララちゃんや犬のマナオくんと過ごす様子も、まるで自分と自分のペットの関係性みたい!と感じることが多かったんです。みんなが自分と重ねられるキャラクターであることが、マムアンちゃんの良さなんだと考えるようになりました。だからこそ、文字や背景色も活かして、マムアンちゃんの世界観をまるっと伝えられるように意識しています。それでいて、実用性の高いものにしたい!と、収納ポケットがたくさんあるデザインに。ノートも充電器も携帯も、マウスも……仕事で必要なものがたくさん入る構造です。

Q5、山川さんの商品は「地球とともに」がテーマとしてあり、ともに生きる動物のことを身近に感じる商品ばかりですね。小倉さんの商品は「日本の地域・文化とともに」がテーマですが、どのような商品を作ったのでしょう?

小倉:私は京都と沖縄の伝統工芸の魅力を伝える商品を企画しました。6年間京都に暮らしたこともあり、京都が大好きなので、去年の10月ごろ、京都府の担当者さんから伝統工芸をつかった商品を企画しませんか?というお声がけをいただいた際は、やります!!と真っ先に手を挙げました(笑)。清水焼の窯元の「陶あん」さんとは2種類の器を、「昇苑くみひも」さんとは京くみひもを使ったアクセサリーきんちゃくバッグを作りました。

淡い色彩の器には、「藤」や「紫陽花」など花の名前が付けられています。

小倉:清水焼には花結晶という技法があるのですが、特殊な釉薬かけて焼くことで、温度が冷める時に花のような結晶が現れるんです。1〜2度の温度差で、その結晶の出方が大きく変わって、全く同じものは生まれません。その偶然性がすごく素敵だなと思って、一点ものをお客さまにお届けしたいと思いました。

同じ色の器でも、一期一会の器に仕上がる花結晶。
同じ色の器でも、一期一会の器に仕上がる花結晶。

Q6、注文後、どんな柄が届くかわからないのも、楽しみの一つですね。伝統工芸に関わることで、どのような課題が見えてきましたか?

小倉:花結晶の清水焼を量産できる技術のある窯元は「陶あん」さんしかないと言われています。とても手間のかかるものですし、私もつくる立場を経験しているからこそ、その大変さがわかります。実際に工芸品の中には人手不足で工房を畳まないといけないところもありますし、伝統技術を紹介し途絶えないようにしなければという気持ちで、商品化に取り組みました。同じように伝統工芸品である京くみひもも、もっと身近に工芸品を取り入れ楽しめないか?と考え、アクセサリーときんちゃくバッグに。糸の台帳を見ながら、何度も組み合わせを考え、自分の好きな京都を思い起こさせるような色遣いを目指しました。それぞれ、京都に住んでいた時に好きだった景色にちなんだ名前をつけています。

「色の組み合わせを考えるのが大好き」と、試作中に使った糸の台帳を見せながら説明を。彩りだけでなく組み方が少し変わるだけでも色味が変わり、無限にバリエーションが考えられるそう。

Q7、沖縄の工芸品では、どのような商品を手掛けたのでしょう?

小倉:「琉球ガラス村」さんと、やちむんの工房・壺屋焼窯元「陶眞窯」さんとものづくりをしています。琉球ガラス村では、現在の体制ではオリジナルで吹きガラスの新商品をつくるのはむずかしいと言われてしまったのですが、ここであきらめません(笑)。ガラス専攻だった知識を活かして浮かんだのが、再利用がむずかしい琉球ガラスのグラスのB品を溶かして、新しい商品が作れないか?ということでした。

色によってはリサイクルがむずかしい琉球ガラス。B品のグラスを職人さんがおよそ1gになるようにカットして(右)、窯で熱すると丸い粒になる(右)。それがアクセサリーに変身!(手前)
沖縄の自然からこぼれたしずく琉球ガラスのイヤカフにもなるリングの会」。シークヮーサーの葉や琉球桜の花びらなど、雨上がりの沖縄の植物についたしずくをイメージしたそう。

小倉:沖縄の焼き物である「やちむん」はとても人気があるので、新規の依頼を引き受けるのがむずかしいと聞いていたのですが、フェリシモのお客さまにぜひ生活に取り入れてもらいたいと、「陶眞窯」さんに相談しました。どの形ならできるか、どのような販売形態ならできるか話し合いを重ね、最終的に受注生産という形に。フェリシモでしか売っていないデザインにしたいとお願いし、特別に筆入れしていただくことが叶いました。表面に描かれた「唐草」は子孫繁栄を意味する縁起のいいモチーフ。器の底にも唐草模様を描いてもらった特別仕様で、「線引唐草」と「菊唐草」の2種のデザインが完成しました。

「とっておきを食卓に 職人の手仕事が味わい深い やちむんのそばマカイ」。マカイは碗という意味で、そばマカイは沖縄そばやラーメンなどに使える大きさのどんぶりのことです。
「とっておきを食卓に 職人の手仕事が味わい深い やちむんのそばマカイ」。マカイは碗という意味で、そばマカイは沖縄そばやラーメンなどに使える大きさのどんぶりのことです。
一つひとつろくろで手がけるマカイ。外側のやわらかな丸みは、職人さんの腕にかかっています。
一つひとつろくろで手がけるマカイ。外側のやわらかな丸みは、職人さんの腕にかかっています。

Q8、「GO! PEACE!」の商品をつくる上で、大変だったことはありますか?

山川:ぬいぐるみポーチをつくる時に模様の再現が難しかったことですね。ウミガメは一部の鱗の配置が決まっているので、センターの方に監修していただきながらデザインしました。鼻と口の間に、卵を割るための卵角という角があるのですが、それも再現しようと紆余曲折を経て、口元に小さな刺しゅうをすることに。触った時に「あっ、ここにあるんだ!」と、発見を楽しんでもらえるようにしています。

小倉:私はやはり、どのようにすれば職人さんとものづくりができるかを考えていくのが課題でした。でもその分、とても楽しかったです。大量生産ではなく一つひとつ手でつくるので微妙な違いが出ますよね。普段なら通販いうこともあり、カタログに載っているものと違うものが届くのは避けるべきこと。「GO! PEACE!」のプロジェクトだからこそ、その違いをストーリー含めて魅力的に紹介できたと感じています。

Q9、「GO! PEACE!」だからできた商品だったんですね。普段の商品開発との違いについて、他にどんなことを感じましたか?

山川:先方とのコミュニケーションがすごく多かったこと。商品のために必要な情報だけでなく、活動内容を深く知ることができました。お客さまにもカタログを通して、ウミガメや「小笠原海洋センター」さんの活動内容について伝えることができたのがうれしかったですし、「GO! PEACE!」だけでなく普段の「YOU&MORE!」でも、この経験を活かしたいと思っています。いつも動物のアイテムをつくる時は飼育員さんにヒアリングをするのですが、商品で特徴は伝えられても背景まで伝えるのは難しくて。自分だけの学びになっていたこともカタログで伝えられるんだと実感しましたし、他の商品でもやっていきたいです。

小倉:「琉球ガラス村」の代表の方とお話しした時に、「どうすれば就職したいと思ってもらえるかな?」とか「材料や燃料代が高騰していているんだよね。」とか、商品ひとつに対しての話だけでなく、その周りにある困りごとなども対話できたことが印象に残りました。こういうお話にも「GO! PEACE!」を通してお客さまに興味を持ってもらえたら、未来に繋がっていきそうだなと感じています。

Q10、では最後に、「GO! PEACE!」を経験したからこそ考える、今後の展望をお聞かせください。

山川:これまでは自分が気になったものを商品化するという視点が強かったのですが、それだけでなく世の中の誰かが気になっているものごと、伝えるべきものごとを知って商品にするということに挑戦していきたいです。そのために、これまで通りチャームポイントを見つけ発信し、背景を伝えられるようになりたいです。

小倉:今回「GO! PEACE!」のプロジェクトに携わったことで、自分が想像していた以上に「誰かのために何かしたい」と思っているお客さまが多いのだと実感しています。その気持ちに応えられる企画ができる人間になりたいなと思いました。伝統工芸の職人さんたちにとっても、「あの人に相談してみよう」と思ってもらえるような存在になっていきたいと感じています。

GO! PEACE!

“みんなで「うれしい未来」をつくる”がコンセプト。「お買い物を通してだれもがしあわせの贈り手になれますように」との思いを込めて、30のソーシャルグッドなプロジェクトを掲載しています。

https://www.felissimo.co.jp/gopeace/

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