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とうほくIPPOプロジェクトレポート ― ゲストハウスみらい(宮城県 石巻市) ―

シリーズ第5回目のレポートをお届けします。今回は、「とうほくIPPOプロジェクト」第2期の支援対象事業、被災地とボランティアを結ぶ交流宿泊施設「ゲストハウスみらい」の代表 奈良坂 京子さんを訪ねました。
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― 奈良坂さんがゲストハウスを開こうと考えたのはどういういきさつだったのですか。
ここは自宅で、2階には長男家族が同居していました。津波は1階の天井近くまで押し寄せ、近所の状況も悲惨なものでした。津波で知人の多くを亡くし、痛ましい光景を目にした息子家族は、もうここでは暮らせないとー時お嫁さんの実家にお世話いただき、のちにみなし仮設に移りました。
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私は、水産加工会社を経営しておりましたが、沿岸近くにあった会社は 工場も事務所も夫経営の養殖場も壊滅状態で、国の復興支援のグループ申請を考えました。
養殖場に関しては、縮小しましたが再興することができました。水産加工場については、今後の状況を良く見極めてということで復興できておりません。小さくとも工場は、今後の雇用などを考えると、なんとかしたいという思いもあります。
被災して仕事を失った私は、何かをしなければと、焦っておりました。何かをしたい……。その時、お友達の進めで地元NPOに面接。でも経営者だった私は雇用の対象にならないと言われました。難しかったですね。でも嘆願し続け、願いが届き、臨時でしたが被災者支援独居老人の安否確認の巡回、仮設住宅での炊き出し、物資の配布等のお手伝いをしました。
― ご自分が被災しながら、ボランティアをされていたのですね。
ここでは、たくさんの人たちと知り合いました。全国から支援に来ている学生ボランティア、大学の先生たち、研究者などが多かったです。そのころは宿泊場所がなくて、遠方から来る方たちは皆さん困っていました。そこで、空いている2階の部屋を少しでも役立ててもらえればと言う気持ちがゲストハウスを開くきっかけになりました。
― 玄関が広くて、2階まで吹き抜けになっていて、大きなお宅ですね。
いつも暗い家に帰っていたのに、ある日、ボランティアから帰って玄関を入ったら、泊まっていた学生さんたちが、吹き抜けの2階から「お帰りなさ~い」と手を振ってくれたんです。その時は、とてもうれしかったですね。
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― ここでさまざまな出会いがあるのですね。
災害、不幸なことだったけれど、多くの若い人たちが何かしようと行動を起こし、これまで以上の力を発揮してたくましく活動しています。そのことに私はとても希望を感じています。ゲストハウスをしていることで、それまで出会えなかったような人たちを知ることができ、張り合いのある日々を送らしていただいていることに感謝しています。
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泣いていたって なにも変わりません。私たちは前に進まななければ、
家を離れた息子達も、そんな私の様子にホッとしているようです。「やっぱりお母さんは1人でも大丈夫だね」って。もう少し、弱いところを見せて 労わってもらう方が得かな?とも思うんですけれど、こういう性分ですから仕方ないですね(笑)
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こちらでは客室のほかに、震災を忘れないギャラリー・コミュニティールームを作りました。夜は皆自由に集まってさまざまな話をしています。時には私も仲間に入って、これまでの仕事や地域の話、震災体験を話しています。若い人たちからも教えてもらうことも多いですし。これまで私が全部取り替えていたシーツや枕カバーは、学生さんたちからの提案で、使った人が1階のランドリー置き場まで持って来る方式に変えました。2階の踊り場に誰でも使えるパソコンを置いたのも好評です。
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― あたたかい交流の様子がうかがえます。これからやりたいことは何かありますか?
皆さんが末永く「ただいま~」と実家に帰るように来てくれる場所にしたいですね。ボランティアの学生さんたちばかりでなく、宿泊するお客さまもいろいろな方がいます。
これから、海の復興も進んで行くと思うので、この場所を拠点にして、みんなを養殖場のある浜へ連れて行って、とれたての魚介類でバーベキュで食べてもらったり、漁業体験ツアーを企画したり、やりたいことは まだまだ沢山あります。
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「とうほくIPPOプロジェクト」では、第3期の募集(2013年10月末まで)を行っています。責任者・主体者メンバーが女性であることを条件に事業提案を公募し、審査の結果選ばれた個人・団体に支援金を支給して、被災地の産業復興のきっかけづくりにつなげることを目的としています。
詳しくはこちらからご覧ください。
(取材協力:シュープレス)
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