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とうほくIPPOプロジェクトレポート ―さんさカフェ(宮城県 南三陸町)―

シリーズ第6回目のレポートは、南三陸町へ、第1期の支援対象事業名「さんさカフェ」の代表 内海 明美(うつみ あけみ)さんを訪ねました。
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― 内海さんたちがカフェをやろうと考えたのはなぜですか。
私たちは、当初は8人、現在は7人でここをやっていますが、震災以前はお互いに見ず知らずの間柄でした。全員、家も仕事も家族もなくし、避難所運営に関わりながら半年間を一緒にすごした仲間です。
避難所では、親しくなった人たちもやがて、あちこちの仮設住宅に離れ離れになっていきます。
みんな「また会いたいね」、「どこかで集まれる場所があればいいのに」と、言いながら避難所を去っていきました。ボランティアの人たちからも、この地域への支援を長く継続するためにも、窓口をしめないでほしい、という声がありました。
見まわせば、このあたりにはコンビニが1軒あっただけで、ほかに店らしい店はまったくありませんでした。それならば、「みんなが来て近況を話したり、情報交換ができるような場所を作ろう」と考えたのが、私たちがカフェをオープンさせるきっかけでした。
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― みなさん、飲食店の経験があったのですか。 
いえ、私自身は建築事務所で設計士をしていました。働いていた事務所はもうなくなってしまったのですが。仲間の中には、志津川の駅前で居酒屋やレストランバーをやっていた人がいます。
避難所では、あたたかい食べ物のありがたさや、知らない人同士が食事を一緒にすることでぐっと距離が近くなることを、毎日実感していました。「何かやるなら食べ物を出す店を」と考えたのも、その経験が大きかったかもしれません。
オープンは2012年の1月。この場所は以前アパートが建っていたのですが、16mを超える大津波で跡形もなくなってしまいました。今は何もないので想像しにくいかもしれませんが、周辺は住宅地だったところなのです。ここを借りてプレハブの店舗を建て、不十分ながら厨房設備を整えました。
資金は、ボランティアの人たちの発案と協力で、「一煉瓦一万円基金」の寄付金の呼びかけをして集めました。
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― 反応はいかがでしたか。
はじめの見通しとは違い、集まったお金は予定の半分ほどでした。それでもできる限りの厨房設備を整えて、不完全ながら営業をスタートしました。メニューはあれこれ欲張らずに、日替わり定食と、こだわりのカレーの2本立て。コーヒーは本格的なものをと心がけました。
1年目は、話題性もあって外からのお客さまがたくさん来てくれました。有名人の訪問も多かったです。けれども2年目を迎え、お客さまの数は半分ほどに激減してしまいました。
避難所で一緒だった人たちも、ときどき顔を見せてくれますが、経済復興はまだまだなので、まだしょっちゅうこういう店に来てお金を使うところまでにはいたっていないのです。町内の学生さん対象には割引価格を設定しています。いつも同じ席に座る常連のお客さまもいます。いつも静かで空いているのが取り柄ですが、店の経営的にはほめられたことではありませんね。この2年目の壁を乗り越えて今後どう展開していくか、課題山積みです。
― ところで、テレビ番組で話題になったオリジナルメニューがあるそうですね。
はい、「観光客の方にもよろこばれるものを」と考えた、志津川名産の”たこ”をたっぷり使った「たこごはんカレーライス」が人気です。
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欲しかったけれど高価で手の出なかったソフトクリームの機械は、「とうほくIPPOプロジェクト」の支援を受けて購入することができました。濃厚なソフトクリームは子どもたちからの評判も上々です。
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― いろいろ苦労も多いけれど、継続していかなければならない大切な場所ですね。
私は現在、町の復興計画にもかかわっています。道路計画が固まればこの場所も立ち退きが必要になるかもしれません。こうした先行きの不安は私たちだけでなく、被災したみんなが抱えている問題です。「さんさカフェ」で話し合うことで気持ちが軽くなったり、情報を交換したり、これからはいっそうなくてはならない場所になると感じています。
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「とうほくIPPOプロジェクト」では、第3期の募集(2013年10月末まで)を行っています。責任者・主体者メンバーが女性であることを条件に事業提案を公募し、審査の結果選ばれた個人・団体に支援金を支給して、被災地の産業復興のきっかけづくりにつなげることを目的としています。
詳しくはこちらをご覧ください。
(取材協力:シュープレス)
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