欲しい、編みたい!と思えるセンスのよい手編みのニット

2024年1月26日(金曜日)

まるでファッション誌から抜け出したかのようなセンス抜群のニット作品たち。長年グラフィックデザイナーとして活躍していた梅本 美紀子さんと編み物との出合いから作家としての活動に至るまで、たっぷりとお話をうかがいました。

 

物心ついたころから編み物は身近な存在

[amuhibi]を主宰する梅本 美紀子さんは、鹿児島県種子島出身。お母さまが毛糸店を営んでいたこともあり、梅本さんにとって編み物はとても身近な存在だったそう。「小さいころの母はというと、うつむいて一心に編み物をしている姿しか思い出せないほど、編み物が好きな人でした」

梅本さんご自身も高校生になるまで編み物は続けていたそうですが、編み物が仕事になるイメージを持てずにいたところ、所属していた美術部の顧問の先生からデザイナーという仕事があると聞き、グラフィックデザイナーを目指すことを決意します。

 

毛糸や道具のほかニット作品も展示されている1階のショップ。

デザインを学ぶために島外の短大へ。卒業後は福岡を拠点にグラフィックデザイナーやアートディレクターとして活躍。そんな多忙な日々を過ごす中でも編み物は続けていたそうです。「ある日、地場産業のブランディングの仕事を通じて出会ったキュレーターさんから、東京で開催される展覧会への作品制作の依頼を受けました」 それまでの梅本さんは、三國 万里子さんの作品などが好きで、本を購入しては編むという、趣味としての編み物を楽しんでいましたが、この依頼をきっかけに自らニットをデザインして編むことにチャレンジ。毎年冬には都内で展示会をするようになりその作品のひとつが著名なスタイリストの目にとまり、CMの衣装小物に採用されることもありました。梅本さんの中で、編み物の比重が高まってきたのもちょうどこのころ。「誰かに依頼されたものではなく、自分がいいと思うものを100%カタチにしたい、と考えていたところに、趣味でしかなかった編み物が、急に自分の仕事として、また目の前に現れたような感じでした」

 

画家の山口 一郎さんが描いた鳥の絵。
大きな窓から自然光が降り注ぐ。

また、梅本さんは編み物人口が減少していることにも危機感を持っていました。「私にとって編み物はクリエイティブでおもしろく、飽きることがありません。編まないなんてもったいないんです。その魅力をたくさんの人に知ってもらうには、人を動かすデザインの力が必要だと思っていました。ですから、出版のお話をいただいたときに、真っ先にファッション誌のような編み物本を作りたいと思ったのもそれが理由です。アートディレクター時代の経験を生かしながら、デザインの力で編み物への興味をもっと広げられたらと思っています」

 

[amuhibi]オリジナルのキットも並ぶ。

梅本さんが東京の展覧会に出品しているという話は、しばらくすると福岡の人たちの耳にも届きます。「福岡で初めて展示会をしたときのこと。在廊時に時間を持て余していたので、キットの購入者を対象に編み物教室を開催しました。会期が終わっても教えて欲しいとの声が多く、平日はグラフィックデザイナー、土曜は編み物教室という生活が数年続きました」

 

センスは誰もが鍛えることができるはず

「[amuhibi]の本を見て編み物を始めましたと言っていただけることが本当にうれしい」と梅本さん。

グラフィックデザイナーやアートディレクターとして仕事をした経験は、[amuhibi]のブランディングにも活かされていると、梅本さんは言います。「編み物の道具は、海外に比べて種類が少なく、私自身、欲しいデザインになかなかめぐり合えないというもどかしさを感じていました。おしゃれな海外の編み物道具や、オリジナルのデザインに、上質な輸入毛糸を合わせたキットを販売したい、編み物好きがわくわくして買い物を楽しめるお店をやりたいと、思うようになりました」 こうして梅本さんは、2018年秋、オンラインショップを開設。自分ひとりでのんびりと取り組む予定でしたが、想像以上に忙しくなり、2019年春、商品を保管するスペースを兼ねたアトリエをオープンさせたのです。

 

チェコ製のガラスボタンが目を引く「猫のお守りポーチ」。
猫の保護活動にも取り組む梅本さん。2階は保護猫のためのシェルターも兼ねています。

梅本さんの作品や書籍のファンの中には、従来の編み物のセオリーにとらわれない圧倒的なセンスに魅力を感じている方も多いのではないでしょうか。そのセンスの源を聞いてみると、意外な答えが返ってきました。「センスは鍛えることができるんですよ。センスよくなりたい!と思っていた学生時代からよくやっていたのは、「こんなふうになりたい」と思う人を見つけて、服を選ぶ時やインテリアを考える時に、自分じゃなくその人になったつもりになること。例えばいつもおしゃれな友だちを想像して、あの子はこれを選ぶかな?と考えてみる。迷った時にこれをやるとすごく決めやすくて。センスのよさって、客観性と俯瞰で見る視点が大切ですが、このやり方だと無理なく別の視点を、自分の中に持つことができます。私はこれを「憑依法」と呼んでいます。笑」。

 

Retrosaria Rosa Pomarをはじめ、多種多彩な輸入毛糸を取り扱う。
ニッター向けのオリジナル雑貨の開発にも力を注ぐ。編み物に集中しすぎて、ついついコーヒーを冷ましてしまう人のためのオリジナルブレンドコーヒーや、衣類の虫除け効果があるアロマをブレンドしたハンドオイルなど。

最後に。編み物を美しく仕上げるコツを聞いてみました。「まずはリズムをつけて編むこと。無意識に手が動くようになると、目はそろいやすくなります。あとは美しい編み地をたくさん見ること。脳内のイメージ以上のものは、手が再現できないので。そしていちばん大切なのは、『きれいなものを編みたい』という気持ちです」  2021年5月には、現在の場所に移転し、1階には待望の実店舗が完成。2階は編み物教室などを開催するスペースとなっています。現在、編み物教室には、県外から通う生徒さんも多いそう。ますます活動の幅を広げる梅本さんから、今後も目が離せません。

 

2022年 大旋風を巻き起こした「amuhibi KNIT BOOK」、待望の第2弾が発売開始。

グラフィックデザイナーの経験とセンスを生かして提案するニットはこれまでにない魅力にあふれたデザインばかり。上質な糸でていねいに編みたいウェア10タイプと小物5タイプをおしゃれな写真とともにご紹介します。

 

「amuhibi KNIT BOOK 2nd」〜amuhibiと編むニット〜

(日本ヴォーグ社刊)

アマゾンや書店にて絶賛発売中

 

クチュリエウェブでamuhibiオーナー梅本 美紀子さん監修のキットを発売開始。

現在、クチュリエWEBで開催中の“編み物フェスタ”で特別キットを発売します。上質なROWANの毛糸を使った靴下とスヌードを特急便でお届けします。

編み物フェスタの開催時期は、2024年2月10日(土)まで!

 

amuhibiオーナー
梅本 美紀子
グラフィックデザイナー、アートディレクターを経て、現在は手編みのニットデザイナーと編み物講師として活動。2018年12月にオンラインショップを設立し、2021年5月には福岡市中央区に編み物教室を併設した輸入毛糸専門店をオープンした。愛称はにゃんこ先生。

Instagram:@amuhibiknit

本記事で紹介した商品はこちら

ROWAN×amuhibi たんぽぽのスヌード

記事で紹介した梅本さん監修のスヌードのキットです。

ROWAN×amuhibi ミモザの靴下

記事で紹介した梅本さん監修のソックスのキットです。

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