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OSHIGOTO 平岩康佑さん

「OSHIGOTO」#001 e-スポーツアナウンサー 平岩 康佑さん 3/3

2019年11月16日(土)に「神戸学校」で行われたeスポーツアナウンサー平岩康佑さんの講演会の様子をお伝えします。ゲームが好きな思いがつのり、自身でeスポーツ専門のアナウンサー会社を立ち上げ、活躍されている平岩さん。自身の「好き」を仕事にすること、誰にでも眠るワクワクを呼び起こすことで人生をより豊かにするヒントがたくさん散りばめられていました。
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「OSHIGOTO」#001 e-スポーツアナウンサー 平岩 康佑さん 2/3

趣味や生きがいを無理に仕事にすることはない

仕事を趣味にするのはよくないと思いますが、趣味を仕事にする、生きがいを仕事にするのは、楽しいことなのでいいと思います。

でも僕は無理に奨励はしていません。趣味や生きがいというのは、利害関係がないフィールドでもあります。別に自分がどれだけ下手くそな絵を描いても、売るわけではないし、展覧会で見せるわけでもない。自分が楽しければそれでいいじゃないですか。そういう資本主義的なところが絡まないのも、趣味や生きがいのよいところなので、それは自分の安息の地として守ってもいいと思います。

もし仕事にしたいのなら、私みたいに思い切って転身するのもいいと思いますし、むしろ私はそういう人を応援したいです。でも、年齢の制限もあるでしょうし、家族や金銭的な制限もいろいろあると思うので、別に無理に趣味を仕事にする必要はありません。

講演会の様子

「何に代えてもこれをやりたい」というものがある。今の時代において、それはすごくしあわせなことです。

最近「ユーチューバーをやりなよ」とか言う人も多いですが、それは別にどちらでもよくて、本人がやりたいならやればいいし、やりたくなければやらなければいいだけだと思います。

ただ、生きがいは見つけないと、自分だけのワクワクがないと、例えば浮気をしてしまったりするんですね。彩りのない人生の中に、急に入ってきた新入社員のかわいい女の子が声をかけてくれたりして、そこでワクワクしてしまうとダメなんです。

そうじゃなくて、「いや、俺は会社が終わったら、帰ってどうしてもやりたいことがある。今日はこれができる時間があるんだ」という瞬間を増やすと、すごく楽しく生きられると思いますし、仕事に向かう憂鬱な電車の中でも気分が全然違うと思います。「今日はこんなことをしてみようかな」と考えていると、仕事への取り組み方も変わってきます。そういうところを強く求めていくことです。

ゲームがやめられないという若い人たちも多いですが、それはすごくしあわせなことだと僕は思っています。

彼らには生きがいがある。「何に代えてもこれをやりたい」というものがある。いまの時代において、それはすごくしあわせなことです。これまでの日本でしあわせと定義されていたことが、これからどんどんくずれてくると思うので。最近、経団連の会長もトヨタの社長も言っていましたが、終身雇用の時代が終わる。すると、いい会社に入ることがしあわせな時代が終わる。いい大学に入る必要もなくなってくる。「じゃあこれから、何をすれば一番しあわせになれるんだ?」という時代が、けっこうすぐそこまで来ていると思います。

自分だけがいいと思う「何か」を見つけていくと、すごく楽しい人生になるし、新しい自分を開ける

最近10年で世界は見ちがえるように変わりました。ちょうどiPhoneが11年前ぐらいに出ているんですが、最初のiPhone 3Gが出るまで、スマホなんて誰も持ってなかったですよね。今からすると、これは考えられないことです。当然ドローンもないし、VRもなかった。インターネットだって、LTEも3Gもなかった時代が10年前です。そう考えると、これから10年先がどうなるのかというのは、誰にもわからないんです。

だから、みんながいいと思っていることは別に置いておいて、自分だけがいいと思う「何か」を見つけていくと、すごく楽しい人生になるし、新しい自分を開けるのではないかなと思います。

そこにおいての生きがいは、やっぱり人の目を絶対に気にせず、世間的にどうだとかは関係なく、「自分がいい」と思えるものです。犯罪めいたことはダメですが、どんな小さなことでもいい。例えば爪楊枝でお城を作ったりする人がいますが、素晴らしいと思います。あれだけ大きいお城をつくる情熱が自分の中にあるなら、それが何よりの価値ですから。別にお金にならなくてもいいんです。それのためにふだんの仕事ができる。それが生きがいだから、すべてのことがうまくいく。そんなものが一つあれば、すごく強く楽しくしあわせに生きられる世の中に、これからはもっとなっていくと思います。

読書とアウトプットをしながら、楽しく生きていただければなと思います。

講演会の様子

平岩さんが一生をかけてやり遂げたい夢は?

先のことをあまり考えないタイプの人間で、来年とか来月とか、もっと言えば明日のことで精一杯なくらい忙しくさせてもらっていますが、一生かけてやりたい夢というと、やっぱり自分の人生を支えてくれて、いま仕事にもなったゲームを、これまで楽しんでいなかった人にも楽しんでもらうことです。
これはゲーム会社がやることでもありますが、端的に言うと、おじいちゃん、おばあちゃんにeスポーツを見てもらいたい。そこまで行きたいというのが一つの夢です。まあこのまま行けば、多分20年くらいで実現できるのではないかなとも思いますが。

先程も言いましたが、十数年前の日本は自分がゲームをしていることを口にするのも恥ずかしいような社会でした。でも今は変わってきて、プロゲーマーのイベントにもたくさんの女性がお金を払ってきて来てくれたり、親御さんが応援に来てくれた大会もありました。

こうしてだんだん認知されていく中、最後まで「いやいやゲームなんて俺は見ないよ」と言っているような人たちでも思わず熱狂してしまうような試合や、空気作りや、実況とかを、最終的にはやりたいと思っています。これは別に世の中のためとか、ゲームの地位向上のためとかいう格好つけたことではありません。新しい技術や、自分がいま一番やっていることとかを、年齢が上の人に認めてもらったり、楽しんでもらったりすることが、個人的に好きです。「こんなに便利なんですよ。もうテレビじゃなくて、Netflixやアマゾンを見てください。千円で映画もこんなに見られるんですよ」とか、「スマホってこんなに便利ですよ」とか、私はそういうのを押していくのが好きな人間なので。その魅力をぜひ、最後まで抵抗している人に見させたいですね。のめりこませたいです。

周りにもそういう人、最後までガラケー使っているおじさんとか、いるじゃないですか。でも、「俺はガラケーなんだ」ってがんばっている人も、絶対スマホ使うんですよ。「スマホ便利やんけ」とか言いながら使うようになった人が、先輩のアナウンサーにもいました。「だから言うたやん!」みたいな。それは彼らのポリシーなので、別に悪いとは思いません。でもそういう人たちに対して、「いやいやちょっとお父さん、eスポーツ見てみてくださいよ。ちょっとおもしろくないですか。熱くないですか。高校野球みたいでしょう」って伝えてよさをわかってもらうのが、今やっているビジネスのビジョンであり、ゴールですね。

講演会の様子

ゲームへの誤解を一つでも解いていただいて、壁を低くしていただければと

若い人はみんな、思ったより早くやってくれています。2018年、私がODYSSEYを立ち上げたときのことをお話しすると、海外のeスポーツスタジアムで、それまでオタクと言われてきたような人たちが、立ち上がって、手を突き上げて応援しているのを見ました。それまで見たことのない光景でした。彼らは多分サッカースタジアムにも行かないし、クラブで踊ったり、飲んで騒いだりもしないけど、やっぱりそういうのをやりたいっていうエネルギーというか、フラストレーションのようなものがあって、それがゲームの応援という形で噴出していた。これを見て、日本でも絶対に実現したいなと思って、会社を立ち上げたのです。

すると、想像以上に早くいろいろな人たちがついてくれて、追い風も強くなりました。もちろん僕の力ではないですが、そういうことが世間的に本当に早く実現できた。だからこれからは、最後まで抵抗している人もeスポーツ側に引き込んで、「eスポーツええやんけ」って言わせたい。すごく大きな壁を何度も越えなくてはいけないでしょうが、それがやっぱり理想ではありますね。短期的な目標としては、「興行としてプロ野球を超える」ということをインタビューなどではよく言っています。

ゲームを馬鹿にしているとまでは言いませんが、「大人になってゲームなんかやってるの?」って言っている人たちが熱狂的に応援するところまで来たら、自分のゲームに対する思いはの一つは成し遂げられたのではないかと思っています。

なので、やっぱり新しいことに人を引き込んでいかなくてはいけない。古いものがいいと思っている人たちに新しいものを提案して、そこに労力と、何より大事な時間を割いてもらうことになるので、エネルギーは要ると思いますけどね。みなさんもぜひ今日をきっかけに、ゲームへの誤解を一つでも解いていただいて、壁を低くしていただければと思っています。

講演会の様子

どんなことでもそうですが、新しいものを受け入れて、より楽しくなったり、より利益を享受できたりするタイミングというのが必ずあります。例えば、スマホをいち早く使い始めた人たちは、いま多分、一番新しいビジネスをしていたりします。何でもかんでも使いこなしてすごく便利に生きている人というのは、いわゆるアーリーアダプターと言われる、人より早く踏み込んでいる人たちです。

だから、ゲームやeスポーツに関してもあまり重く考えず、「ゲームの大会、なんかおもしろそうじゃん」とか、「子どものゲームの大会、見に行ってみようかなあ」とか、そんな感じで本当にいいと思うので、飛び越えてみてください。そうしていただくと、ガラケーおじさんを説得する私の夢の実現も早まると思うので、ぜひみなさんよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

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