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OSHIGOTO 平岩康佑さん

「OSHIGOTO」#001 e-スポーツアナウンサー 平岩 康佑さん 1/3

2019年11月16日(土)に「神戸学校」で行われたeスポーツアナウンサー平岩康佑さんの講演会の様子をお伝えします。ゲームが好きな思いがつのり、自身でeスポーツ専門のアナウンサー会社を立ち上げ、活躍されている平岩さん。自身の「好き」を仕事にすること、誰にでも眠るワクワクを呼び起こすことで人生をより豊かにするヒントがたくさん散りばめられていました。


講演会の様子

平岩さん:みなさんこんにちは。元朝日放送アナウンサーの平岩康佑と申します。ちょうど1年前までは誰かを迎える立ち位置のことが多くて、迎えられることになかなか慣れませんが、今日はどうぞよろしくお願いいたします。

私の出身は東京で、大阪の朝日放送に新人のアナウンサーとして入社しました。そこで7年間、主にスポーツの実況、特にプロ野球や夏の高校野球の実況の仕事をさせていただきました。2018年6月に朝日放送を退社しました。その夏は高校野球が記念すべき第100回大会の年でした。100年以上の歴史がある中で、本当に名誉ある夏でしたが、それを前に退社をさせていただいて、株式会社ODYSSEYという会社を立ち上げました。今はeスポーツのアナウンサー、もっと言うとゲーム専門のアナウンサーとして、お仕事をさせていただいています。

e-スポーツとは?

はじめに、eスポーツとは何なのかというところからお伝えできればと思います。

ゲームの話をする前に、みなさんのゲームとのふだんのふれあいがどれくらいあるのかということを確認させていただきたいので、挙手でアンケートを取りたいと思います。今現在、ご自身のスマートフォンであるとか、ご自宅の家庭用ゲーム機、あるいはパソコンで、何らかのゲームが入っていて、プレイをしているという方は手を挙げていただいていいですか。

「#会場挙手」

結構いらっしゃいますね。その中で、ふだん、スマホ以外でゲームをすることがある方は?

「#会場挙手」

結構いらっしゃいますね。先日、経済産業省で偉そうに講演させていただきましたが、その時は手が挙がらなくて惨憺たる結果でした。今日は年配の方も含めて手を挙げていただきましたので、少し話しやすいかなと思います。

まずはeスポーツとは何かというところを簡単にお話しさせていただければと思います。

最近よく聞くようになったeスポーツですけれども、定義としてはコンピューターゲームやテレビゲームで争うスポーツ競技、簡単にいうとゲーム大会です。いろんなゲームを使って、そのゲームの1番うまいチャンピオンを決めるというゲーム大会になります。その規模がどんどん広がっていて、スポンサードされているプロゲーマーという方が出てきたり、賞金が何億円にもなったりしています。日本で言うと、要はプロ野球やJリーグみたいなスポーツとして、興行にしましょうというのがeスポーツです。

講演会の様子

eスポーツの世界の現状

ではeスポーツがどんな人に、どのように見られているかご紹介します。今はYouTubeなどネット上のプラットフォームが強いのですが、それも変わりはじめています。

アメリカのブリザードという大手ゲーム会社がeスポーツの大会を開催しており、その放映権をディズニーが取得して、地上波のスポーツネットワークESPNで毎週中継をしています。野球やサッカーと同じように、アメリカでは地上波のテレビでeスポーツが見られるようになっています。ディズニーはこの放映権の取得に100億円を出したと言われていますが、大会は非常に盛り上がっています。

このディズニーが放映権を買ったリーグ、いろいろなチームがありますが、新しいチームを作るのに35億円かかります。これがネックになっていて、日本にはチームがまだありません。いま韓国にはソウルダイナスティなど4チーム、中国も6チームほどあります。韓国ではワールドリーグを運営していて、それがテレビで流れています。アメリカではフィラデルフィアやロサンゼルス、ニューヨークなどにチームがあります。ロンドンのチームもあります。

アメリカはやはりこういったショービジネス、スポーツビジネスが非常にうまくて、このゲームの専用スタジアムも最近できました。

日本のeスポーツの現状

世界の現状をお伝えしましたが、では日本でどれだけ盛り上がっているかというと、サイバーエージェントの子会社でサイバーゼットという会社があり、「RAGE」という大会をやっています。実は日本も、さっきと比べると小さく見えるかもしれませんが、1億1,000万円の賞金を出しています。2018年の大会では、この日本人のふぇぐ選手という大学生が1億1,000万円を獲りました。優勝して1億1,000万円という賞金は、世界的にもけっこう大きいです。この大会は2019年12月にもありますが、賞金額がだいぶ上がって、盛り上がってきました。

これからまた賞金総額1億円でプロツアーが始まりますが、そのチャンピオンシップは、Google、トヨタ、スポーツ雑誌の『Number』、コカコーラ、三井住友カードなど、ゴルフのトーナメントや野球の日本シリーズみたいなスポンサーが並び注目されています。実際に出資をしているスポンサーの方に話を聞いてみると、とにかく若い人がたくさん来ることが大きいということです。この大会も2日間でイベントとしては8万人ぐらい来ましたが、ほとんど10代とか20代の前半の子たちです。こういった人たちがこれだけ熱意を持って集まってくれるイベントは、いまなかなか日本にありませんから、ゲーム会社の人たちも、そしてスポンサードしている人たちも、若い人へのプロモーションという意味でかなり注目しています。同じように、いまNPB(日本野球機構)もeスポーツを始めました。

また、eスポーツの場所として、コナミさんたちが銀座にeスポーツスタジオという大きいビルを建てています。このほか、慶應義塾大学でeスポーツ論という授業が始まったり、関西では近畿大学でeスポーツサークルが非常に盛り上がっていて、私も実況しに行きました。

さらに、eスポーツの専門学校もでき始めています。これは東京アニメ・声優専門学校というところと、大阪の本町にあるデザイン& IT専門学校というところで、プロゲーマーになるような選手たちを養成する学校になっています。高校を卒業した人たちが2年間行く専門学校ですが、これがすごい。東京アニメ・声優専門学校は募集が50人だったのですが、問い合わせが1万件来て、急遽全国5校にeスポーツ専科を増やし、教室の希望も5倍にしました。それでもまだまだ足りなくて、拡大を続けているということです。

eスポーツアナウンサーのお仕事

ここまでeスポーツについてお伝えしてきましたが、ここで私の会社が何をしているかを、簡単に説明したいと思います。

うちのODYSSEYは、ゲーム会社やYouTubeを相手に仕事をさせていただいています。これは取引している企業の一部ですが、任天堂さん、コナミさん、ミクシィさんとか、AbemaTVのように配信するところとも仕事をさせてもらっています。1年で多くの仕事をさせていただいているのは、当時、僕と同じ仕事をしている人が一人もいなかったからです。ここには戦略性もありました。

講演会の様子

入った瞬間にもうオンリーワンであり、ナンバーワンになれるチャンスでした。

eスポーツのイベントが幕張メッセなど、どんどん大きいところでやるようになっていたのですが、現場で解説、実況、MCをやっていたのが、もともとユーチューバーだったり、プロゲーマーを目指していた人たちばかりで、プロの喋り手というのが一人もいませんでした。彼らはゲームのプロではありますが、喋ることはプロではないので、司会などはやっぱり拙い。僕もゲームの配信を見ていて、「お客さんの人数も多くなっていく中で、これでは苦しいな」と感じていて、ここにはチャンスがあるだろうなと思っていました。

2018年の夏、eスポーツの仕事をしながら、先輩たちが100回大会の実況をしているのを聞いて、すごくうらやましいなと思いましたし、後悔も正直ありました。もちろん高校野球の100回大会もやりたかったです。でもやっぱり、一人もいないところに身を置くことで、それだけ強くなれるという自信がありました。

スポーツ実況のアナウンサーって、フリーの人も合わせて日本全国で1,500人くらいいます。その中で一番を狙っていくのは大変ですし、その中で、じゃあオリンピックでしゃべれるのか、いい仕事を取れるのかとかいうところには大変な競争があるし、年功序列的なところもあります。

でもゲーム業界には一人もアナウンサーがいなかったので、入った瞬間にもうオンリーワンであり、ナンバーワンになれるチャンスでした。だからもうこれは身を移すしかないと思いました。もちろん元からゲーム好きだったというのもありますが、そういう戦略をとって辞めました。

そのことをYahoo!ニュースのトップに上げていただいたこともあって、初日で仕事の依頼が40件あり、さらにその最初の1週間で100件の依頼があるという本当にうれしい誤算の中、スタートを切ることができました。事前に一応新聞記事のインタビューを受けていたものの、それがどれだけのニュースになるのかというのは、出るまでわからない。もちろんYahoo!ニュースの方にも話をしていましたが、「まあ他のニュース次第ですかね」という感じで。

僕はふだんお酒を全然飲まないのですが、このニュースが出る前の日には心配で、弟としこたま酒を飲みました。やっぱり怖くなってきちゃって。「本当にニュースになるのか?」「辞めちゃったけど大丈夫かな?」という気持ちがあったんですが、昼ごろ弟に起こされて「Yahoo!ニュースでトップになってるよ」と聞かされたところからこれだけの仕事をいただくことができて、本当に人生変わったなと言う瞬間でした。

弊社、株式会社ODYSSEYですが、eスポーツのキャスター事務所ということで、タレント事務所のeスポーツ版だと思っていただければ一番わかりやすいと思っています。

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