フェリシモCompany60th

ワインをつくり、場をひらくことで人やまちとのつながりを醸す。神戸の都市型ワイナリー「f winery」~担当者にインタビュー~【後編】

橋本さん、中村さん、渡邉さん

―フェリシモの商品・サービス企画の根底にあるサステナビリティ・ストーリー―

事業性、独創性、社会性が重なり合い生み出されるフェリシモならではの商品やサービス。
この連載では「社会性」にフォーカスし、プロジェクト担当者たちの想いをお伝えしています。

今回ご紹介するのは、フェリシモ本社にある都市型ワイナリー「f winery(エフワイナリー)」。前編では、自分たちの手でものづくりを行う場であるf wineryが生まれた背景や、社内外でのコミュニケーションとしてのワインについて伺いました。

後編では、小さな醸造空間で行われているワインづくりをたどりながら、人が集まり、会話が生まれる「場」としてのf wineryに迫ります。

話し手:橋本和也さん、中村圭緒さん、渡邉恵子さん

聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局

インタビュー前編はこちら】 

自分たちの手で、一本ずつ仕上げる

f wineryにぶどうが届くと、鮮度のよいうちに醸造が始まります。赤ワインは皮や種を含む粒のまま、白ワインは果汁を搾ってから発酵へ。皮や種の成分が、赤ワインならではの色や渋みにつながります。

中村:発酵の速さは温度や酵母の状態によって変わるので、とても繊細です。醸造家さんが日々確認しながら、目指す味に近づけてくださいます。

中村さん

醸造区には、ステンレスタンクや木樽、びん詰めやコルク打ちを行う機械などが並びます。原料のぶどうが届いてからびんになるまで、すべてここで行われているのです。

左は除梗破砕機(じょこうはさいき)といって、ぶどうの実と梗(こう:枝のような部分)を分ける機械。右はコルク打ちを行う機械。とても強い力が必要なのだそう。
左は除梗破砕機(じょこうはさいき)といって、ぶどうの実と梗(こう:枝のような部分)を分ける機械。右はコルク打ちを行う機械。とても強い力が必要なのだそう。

長らくファッション企画を手がけ、もともとワイン好きだったという中村さん。醸造をより深く理解するために、仕事を続けながらソムリエ資格を取得しました。

中村:服を企画するにも、素材や縫製の知識が必要ですよね。それと同じで、素材や工程のことを知らなければ、醸造家さんと対等に話し合うことも、問題が起きたときに原因を考えることもできません。

企画・販売を中心に通信販売を手がけてきたフェリシモが、素材や工程と向き合い、つくり手としてゼロから挑んだf winery。ぶどうを仕入れ、醸造し、一本のワインとして届けるまでのすべてを担う経験が、フェリシモのものづくりに新たな視点をもたらしています。

f wineryの醸造区

海底熟成が生み出す、いつもとちょっと違う会話

f wineryでは、神戸港の海底にワインを沈め、一定期間熟成させる取り組みも続けています。

引き上げたボトルには、まるで海中で過ごした時間を物語るように、貝殻や海の生き物が付着しています。

中村:同じ時期につくられた通常のワインと飲み比べると、色や香り、舌触りの違いを感じるお客さまが多くいらっしゃいます。成分が実際に変容しているのかどうかは、まだはっきりわかっていませんが、研究機関と連携し海底で起きている変化を分析したいと考えています。

ワインを注ぐ中村さん

橋本:普通にワインを飲むだけではない会話が生まれるんです。沈めていないワインと飲み比べて「どちらが海に沈めたワインでしょう」とお話のきっかけが生まれたり、「海の中で何が起きたんだろう」と想像しあったり。ワインをきっかけに言葉を交わすこともまた、f wineryの楽しみ方のひとつだと思います。

f wineryの目の前の海底からワインを引き上げる様子
f wineryの目の前の海底からワインを引き上げる様子

最近では、神戸の酒蔵でつくられた日本酒をワインと同じかごに入れて沈めるなど、取り組みは少しずつ広がっています。海底に沈めたお酒がどんな変化をみせるのか。好奇心を分かち合うことが、お酒の種類やつくり手を越えた新たなつながりにもなっています。

開かれた場があるから、深められる関係性がある

ワインを味わうだけではなく、人が集まり、新しい関係が生まれる場としても使われているf winery。

U30世代が語り合う「スナックこのごろ」、フェリシモの社員が出演するフラメンコのライブ、フェリシモの部活動「Rin-b!(リンビー)」によるアートイベントと、貸切イベントや社内外とのコラボレーションなど、その活用方法はさまざまです。

さまざまなシーンで社員やつながりのある人たちが集まり、ワインを片手に同じ時間を楽しめる場になりつつあります。これには、初対面同士でも自然に会話が弾む長いカウンターも功を奏しているのかもしれません。

f wineryの様子
20代の同世代が社内外から集う、スナックこのごろ開催の様子。カウンターの設計が活きています!

また、神戸のまちを巡るツアーのトーク会場や、お隣のGLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナ神戸)に集う方々によるファンミーティングにも使用いただき、楽曲をイメージしたメニューやランチョンマットをご用意するなど、小さなワイナリーだからこそできる工夫も。

こうした場の活用の広がりは、新しい企画を生み出すきっかけにもなっています。

橋本:活動をするなかで誰かと出会ったときに、「次はワイナリーで何かしませんか」と声をかけやすくなりました。以前は会場探しからでしたが、今はワイナリーに来ていただくことから可能性が広がっています。場があることで、一緒に企画を始めるまでの距離が短くなったと感じます。

笑顔の橋本さん

さらに社内では青森部と地域の産品を楽しむ企画が生まれるなど、「ここがあるからできること」は少しずつ広がっています。f wineryは、海と陸とが混じりあう汀(みぎわ)のように、人や活動が交わり、次のつながりが生まれる場になっています。

f wineryの外の様子

地域の食と人をつなぐ、みんなのワイナリーへ

f wineryがこれから力を入れたいと考えていることのひとつが、地元の食文化と結びついたワインづくりです。

中村:いかなごやそばめし、明石焼きなど、神戸をはじめ兵庫の食に合うワインをつくりたいと思っています。何種類かを飲み比べて、「いかなごに一番合うのはどれだろう」と、みんなで選ぶのもおもしろそうです。

身近な食をきっかけに、ワインを飲んでみようと思ってもらえたらうれしいと語る中村さん。過去のイベントでは、あえて料理に合わないワインを試したことも。違いを自分の舌で確かめることも、ワインを飲む楽しみやコミュニケーションを深める方法の一つです。

渡邉さん、中村さん、橋本さん。

さらに渡邉さんは、今後は完成したワインを届けるだけではなく、つくる過程にも参加してもらいたいと話します。

渡邉:オリジナルのラベルを企画してみるなど、何らかの形でワインづくりに関わってもらい、完成したときに「自分たちのワインだ」と思ってもらえる人口を増やしていきたいですね。

土地の食を楽しんだり、ワインづくりにゆるやかに関わったりしながら、ワインをもっと自分たちに近いものにしていく。f wineryという場は、ここを訪れる人やワインを飲む人とともに、これからも新しいつながりを醸していきます。

f wineryの看板
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