―フェリシモの商品・サービス企画の根底にあるサステナビリティ・ストーリー―
事業性、独創性、社会性が重なり合い生み出されるフェリシモならではの商品やサービス。
この連載では「社会性」にフォーカスし、プロジェクト担当者たちの想いをお伝えしています。
神戸の海沿いに佇むフェリシモの社屋。「Stage Felissimo」と題したこの建物の一角に、今回ご紹介する「f winery(エフワイナリー)」があります。
2021年に誕生したこの小さなワイナリーは、神戸をはじめ日本各地や海外から届くぶどうを使い、年間を通して多彩なワインを生み出す都市型ワイナリーです。醸造区に隣接する店舗では、これらのワインを味わうこともできます。
f wineryが目指しているのは、ワインをつくり、販売することだけではありません。近隣の企業や地域において、ワインをきっかけに人と人の関係を醸成していく場であること。
今回は、立ち上げから携わる中村圭緒さん、橋本和也さん、新たに仲間に加わった渡邉恵子さんに、f wineryを通して見えてきた一からワインをつくることの意味や、場をひらくことの意義について伺いました。
話し手:橋本和也さん、中村圭緒さん、渡邉恵子さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
フェリシモに誕生したものづくりの現場
フェリシモ社屋のある新港町は再開発が進み、水族館やアリーナなどが集まるウォーターフロントエリアです。
人が行き交う場をつくりたいという思いから、フェリシモはオフィスだけでなく、チョコレートミュージアムやレストラン、そしてワイナリーを設けました。

中村:商品を企画し、取引先のメーカーさんにつくっていただき、物流を通してお客さまに届けるのが、フェリシモの従来のビジネスモデルです。けれど新社屋には、自分たちがものづくりの最初から最後まで関わる場所をつくりたいという思いがあったんです。

フェリシモには、かつてフランスの商品を紹介するカタログを手がけ、現地からワインを輸入してきた歴史があります。また、フランスのワイン産地・ディジョンには、現在もフェリシモのシャトーがあるなど、以前からワインとの縁を育んできました。さらにワインには、産地や品種、香り、料理との組み合わせなど、その背景に思いをはせ、会話を広げてくれる魅力があります。
そうした背景もあり、気軽にワインを味わい、おしゃべりを楽しんでもらいたいという思いから、この空間がつくられました。
中村:f wineryで象徴的なのが、醸造タンクと長いカウンターです。単なるワイナリーや飲食店ではなく、ワインを通して人とつながる場所にしたかったんです。フェリシモの「ともにしあわせになるしあわせ」という理念にも通じる場所だと思っています。

畑を持たない都市型ワイナリーだからできること

海と山が近い神戸のまち。山を越えれば田園風景地帯もみられ、ぶどうも栽培されています。f wineryでは、神戸産のぶどうを大切にしながら、全国各地や南オーストラリアからも原料を仕入れています。
中村:神戸のぶどうは、最初から必ず使いたいと考えていました。一方で、私たちは自分たちの畑を持たない都市型ワイナリーです。その利点を生かして、その年につくりたい味に合わせ、各地からぶどうを選んでいます。

収穫時期は、天候やぶどうの状態によって変わります。ちなみに、神戸のぶどうが届くのは、主にお盆前後になるのだそう。
中村:ワインは生き物ですから、予定通りにはいきません。畑から「今日が一番いい状態だから収穫しました」と速報が入れば、なるべく早く受け取る。ぶどうは水を加えず、その果実だけでワインになるので、できるだけ鮮度のよい状態で醸造にはいりたいんです。
畑の時間にあわせて動き、港を望むワイナリーで仕込む。海と山の距離が近い神戸だからこその風景をも感じさせてくれます。
節目のお祝いをワインに託して
f wineryでは、企業や団体の周年に合わせたオリジナルラベルのワインも手がけています。
先日ご依頼をいただいたある企業の創立80周年では、神戸産のぶどうを使ったワインを500本以上納品。そのほかにも、さまざまな節目にあわせてワインを届けてきました。
渡邉:周年は、会社や団体にとって、それまで関わってきた人との関係を改めて確かめる大切な機会です。どのワインを選ぶか、どんなラベルにするかを話し合うこと自体も、その企業内のコミュニケーションの活性化につながるのではないかと考えています。

実は、ラベル貼りは機械化していません。だから、数百本単位の企業案件だけでなく、たった1本の依頼にも応えることができます。小規模ワイナリーならではの強みといえます。
中村:フェリシモのある部署では、メンバーの誕生日ごとに、その人に向けたラベルをつくってワインを贈るなんていう粋な企画もしていて。40人いれば40種類。とてもすてきですよね。
オリジナルラベルは、企業の歩みを祝うだけでなく、そこに関わってきた人やともに過ごした時間をねぎらい、これからの関係を育てる役割も担っているのかもしれません。

ゼロからメーカーになるという挑戦
通販事業をメインに手がけてきたフェリシモにとって、原料の仕入れから製造、びん詰め、販売までを自社で担うことは、初めての経験でした。
原価計算の仕組みづくりから、醸造免許や酒税、ラベル申請まで、必要な制度を一つずつ調べながら整えていきました。
中村:これまでなら、メーカーさんから見積もりをいただいて商品の価格を考えていました。でもワインは、ぶどうにいくらかかり、設備費をどう入れ、一本をいくらで販売するのか……すべてゼロから考えないといけない。酒税の払い方も、ラベルの申請も、一つずつ学んでいきました。

簡単ではなかったからこそ、フェリシモのなかに、ものづくりを別の角度から考える機会も生まれました。
中村:メーカーとして現場を経験できたことは、とても大きかったです。ものづくりの現場を見ることで、ワイナリーのメンバーに限らず、商品づくりのインスピレーションを得られるのではないかと思います。
事業としてワインを販売すること。これまでにない商品や体験を生み出すこと。そして、ワインを通じて関係を育てること。f wineryは、試行錯誤を続けながら、その3つを一つの場で実現しようとしています。
前編では、f wineryが誕生した背景や、神戸のぶどうを港のそばで醸す意味、企業の節目を彩るオリジナルラベルの取り組みについて伺いました。
フェリシモにとって初めてのメーカー機能を担うf wineryでは、すべてが新たな挑戦でした。その一方で、社屋にワイナリーという「場」ができたことにより、これまでになかった人との出会いや活動も生まれています。
後編では、醸造区で行われているワインづくりの工程やイベントなどを通して、f wineryがどのようにまちや人をつないでいるのかを探ります。


コメント