2023.03.31

レトロ

文豪が紡いだ言葉をめしあがれ。日本近現代文学作品イメージティー

心にじわりと沁みいる作品を、誰もが味わえる形に具体化してみたい。そんな夢を見て作り上げた、日本近現代文学作品モチーフのイメージティーをご紹介します。

みなさまは『銀河鉄道の夜』などで知られる宮沢賢治によって書かれた、この文章をご存じでしょうか?

けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾いくきれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。
「注文の多い料理店 序文」より

これは『注文の多い料理店』の序文に登場する一節です。

物語のかけらが、本当の食べ物になる。
作家が書いた物語が、読んだ人を構築する一部になる。


本と言えば読んだ人に大きな影響を与えることができる、いわゆる「人生を変えるアイテム」の筆頭。もしかしたら賢治は、自分が紡ぎ出す物語が誰かの人生のきっかけになることを夢見ていたのかも……?



『注文の多い料理店』の序文を読んで、そんな風に空想を膨らませたプランナー。実際に私も、様々な作家による言葉をまるで食べ物のように摂取し、影響を受けて育ったので、その感覚が非常によく理解できるのです。
とはいえ、これは目に見えない大変個人的・感覚的なもの……。

作家が紡いだ言葉が、まさしく食べ物が如ごとく体を構築する感覚を、もっとダイレクトに感じることが出来る「すきとおったほんとうのたべもの」が本当にあればいいのに……。

そんなことを夢見たプランナーが作り上げたのが、各作品に登場する印象的なモチーフや、それぞれを象徴する色から連想したお茶のシリーズ「文学作品イメージティー」。
2020年の冬には、芥川龍之介・夏目漱石・坂口安吾・宮沢賢治ら4名の作家、2022年の春には、中島敦・江戸川乱歩・室生犀星(むろおさいせい)・高村光太郎(こうたろう)ら4名の作家の著作をモチーフに、作品世界を実際に体に取り入れることができるお茶のシリーズを発売いたしました。
第1弾「文学作品イメージティー」はこちらから
第2弾「文学作品イメージティー」はこちらから

でもこの世には、先人たちが書き残した素晴らしい書籍が、まだ数えきれないほど多くある。
ひとりの本好きとして、もっともっと「すきとおったほんとうのたべもの」を形にしてみたい……!

熱い想いは止められず!
丸一年の時間をかけて、ラインナップを新たにもう一度、明治から昭和にかけて発表された4つの「文学作品のイメージティー」を作ってみました!

パッケージデザイン・文字はすべて、色とりどりの万年筆インクで描かれています!

YOU+MORE!×ミュージアム部
日本近現代文学の世界を味わう 文学作品イメージティーの会
月1セット ¥1,800(+10% ¥1,980)
※ブログ内の写真はすべて調理例です。
※1セットだけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。


今回のイメージティー及び作品のラインナップの紹介をいたします。



〈太宰治著『葉桜と魔笛』× 低く幽(かす)かな口笛を隠した葉桜の紅茶〉
僕たち、さびしく無力なのだから、他になんにもできないのだから、せめて言葉だけでも、誠実こめてお贈りするのが、まことの、謙譲の美しい生きかたである、と僕はいまでは信じています。
「葉桜と魔笛」より


『葉桜と魔笛』のあらすじ:「桜が散って、このように葉桜のころになれば、私は、きっと思い出します。」。三十五年前の忘れられない思い出を物語る老夫人。彼女にはかつて、葉桜の時節に病で亡くした妹がいた。美しくも哀しい姉妹の愛情と、彼女たちを見守る“神さま”を感じる物語。

太宰治著『葉桜と魔笛』に綴られた「今も思い出すお庭の葉桜」をモチーフにした、桜の花と葉が香る紅茶。乾燥させた桜の花や葉を混ぜ込んでいます。



表紙側に描かれているのは、迫る夕闇の中に浮かびあがる葉桜。約束の時刻・六時を指す時計は、まるで神さまを仰ぎ見たかの如く、後光が差すように見えます。



裏表紙側には、若かりし頃の老夫人の葛藤を感じさせるモチーフを。手紙の横には、タンポポの花一輪をそっと添えました。

そのとき、ああ、聞えるのです。低く幽(かす)かに、でも、たしかに、軍艦マアチの口笛でございます。妹も、耳をすましました。ああ、時計を見ると六時なのです。私たち、言い知れぬ恐怖に、強く強く抱き合ったまま、身じろぎもせず、そのお庭の葉桜の奥から聞えて来る不思議なマアチに耳をすまして居りました。
「葉桜と魔笛」より



《物語をもっと楽しむために…》
塩漬けの桜の花や葉を静かに浮かべれば、柔らかい桜の香りがさらに引き立ちます。かぐわしい匂いに包まれたら、ずっと心の底にある大切な思い出をぽつりぽつりと誰かに伝えたくなるかも。



〈八木重吉(やぎじゅうきち)著『貧しき信徒』× 耐えかねるほど美しい秋のお茶〉
神様 あなたに会いたくなった
「貧しき信徒」より



『貧しき信徒』について:作者の八木重吉は敬虔(けいけん)なキリスト教徒で、信仰とともに生きる日々を短く詠(うた)った夭折(ようせつ)の詩人。家族と過ごす、何気なくも美しい日々を、作品の題材にすることも多かった。『貧しき信徒』は病床で編纂(へんさん)し、彼の死後に発表された詩集。

八木重吉著の詩集『貧しき信徒』に綴(つづ)られた一編・素朴な琴よりイメージした、「美しい秋の光」をモチーフにした、薄い黄色のフルーツハーブティー。秋が旬の果物・ドライアップル入りです。



表紙デザインは、八木重吉が好きだったという季節・秋と、彼が熱心に信仰した教義にまつわるモチーフで構成しました。外国の聖書デザインにインスピレーションを受け作り上げた意匠は、柔らかい光を感じさせる色合いにまとめています。

裏表紙側には、歌人が過ごしたかけがえのない日々の情景をデザインに落とし込みました。「太陽と桃の花」が描かれた油絵、そして近くに添えた一輪の「月見草」は、彼が愛した家族をイメージしています。

この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう
「貧しき信徒」より



《作品をもっと楽しむために…》
秋の綺麗な空に浮かぶ雲を彷彿とさせる白い綿あめを、冷やしたお茶を入れたカップのふちにかぶせるように乗せて。神さまがおいでなさる天をほうふつとさせる、特別なアレンジティーの完成です。
綿あめをお茶に溶かしたら、神さまのまなざしを思わせる優しい甘みが加わります。



〈森鷗外(おうがい)著『舞姫』× エリスが夢見た瞳子(ひとみ)の色のお茶〉
嗚呼、相沢謙吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我脳裡(なうり)に一点の彼を憎むこゝろ今日までも残れりけり。
「舞姫」より


『舞姫』のあらすじ:明治時代、日本の官僚で、ドイツ・ベルリンに留学した太田豊太郎。彼はある日の夕方、寺院の門の前でひとり泣く踊り子の少女・エリスと出会い、頻繁(ひんぱん)に顔を合わせるようになる。しかし、身分が低いエリスとの関係は、ほかの日本人からは認められるものではなかった……。

森鷗外著『舞姫』に綴られた、「エリスが思い描いた豊太郎の瞳の色」をモチーフにした、ほのかに渋みがある黒みがかった色のブレンドティーです。



表紙側には、日本への帰国を決めた豊太郎が見上げた「エリスが待つ四階の屋根裏部屋」をデザイン。雪が降りしきる暗い夜、豊太郎の帰りを待つ部屋の明かりが煌々(こうこう)と灯(とも)されています。



まだ見ぬお腹の子どもとの出会いに心を躍らせるエリスが、机にうずたかく積み上げた白い木綿(もめん)やレースを、裏表紙に描きました。豊太郎の心を一生懸命繋ぎとめようとするエリスに思いをはせ、彼女が針仕事に使う糸の色を、愛情を想起させる赤色に。

わが心の楽しさを思ひ玉へ。産れん子は君に似て黒き瞳子(ひとみ)をや持ちたらん。この瞳子。嗚呼、夢にのみ見しは君が黒き瞳子なり。
「舞姫」より



《物語をもっと楽しむために…》
果物やスパイスで風味付けした、あたたかい赤ワインと合わせて。最後にはちみつを加えたら、『舞姫』の舞台・ドイツ発祥のグリューワイン風に。足が凍えてしまいそうな、雪が降りしきる夜に飲みたくなるアレンジです。



〈夢野久作(きゅうさく)著『瓶詰(びんづめ)地獄』× 天国のような島に実る果物の紅茶〉
オ父サマ。オ母サマ。ボクタチ兄ダイハ、ナカヨク、タッシャニ、コノシマニ、クラシテイマス。ハヤク、タスケニ、キテクダサイ。
「瓶詰地獄」より


『瓶詰地獄』のあらすじ:とある島の村役場から海洋研究所へ、一通の手紙と荷物が届けられた。荷物は、赤い封蝋が付いたままの3本のビール瓶で、それぞれに雑記帳の破片のようなものが入っている。それらに記されていたのは、無人島にふたりきりで漂着した不幸な兄妹の驚くべき告白だった。

夢野久作著『瓶詰地獄』に綴られた、「兄妹が幸福に暮らす島に実る果物」をモチーフにした、バナナを思わせる甘い香りが漂う紅茶です。


表紙側に描いているのは、美しく豊かな自然にあふれる島の情景。兄妹が流れ着いたのは、香り高い植物や、赤や紫の大きな花、羽を休めるキュウカンチョウなどの姿が一年中見られる、色彩にあふれた天国のような離れ島でした。



裏表紙側には、兄妹が所持する数少ない持ち物をデザイン。ふたりがずっと大切にしていた聖書は、まるで何かを暗示するように傾き、その下には島の崖下(がけした)にひそむフカが静かに旋回しています。

 
ああ神様…………私たち二人は、こんな苛責(くるしみ)に会いながら、病気一つせずに、日に増(ま)し丸々と肥って、康強(すこやか)に、美しく長(そだ)って行くのです、この島の清らかな風と、水と、豊穣(ゆたか)な食物(かて)と、美しい、楽しい、花と鳥とに護られて…………。
「瓶詰地獄」より



《物語をもっと楽しむために…》
濃く入れたお茶に砂糖を加えて、甘いティーシロップに。 冷やしたティーシロップにフルーツを入れ、 ゆっくり炭酸水を加えたらグラデーションが綺麗なティーパンチの完成です。兄妹が暮らした天国のような島に思いを馳(は)せて。



イメージティーを納めた本型パッケージは文庫本と同じサイズ!
本好きのこころをくすぐります……!


1箱に17個、ティーバッグが入っています。



お茶を飲みきったら、パッケージに小物を収納して楽しめます。

※箱に直接食品を入れるのはおやめください。



商品に同封されている情報カードの一部にパッケージデザインの一部をプリントしており、切り取ることで栞(しおり)としてお使いいただけます。





ゆったりと読書を楽しむ、癒しのひととき。
作品世界のイメージティーをおともに、「物語が自分を構成する一部に変わる感覚」を味わってみませんか?



YOU+MORE!×ミュージアム部
日本近現代文学の世界を味わう 文学作品イメージティーの会
月1セット ¥1,800(+10% ¥1,980)
※ブログ内の写真はすべて調理例です。
※1セットだけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。




~もっと作家・作品に触れたい方へおすすめ~
実際にプランナーが訪れた、 作家ゆかりのミュージアムその他の紹介コーナー

【八木重吉関係】
・八木重吉詩碑「幼い日」(兵庫・夙川)
地元の子たちが楽しそうに遊ぶ、公園敷地内にある詩碑。健やかに育つ子どもたちを見守るように建っていました。





八木重吉詩碑「幼い日」
〒662-0977 兵庫県西宮市宮西町14他
夙川河川敷緑地(夙川公園)敷地内


【森鷗外関係】
・文京区立森鷗外記念館(東京・千駄木)
森鷗外の生涯をじっくり学ぶことができる記念館。鷗外が受け取った手紙を見ることが出来るタッチスクリーンがあり、彼の交友関係の広さに驚かされました。

入り口で鷗外がお出迎え……!



残念ながら時間がなく立ち寄れなかったのですが、併設のカフェでは鷗外ゆかりのドイツ料理も楽しめるようです!(いつか食べてみたいですね!)



文京区立森鷗外記念館
〒113-0022 東京都文京区千駄木1-23-4
開館 10:00〜18:00(最終入館は17:30)
休館日 毎月第4火曜日(祝日の場合は開館、翌日休館/第4月曜日、第4水曜日が休館の場合あり)、年末年始(12月29日~1月3日)、及び展示替期間、燻蒸期間等
※ミュージアムの展示内容は訪問期間によって異なる可能性があります。
※最新の情報は公式HPでご確認ください。



・森鷗外生誕の地(島根・津和野)
鷗外が生まれた町・津和野を散策。島根県石見(いわみ)地方原産の赤い瓦が各戸の屋根を覆っている様子は、見事の一言に尽きます。レトロな町並みをじっくり楽しみました◎




津和野-新山口間を走るSLやまぐちに乗車しました^^



【太宰治関係】
・林檎酒「RASHO」「津輕」(青森・五所川原)
「太宰が飲んだ? 幻のリンゴ酒 再現プロジェクト」で作られたお酒をゲットしました。太宰の著書『津軽』に登場する林檎酒が、その作品名を受け継ぎ現代に登場!
ちなみに「RASHO」の方は太宰治の食の好みを元に開発されたお酒らしく、彼が心酔した作家・芥川龍之介の著作『羅生門(らしょうもん)』から名付けられたのだとか……。



記事内の作中文章引用元:
①太宰治(1939)「葉桜と魔笛」青空文庫より
②八木重吉(1927)「貧しき信徒」青空文庫より
③森鷗外(1890)「舞姫」青空文庫より
④夢野久作(1928)「瓶詰地獄」青空文庫より
⑤宮沢賢治(1924)「注文の多い料理店 序」青空文庫より


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