フェリシモCompany

2021年2月度 神戸学校特別編

「22for22」~しあわせな22世紀をデザインするために~ 〈GOOD GOOD 合同会社 創業者/CEO〉

野々宮秀樹さん

開催日
15:00 - 16:00(開場)
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Profile

野々宮秀樹(ののみや ひでき)さん〈GOOD GOOD 合同会社 創業者/CEO〉
元配当受益権組成&流動化の専門家で、現在は畜産とお肉の価値流動化の専門家。 牧場経営とお肉の事業を開始。金融資本主義の世界に、文化資本主義のエッセンスを。GOODGOOD合同会社とは、事業開発&事業配当受益権流動化を専門にしていた野々宮が、資本の在り方の一部を、金融資本から文化資本へ変換してするために始めた事業会社。長期保有株主らと共に、物事を”Slow”に捉え、”最先端テクノロジー”を駆使して、”SocialGood”に取り組み直すことでイノベーションの余地が大きく生まれる事業領域に取り組んでいる。まずは、大好きなお肉の世界から。 -GOODGOODMEAT

※プロフィールは、ご講演当時のものです。

講演録 Performance record

野々宮さん:

はじめまして、GOOD GOODの野々宮と申します。フェリシモのみなさま、本日はお招きくださいましてありがとうございます。今日、フェリシモから命題をふたつ頂戴しています。あなたが描く22世紀はどういったものをイメージされていますかというお話と、今あなたがそれに向けて取り組んでいることはどういうことですか、というそのふたつにお答えする形で進めてまいります。

まず僕は何者なのかという部分と、今現在何をしているのかという自己紹介を簡単にさせてください。野々宮秀樹といいます。1978年生まれの42歳です。僕は大学生のときから起業をしていまして、かれこれ23年間経営をしています。それプラス、元々小さいころからお肉が大好きで、お肉のことはどれだけでも考えられるという人生を送っています。

簡単に、僕の今までの年代別の経歴です。20代は金融業です。学生起業をしましてそこから30代、その金融の知識を使っていろいろな企業の経営に関わっていったり、ビジネス誌のアドバイザーとかそういうこともしたりしていました。35歳ぐらいですかね、何となく金融そのものの仕組みの価値が以前に比べて相対的に下がってきているなという感覚に陥りまして、金融の世界から徐々にフェードアウトをしていって、38歳のときに九州、熊本県の阿蘇で牧場を取得しました。今はその牧場の経営、畜産業とその生産したお肉をコンシューマーの方にお売りする、もしくはレストランやホテルに卸す、そのようなことを中心に行なっています。40代に入りまして、今ちょっとやりかけているファンドもあるのですけれど、実際の経営としては99.9%、GOOD GOODという事業に専念している状況です。

実はフェリシモとはただならぬご縁というかご恩が大きくふたつあります。今、僕たちが九州で展開している牧場をさらにアップデートしたものを、北海道につくろうとしています。なかなか僕たちが希望する条件の用地が見つかりませんでした。手当たりしだいに各金融機関や、自分のコネクションを使っていろいろな方に聞いてみたのですがなかなか見つからない。そんなときに、何とフェリシモから厚真町にこんな土地があるよという話を金融機関越しにいただきまして、そこで今僕たちの北海道の拠点を構築中です。会社として達成するべきかなり大きな取り組み、課題に対して場所のご紹介をいただいたというのがひとつです。

もうひとつは、僕たちは畜産・農業をやっているのですけれども、日本国内で農業をされる方では一般的である農協からの借り入れをせずに、その代わりに経営の自由度を担保して自己資本で農業をやっています。ただ畜産ってトラクター1台3,000万円とか、その土地を耕すためだけの機械1,000万円、牧草を刈るだけの機械1,000万円、刈った牧草を乾燥させるだけの機械が1,000万円、そういう形でとんでもなくお金が要るのです。なかなか個人では前に進めない事業であるという中で、僕の手持ちのお金だけでは到底足りないので市場からお金を集めたいなと考えていました。そのときに土地の情報をいただいたご縁もありまして、矢崎さん(フェリシモ代表取締役社長)と三浦さんにご相談いたしました。のちほどご説明しますが、こういう事業をしようと思っていますという中で、いかに資金の出し手がリスクが高くてむずかしいか、資金調達がむずかしいかという話をしまし

たところ快くリード出資に応じてくださいました。

僕たちの事業が事業として始まっていく最初のきっかけをフェリシモ、正確にはフェリシモの100%子会社であるCVC(Corporate Venture Capital)の株式会社hope for名義でご出資いただきました。実際、上場企業からベンチャーが出資を受けるというのは実はすごく大きな社会的信用に直結していまして、このリード出資をしていただいたことがきっかけになって、そのあとロート製薬や他の投資家がそれに続いてくださった。僕からするとお礼を言っても言いきれないぐらいありがたい存在であるということです。ですので、今日はその命題ふたつにお答えしたいのですけれども、それと同時に、フェリシモのみなさま、スタッフのみなさまもいらっしゃると思いますので、今取り組んでいる状況を含めてIR(Investor Relations)的に事業報告という形でさせていただきたいなと思っています。

金融業界での経験

野々宮さん:

先ほどのお話で僕の社会人以降の年表ですね。すごくシンプルに書いてみたのですけれども、下の数字が僕の年齢です。いま42歳で、大体親のスネをかじりながら10代を過ごしたので18歳ぐらいから何となく大人になったかなというところで、18歳から年表を始めています。上に書いてあることが僕がやってきたことですね。下が世の中で起きた、今日お話しする部分に関連してくるような事例です。

19歳のときには先ほど話した起業をしていますが、その背景ですね。僕は19歳のときが全盛期です。全盛期の終わり、世紀末でしたねえ。それぐらいのときに金融ビッグバンといわれる、金融の仕組みの緩和が全世界的に起きていました。日本もイギリス、アメリカから少し遅れ、1996~2001年に国内で金融ビッグバンが起きていました。金融ビッグバンというのは、金融に関わることは一般の企業はなかなかできない、触れない、アレンジもしようがないという業法をかなり緩和して、民間の活力をどんどん使って金融を活性化していきましょうという目的で行われていることです。

そのあと、21歳ぐらいのときです。元々お肉屋さんが好きでした。19歳で起業して手元にちょっとだけお金が回ってくるようになりまして、海外旅行にすごく行きやすくなりました。そのお金で世界中のお肉屋さん、精肉店、牧場、レストランを回りに回りまくりました。これも僕のライフワークで、21歳から42歳の今までずっと続けています。この1年ぐらいは行けていないですけれども、世界中の名だたる畜産現場、お肉の販売現場を回っているという自負があります。そのあと32歳のときに、リーマンショックという、金融の世界では大きなインパクトが起きました。そこから少しずつ自分の働き方を変えていって金融業から畜産業に推移していくのですけれど、38歳のときに阿蘇の牧場を取得して、39歳のときにGOOD GOODという会社をスタートさせました。

金融っていろいろな仕事があるのですけれども、例えばお金が必要な人にお金を貸してあげたり、保険を販売したりとかいろいろな金融業があるのですが、僕は「事業配当受益権の流動化」という金融の仕事をしていました。例えば一から事業を起こす、もしくは既にある事業をM&Aで買収します。その事業の中で、利益を受け取る権利とその事業を経営する権利に分解します。この経営する権利だけは残しておきながら、収益を受け取る権利だけをさらに細分化していきます。

経営する権利自体はお渡ししません。優先的に収益、お金を受け取る権利だけをお渡しします。それを細分化したあとに、なおかつ、証券市場、こういった価値や権利を自由に売買できるテーブルの上に乗せまして、それを興味がある人が買っていく、もしくは一度買ったものはまた違う人に売ったりできるということが自由にできるような、こういう仕組みを作っていきました。

その当時は金融ビッグバンまっただ中でした。日本ではこういう仕組みがまだ一般的ではなくて、僕はとにかくこの権利の流動化という作業に取りつかれて、大学の図書館のパソコンを占有していました。年代的にご存じの方もいらっしゃるかもしれません。その当時、インターネットはダイヤルアップという仕組みで、アメリカの情報を取得にするには国際電話をかけるぐらいのお金が要ったのです。大学の研究室や図書館にずっと入り浸って、常にオンラインの状態を保っていました。多分これで学費はだいぶ取り戻したと思いますね。

ただ日本は金融ビッグバン中だったのでこういったノウハウが日本国内に全くなくて、僕は死に物狂いで、主にはアメリカ、次いではイギリスの先行事例を勉強して、その当時の日本国内の金融業法に当てはめて仕組みを作っていくという作業を19、20、21、22歳と必死でやっていました。そのときに、意図せずに配当受益権の流動化という世界では、日本国内で第一人者といわれるようになりました。ただ僕がそのときそうなりたくて勉強したわけではなく、とにかく自分の手持ちの価値をどんどん流動化させたい、もっともっといろいろな人を巻き込みたい、どうやったらいろいろな人を巻き込めるのかな、そういう理由で進めていました。

そのときの成功体験なのですけれど、大学2年生、3年生の僕を外資の銀行や日本国内の証券会社が呼んでくれてアドバイザリー契約を結んでくれたのですよね。各金融機関の中にもその当時の僕ほど流動化について詳しい人がいなくて、ずっとそのアドバイザー業務をしている。同年代の友だちが「次、何々証券を新卒で受けようと思ってんねん、エントリーシート書いてんねんけど」みたいなことを傍目にしながら、僕はそこの役員室に行ってレクチャーをするというふうな生活をしていました。「なんか知らないけど一生懸命ひとつに取り込んでやり続けると、なんか面白いこと起きるやん」というのは何となく肌で感じ始めていました。

日本では珍しい「牛を放牧する」ということ

野々宮さん:

今、僕がしている事業、GOOD GOODという会社では、先ほど申し上げたように畜産と食肉事業をしています。これが最初に取得した九州、阿蘇の自社牧場です。この黄緑色に見えるところがすべて自社の牧場で、奥に見えているのが阿蘇山です。広さは大体500ヘクタールぐらい。甲子園のグラウンドでいうと350個分ぐらいの広さになると思います。そこで牛を放牧しています。

実はこの写真、世界的にはかなり珍しい写真です。この飼われている牛たち、これは和牛なのです。和牛というのはみなさん知っていらっしゃるようにA5のお肉が上等なお肉といわれています。A5というのは恐らくは霜降っているお肉だと思うのです。ですから通常の和牛農家さん、和牛生産者さんはA5のお肉作りを目指します。だけれどもA5のお肉を作るには牛を霜降らせないといけない。霜降りというのは人間でいうとメタボです。あの状態を作り出して初めて芸術的な霜降り和牛ができあがる。彼らはこういう広々したところで自然に歩いたり走ったりすることができるので、これはメタボになりにくい状況なのですね。和牛は普通、メタボにしたほうが価値が上がるのに、僕たちはあえてメタボにせずに育てています。これがかなり珍しい状況であり、特に日本国内ではほぼ例がない状況だと思っています。

通常の和牛の育て方は日本国内に関していうと、ほぼ銘柄牛や神戸和牛もそうですが、主にアメリカで穀物を購入して、それをタンカーに乗せて原油をたいて日本に持ってきたものを餌にしてお肉を作ります。ですから実はお肉の価格というのは、穀物の相場と原油の相場に大きな影響を受けています。和牛の相場はそういう状況にあります。けれども僕たちの牧場は見てもらったとおりで、奥の山に雨が降ってこれが伏流水となり、牛たちは牧場内あちこちから湧き出た水を飲んで、そこのお水で育った牧草を自然に食べて、牛が排せつしたウンチがまたその牧草の堆肥になって牧草が育つという形で、完全に循環するような仕組みで和牛を作っています。ちなみにこの牧場の500メートルぐらい下に人間用の遊水地があるのですけれども、そこは日本名水百選に選ばれています。ですから完全に畜産のインパクトというのはこの敷地内で吸収されて循環しているという状況です。二酸化炭素に関しても、僕たちは牛1頭につき1ヘクタールの面積を使っています。1ヘクタールの面積を使うとそこに生えている牧草が、牛が出す二酸化炭素を十分吸収し切るということで、温室効果ガスに対しても僕たちの飼い方がかなり有効であるというのは、農林水産省とJRA(日本中央競馬会)とでエビデンスが取られています。

豚に関しても、日本国内の豚は99.999パーセント、ほとんどがストール飼いといって、畜舎に入れられて飼われています。これは生産効率はすごくよいのです。完全に管理がしやすい状況であるし、なおかつその各個体、豚さんの健康状態を含めてたくさん数は揃っているので、高効率でチェックができるということで日本国内の豚の飼育においてはほぼこのストール飼いが採用されています。これは戦後の食料自給を支えるために主にアメリカの指導のもとに進んできた畜産の方法です。

ただ問題がありまして、ひとつはストール飼い。畜舎で閉じ込めて飼うので効率はいいのですけれど、一生その畜舎から出られない状況になります。ですから味がどうこうではなくて、動物福祉の問題から畜産としては問題があるのではないかということを考える方が世界中で増えてきました。この考え方をある程度主流派としてできたのがGAP(Good Agricultural Practices 農業生産工程管理)という国際流通基準です。このGAPでは動物福祉についてこれぐらいは留意してくださいね、そうじゃないとGAPの基準はクリアしませんよ、即ち世界流通させられませんよという仕組みになっています。日本のほとんどの養豚畜産に関してはGAPの基準をクリアできない状況にあります。2021年は東京オリンピックの開催がどうなるかわからないですけれども、かつてはオリンピックの選手村の食材に日本の畜産物は実は採用されていませんでした。特に豚に関してはゼロでした。なぜかというとGAPの基準をクリアしていないとIOCとして食品認定ができませんということで、それだけ動物福祉の基準を満たしている畜産業者が日本国内には少ないのです。もっと言い換えると、日本の人口はこれまではすごく増加傾向にあったので、日本国内需要だけで十分商売ができていました。こういうことを前提にした畜産業が日本国内で広がっていたという状況にあります。ちなみに、これは十勝にあるうちの豚牧場です。ここの牧場はオリンピックの食材に指定されています。日本国内で2社だけ指定されていまして、そのうちの1社が僕たちです。

GOOD GOODは兵庫県の西宮市苦楽園というところに自社のお店を持っていまして、作ったお肉、牛や豚をこちらで提供する精肉販売とイートインのレストランです。矢崎さんもよくいらしてくださっています。ありがとうございます。僕たちがやっているお肉というのは日本ではまだまだ一般的ではありません。ただリテラシーの高い方々もしくは感度の高い方は、海外の事情であったり、もしくは医学知識を持っていたりしていて、健康的なお肉、サスティナブルなお肉を食べたいという方々に支持されて、2021年で4年目に入っているところです。このほかに日本国内外のレストランにお肉をお出ししているという状況です。

これまでとこれからの資本主義

野々宮さん:

さて今日の本題です。僕は今お話ししたようなことに取り組んでいるのですけれども、僕は金融の専門家です。19歳から金融の世界にどっぷりと漬かっていましたので、他のことはあまり知りませんが金融に関してはかなり詳しいです。もっというとエクイティ金融、金融部分でも特に資本の部分と権利の部分に関してはべらぼうに詳しい自信があります。ただ保険とか融資に関しては全くわかりません。ですから、僕の得意な分野だけについてお話しさせてください。

いろいろな意見はあるのですけれども、今世界はほぼ資本主義という仕組みを取っています。これは疑いようのない事実です。お隣の中国でも表向き資本主義ではないよといいながらも、実体としては資本主義という仕組みを採用しています。ですから世界のことを考えて、これからの22世紀を考えていくとベースにあるルールブックは無視することができないだろうということで、資本主義の部分に着目してみましょう。

資本主義の「資本」って意外とあまり考えないのですけれど、資本ってなんじゃらほい。主義といっているぐらいなのですごく大事なことなのですけれども、じゃあ資本って何なんだという話なのです。古典経済学、マルクス、いろいろ諸説あるので一概ではないのですけれども、あちこちの人に文句を言われない程度にまとめるとこんな感じになるかなと思います。資本というのは価値創造のための原資である。価値をつくるために必要になる元のもの、これが資本であるというふうな考え方ですね。資本の中には主には金融資本、お金であったりとか株券であったりとかそういったものが資本となって価値をつくり出すこともあります。あとは物的資本。会社の本社ビルもしくはパソコンとか製造機械とか、車とかそういったものが資本になって価値をつくり出している場合もあります。もうひとつは人的資本ですね。価値をつくり出すのに大事なもの、人そのものです。人がどういう行動を取るのか、何を考えるのか、これによって価値が創造される。ですので、人も価値創造の大きな資本だというふうに考えます。これに対して歴史性といって前提の社会が変わっていく、だから資本主義そのものもどんどん変わっていくでしょう、何も固まったものではないでしょう、生き物でしょうというのがマルクスの考え方です。しかし基本的に言っていることは同じです。

資本主義の中で、先ほどお話しした金融資本、物的資本、人的資本、各歴史ごとに、この資本の重要性というのは変わってきます。この辺りはマルクスが言っているのですけれども、現状今の世界は、主に金融資本主義といってしまって差し支えないと思います。なぜ金融資本主義といってしまって差し支えないのか。歴史の勉強で聞いたことがあると思うのですけれども、かつては世界、日本もそうですが、中世の時代は荘園制というものが存在しました。要は身分制ですね。貴族やある特権階級が荘園を形成して、そこに対してその身分でもって、権利でもって労働力を集めてものを生産する、価値を生むという時代がありました。次にイギリスで起こった産業革命です。今までは「俺は偉いんだからお前はタダで働け」で価値をつくっていたのですけれども、それじゃあ効率が悪いということで、じゃあ個人がひとりで機を織っていくよりも紡績機、機織り機を導入すれば生産性が上がるでしょうと、この機械の発明が産業革命のきっかけになっています。イギリスなので石炭とか理由はいっぱいあるのですけれども、主には機械の大きな発展が産業革命のきっかけになっています。

さて、前まで「俺は偉いんだからお前は働けよ」が通用した中世の時代から、機械が必要になった。「俺は偉いんだから機械は働けよ」…… しかし、機械はひとりでには動いてくれません。関係ありませんよね。「俺は偉いんだから機械を作れ」…… でも作れる人って限られていますよね。作れる人は技術者なので、その人たちは対価を求めます。そこで初めて貨幣経済というものが発展していくということなのです。機械を買うには身分じゃなくてお金が要る、そういう時代に入っていきました。お金が要るので、お金の価値が昔に比べてかなり上がってくる。これが産業革命で起きた大きな変化です。

次にそのお金がものを呼び込んで、その「もの」が価値のある生産物を生産していく、生産性が上がっていく。機械に労働力を任せていった時代がありました。お金から機械に変えて、機械で価値創造する。これが産業革命以降の資本主義の仕組みです。ただそのあとで、頭のいい人が考えるのですね。「あれ?お金で機械を買って価値を生むんじゃなくて、お金で価値をつくり出してお金を生めばよくね?機械買わんでもいいやん」というのが金融資本主義の考え方です。価値創造を究極まで効率化したものが金融資本主義と呼ばれていて、おおよそこの30年ぐらいはこの金融資本主義というものがどんどん洗練されていって、とんでもなく頭のいい人たちがその仕組みを開発していった。さらにアップデートしていった、というのが最近までの流れです。

さてここで、今から10年ぐらい前に僕が猛烈な違和感を覚えたことがいくつかありました。ひとつは、僕がクオンタムリープという会社の社長をしていたときのことです。クオンタムリープは元ソニーの会長の出井さんがソニーを辞めてつくった会社です。僕もそこの社長をしていたので、出井さんとは毎日のようにしゃべっていたのですけれども、ある日突然、どことは言いませんけれどとあるゲーム会社の時価総額、会社の価値がソニーグループ全社の時価総額を抜いちゃった日があるのです。「やってらんねぇよなこんなこと、何でなんだよ」「いやいや、持っているものも全然違うし人も資源も違うし、何でこういうことになるんだよ」みたいな話になったのですね。あれ?これってもしかして生産する価値をつくるために必要な「もの」の価値が下がってきているんじゃないかな、というのがひとつですね。

もうひとつは、今でこそみんなおおっぴらにやっていますけれど、その当時各国は隠れながら中央銀行でたくさんお金を刷っていました。お金がないのならお金を刷ればいいという考え方ですね。「ちょっとぐらい刷ってもわかんねえよ」、すごく乱暴な言い方ですけれども、そういう形で15年ぐらい前から実は各国隠れて自分の国のお金を刷りまくったのですね。今でこそ量的緩和とか黒田バズーカとかいろいろな表現があって、お金を刷っていることはおおっぴらにしていますが、その当時はみんな黙っていました。「刷ってない、刷ってない」と言いながらずっと刷っていました。僕は金融業界にいたので、お金を刷っている実態はもちろん知っていました。お金がたくさん市中に出回るとお金の価値が下がる、当然です。金は希少だから、ダイアモンドは希少だから価値がある。レアアース、レアメタルもそうです。レアなので価値があるのですけれども、これがどこにでもあれば価値は下がります。

金融資本主義でやってきて高度にアップデートしてきたその仕組みが、その元になる金融、お金の価値そのものが目減りしていっている。それと同時に、先ほどのお話のように、ソニーのようなたくさんの設備投資をして設備を持っている会社が、持っているハード、機械資本、物的資本の量は全然違うのに、ソフトウェア会社に会社の価値として負けるのですね。そこで、もしかするとあそこにある人的資本の差によって、価値が逆転しているんじゃないかという考えに至りました。なのでこれからは金融資本主義じゃなくて、もしかして人的資本主義に移っていくんじゃないかな。その当時、資本主義が終わるみたいな話も市中にいっぱい出回ったのですけれど、資本主義というのはそもそも世界的に蔓延している仕組みなので今日明日に消えることはないです。もしかしたら50年後100年後、なくなっている可能性はもちろんありますけれども、性急に消えるという仕組みではそもそもないとした場合に、その価値のやり取りをする原資が金融から人にシフトしていくんじゃないか。もっと言うと金融だけじゃなくなるんじゃないか、人的資本の価値が相対的に上がっていくんじゃないか、みたいなことを感じました。

その人的資本の中でさらにフォーカスしたのが文化力資本です。文化資本主義は実は経済学にすでにある言葉です。お金の価値だけじゃなくて文化力そのものが価値創造に必要になってくるんじゃないかというような考え方です。経済学上の文化資本主義というのは結構狭い意味合いを持っていまして、教養とかマナーとか知識とか、そういった部分を狭義に表現しています。例えばテーブルマナーを知っている人とテーブルマナーを知らない人。これは文化力の差なのですけれど、テーブルマナーを知っている人だけが着けるテーブルというのが存在するのですよね。テーブルマナーを知らないと呼ばれないテーブルが実際にある。そのテーブルマナーを知っている人だけがテーブルに着けるその場所で、実は結構重要なことが決まっていったりとか、すごく面白いことが発案されたりとか、そういうこともたくさんあります。ですから文化力というのは価値創造にすごく重要なのではないかと感じるようになっていきました。

文化でもって価値創造をしていくという部分なのですけれども、文化をつくるというのは並大抵のことではありません。寝ても覚めても何かを考え続けないといけない、そのことについて考え続けないといけない。じゃないとなかなか文化まで昇華しないとした場合に、これからみなさんがこういった資本主義の価値のやり取りをすることそのものが、一部が文化としたときにみなさんはどういった文化をベースにして価値のやりとりをしていきますかと、そういう時代になってきているのかなと思います。例えば、言ったことを守るという信用文化もひとつかもしれませんし、先ほどの福本理恵さんの講演にあったような鉱石、そこから絵の具を作る、色を抽出するといったことかもしれませんし、オタッキーという表現がありましたけれど、ギークとか、何かに執心する、執着する、そういうことによって文化が形成されていく可能性というのはすごく高いのではないか。実際過去にも文化形成というのはそういう機序で成り立っていると思っています。

ゆっくりと価値を生む

野々宮さん:

僕は22世紀に向けてゆっくり確実に価値を産んだり価値を保存したりして目指すのがブルーオーシャンだと思っています。僕も21世紀を目指して少年時代を生きてきました。でも気づけばおじさんになって21世紀ど真ん中、何かちょっと思っている21世紀と違うのですけれども……。次の世紀は22世紀ですよね。21世紀というのは先ほどの産業革命からの流れがあってとにかく増大・成長・拡大、そういったものがキーワードになってきてそれが金融資本主義と結びついて、性急な価値創造が是とされてきた時代だったと思います。

特にその辺の名残が企業の成長のバロメーターとして、この1年間あなたの業績はどうでしたかというときに昨年対という表現を常にされていて、去年の自分と戦う。もっと言うとクォーター制、四半期前の自分と戦い続けないといけない。もちろん成長角度はどんどん上がるのですけれど、こういうことによって長期的なビジョンでの価値創造というのが徐々にしにくくなっている、それが金融資本主義の最終的な今の終着点かなと思っています。そこには世界中の天才と努力家とが経営・金融に対して心血を注いできた歴史がある。21世紀の間そうだったので、もうほぼ付け入るすきがないぐらい洗練されちゃっています。

さて22世紀はそこをやめてあえてゆっくりと、でも確実に価値を生み出したり、またそもそも価値を生み出さなくてもいい(のではないか)。過去にあった価値をプリザーブする、保存する、そのことが価値であるという部分は全く競合がいなくて実はブルーオーシャンで、価値創造に意外と直結しやすい領域なんじゃないかなと個人的に思っています。GOOD GOODでまさにこれを実際に実行できるのかどうかを実験している状態です。仮説検証の真っ最中なのですよね。ゆっくり価値を生むということ、確実に価値を生むということ、もしくはその価値を保存するという作業そのものが価値創造だと市場が認識してくれるのかどうかという実験をしています。ですから今日お話ししたことに関しては正解でも何でもなく、僕のトライの部分です。これはまだ答えが出ていません。この実験に対して共感して賛同してくださったのがフェリシモであるという認識です。

さて先ほどの文化資本なのですけれども、僕の背景からして文化をつくるというのは、好きなこと、寝ても覚めてもそのことだけを考え続けられることだと熱量が集まるので、文化にまで昇華しやすいとした場合に考えると、僕はお肉だったのですよね。それで食肉文化というものをとことん掘り下げてみよう、もっというと僕は日本人なので和牛食肉文化をとことんまで掘り下げてみようということで、この資本主義社会を生きてみようかなと考えています。

世界の人口増と食肉

野々宮さん:

お肉のことを考える上ですごく大事な要素があります。世界の人口推移です。ちょっとびっくりするような現実なのですけれども、今や80億人に迫る勢いです。これが今の世界人口の伸び方です。人間の歴史からするとつい最近、中世の時代まで地球上には10億人くらいしか人がいなかったのですね。それが、2011年には70億人、予測では2050年には98億人です。でも地球のサイズは変わっていません。そこで何が起きるかというと、食べることが実はすごくむずかしくなってくるのです。日本では人口減少という話になるので少し想像しにくいのですけれども、一転、世界人口をグラフにするとこういう状況になります。土地のサイズは変わらないのに人が増えている、結果として食べることがすごく大変になる。これは当然の原理ですね。

僕は無類のお肉好きなので、お肉が食べられない未来はめちゃくちゃ困るのですよね。お肉が大好きで今ほぼ毎日お肉を食べているのに、そのお肉が食べられなくなるとすごく困ります。でも人口は爆増している、地球のサイズは変わらない。今までよりは絶対食べにくくなると思ったときに、僕も自分でファンドとかも運営していたので、福本理恵さんが関わっておられる東京大学の先端科学技術研究センターもそうですが、ソイ(植物性タンパク質)、あとは人工的に増殖する筋繊維を用いた人造肉、そういったベンチャーにもたくさん投資しました。お肉を食べられなくなると困るので、いくつか選択肢があるのなら全部張っておこうと思ってお肉系の事業にはほぼ投資しました。出資しているのでその特権で一般のみなさんよりも結構早く食べる機会があるのです。

ソイに関しては、結局ソイが健康的でおいしいのだろうけど、味付けをするのにお肉エキスを使うのが一番おいしいというところに行きついたのですよね。そのお肉エキスを人造的に作るということも当然可能なのですけれども、お肉は筋繊維と脂肪から成り立っていますので、このふたつをかなり高いレベルで融合させて人工的に風味をつくることはかなりむずかしいのですね。なので食感はかなりお肉に近いのだけれど、食べた味がやっぱりお肉じゃない。今まで食べてきたお肉の量が半端ないのでそう感じるのですよね。人造肉に関してもいろいろなお肉をたくさん食べました。味はお肉でした。だけれども食感がお肉じゃありませんでした。そのお肉は、シャーレの上でずっと運動し続けていればもしかしたら近づいてくるのかもしれないけれど、その運動をさせるための期間と電力を考えると、普通にお肉を食べたほうがいいよねという状況でした。なので、もちろん今もその選択肢は全く捨てていないのですけれども、僕にとってはまず自分がトライできる一番手近な領域として、今あるお肉の世界をアップデートするということに行き着きました。

世界中そして日本国内の牧場もたくさん回りました。(日本には)何とか牧場という(知名度がある)ところはたくさんあるのですよ。ただ行ってみてまずびっくりしたのは、牧場に行って牧場がない。

「あれ?牧場ですよね」

「ええ牧場ですようち」

「え?どこに牧場ある……」

「あ、うちそういうのやってないので。畜舎しか置いてないのです」と。

要はこうやって放牧するような場所がない。

「え、食べ物は?」

「そんなの農協さんから買ってくるから」

「え、出てくるウンチどうするの?」

「産業廃棄物で出してます」

これが日本の和牛生産の現場だったのですね。これは僕もびっくりしました。主に世界中の牧場を見ていたけれど、日本国内の牧場には全く放牧地がない、草を育てる場所がないということにかなり驚きました。

そういった中で、九州の産山(うぶやま)村という特殊な地域があり、和牛を放牧して大きくさせる、太らせるという技術をその一族だけが受け継いでいる地域であるということを知りました。それで僕はすぐそこの一族の方たちと一緒に共同事業をしましょうということで、このGOOD GOODの阿蘇牧場を作ったのです。ですから一般的にこの知識は広まっていなくて、実はこの一族が一子相伝で受け継いでいる技術なのです。

日本国内に和牛は4種類います。有名な黒毛和種(黒毛和牛)、褐毛和種(あか牛)といわれるものと、日本短角種と無角和種、この4種類です。その中でも褐毛和種(あか牛)といわれる品種を僕たちは森の中で飼っています。この牛は比較的草主体でも体が大きくなるというのが特徴です。

さっきの人口爆増のグラフがありますよね。あれから考えると、人間が食べるものを食べさせて牛を育ててお肉にする、こんなに効率の悪い話はないのです。さっきもちらっと津田さんの講演の中で話がありましたけれど、牛1頭を出荷するまでに(牛が)食べる食べ物の量と飲む水の量、これをそのまま人間が食べて飲んだ方が効率がいいのです、どう考えても。お肉というのは人口爆増期には食べちゃいけないものなのです。なのでお肉は食べられなくなる。食べていると「えっ、世界人類が生きていけなくなるやん。アイツお肉を食べやがって。他の人が食べられない状況の中で、その食べ物を食べさせてお肉にしている。それを食べている、けしからん」ということになっちゃうのです。

100年後の和牛メゾン開業を目指して

野々宮さん:

僕は100年後も1000年後にもお肉が食べたい。お肉が食べられない世界にはしたくないので、森の中で牛を放牧しています。森の下草を食べさせるのです。ここは耕作地になり得ないところです。牧場もしくは日本国内の和牛をつくるために餌にしている小麦やコーンがアメリカで育っている場所というのは、人間が食べる作物・植物を育てられるような土壌で作っています。それを一切やめて、人間用の食べ物が作られない場所、森の中、林の中もしくはトラクターが入れないやや急峻な丘、こういったところを牧草地にして、ここでもってお肉を作るということに今チャレンジしています。この辺りができてくると100年先もお肉が堂々と食べられる可能性が出てくるということです。

お肉の世界というのは日本国内に関してはかなり細分化しています。繁殖する・産ませるだけ、仔牛を育てるだけ、もしくはその仔牛を売る場所だけ、その育った仔牛を買ってきてお肉にするまで太らせるだけ、それを加工するだけとかそこを加工したところ、一次卸、二次卸、三次卸になって飲食店に行ってもしくはスーパーに行って、初めてみなさんの口に入ると。これでも端折っていますけれども、かなりの業種が介在してお肉というものができあがっています。僕らは規模は小さいのですけれども、これを一貫してできる体制を作りました。目的は、これをサイクル化して生産情報をお客さまにリアルタイムにフィードバックし、お客さまの反応を生産現場にリアルタイムにフィードバックすることです。これは一気通貫でやるからこそできる話で、先ほどみたいな分業制ではこういうことは実現しません。

このお肉を今九州のほうで作っているのですけれども、九州に世界中のシェフが来てくれるのですね。グラスフェッド和牛を作っている、牧草和牛を作っている日本の農家がいるということで、みんなおもしろがって見に来てくれるのです。ただ興味がある人はどんどん来てくれるのですけれども、そこまで和牛に興味がない、もしくは本当にグラスフェッド和牛なんて存在するのかと思っているシェフはなかなか九州の阿蘇まで来てくれないです。なぜかというとめちゃくちゃ田舎なので、1週間日本に来る予定の中でそのうち3日か4日間の日程を割かないと、うちの九州の牧場まで見に来てもらえないですよね。ただ、見に来てくださった方はほぼほぼ契約に至る、コンバージョン率のすごく高い牧場なのです。

このような牧場を僕は北海道でつくりたいのです。草資源、森林資源が豊富にある場所を日本国内でと考えると、九州の阿蘇地域か北海道かしかありませんので、北海道の地域で牧場用地を探していました。その牧場もただの牧場ではなくて、メゾン化したいという思いがありました。メゾンというのはフランスのシャンパン地方のシャンパンメゾンをモデルにしていまして、地元の土作りから、ブドウを栽培してぶどうジュースにして一次発酵、二次発酵してシャンパンにして瓶詰めして、シャンパンのある世界観までもその生産地で表現して、大きなバイイングにつなげてもらうというのが彼らの基本的な商売のやり方です。その土地のテロワールを感じてもらって、そこから初めて商品のある世界観につなげて、それを一貫で表現することによってシャンパンが売れ続ける、シャンパン文化が育まれ続けるという仕組みです。僕もそれを和牛でやりたいなと思っています。和牛の牧草作り、土作りから牧草を育てて、その牧草を食べた牛を見てその場でお肉を食べられる滞在型の牧場を作りたいと思ってやっています。

フェリシモのみなさまに北海道のある場所を教えてもらいました。僕がこだわったのはとにかく世界中からのアクセスのよさで、国際空港至近距離じゃないと嫌というのをずっと言い続けていました。北海道ってめちゃくちゃ広いですけれども、空港から至近距離というともうほぼなくて、土地が本当に見つからなかったのです。その中で見つかったのが厚真町にあったゴルフ場の開発跡地なのです。35年前の日本のバブル期に開発をされかけたまま放置された27ホール分、200ヘクタールのゴルフ場跡地です。事業者はもう破綻していなくなっちゃっています。ここを紹介してもらって見に行ったのですけれど、経営破綻してフェアウェイの予定地がそのまま35年間ほったらかしなのに、森に戻れていないのです。なぜかというと、コースを作るために表土、草木が生える層を全部取っ払っちゃっているので粘土層が露出している状態です。それで森にも戻れずに35年間そのままに放置されていました。この200ヘクタールの土地に牧草地を形成するには、上に土を入れなくてはいけない。その土を買ってきて運んでもらって造成をする作業に9億円の見積もりが来ました。

到底うちでは無理だな、ベンチャーなので無理でしょうということをしているときにこの牧場がある地域、厚真町を震源地とした北海道の大地震が発生しました。これで起きたことは厚真町内の山腹崩壊です。山という山が全て崩れてしまって山の表土が流出し、道路だけではなくて奥のほうまで全て山が崩れちゃったという状況になりました。実際に人も亡くなられていますし、自然災害としてはかなり痛ましいことでした。この自然災害の負の遺産と、先ほどの先進国のリゾート開発の負の遺産とを掛け合わせたらもしかしたら牧場ができるんじゃないかということで、この流出した土を先ほどのフェアウェイに運びませんかという提案をしてみたのです。ありがたいことに復興予算がつきまして、このフェアウェイに震災土砂が搬入されるという仕組みができあがりました。これは本当にありがたいお話です。今順次、土が入っていっている状況にあります。そこにはクラブハウスとして残っている建物があり、GOOD GOOD Secret Maison & Farmという名前をつけて、牧場整備とメゾン整備を進めていっています。

今回の命題にもあったのですけれど、まさに僕は100年後のオープンを目指しています。通常、商業施設・生産施設というのは準備をして、オープンをして、グランドオープン、そのグランドオープン時にはほぼ完成しているものです。リゾート施設もそうですしテーマパークも恐らくはそうだと思うのですけれども、そういう仕組みでもって作られているのが一般的ですが、僕はこのテロワールをつくっていくことをしたいのです。

テロワールというのはその地域の生態系そのものをつくっていく必要があるので、一朝一夕にはつくれないのですね。1年や2年ちょっと表面だけ整えただけでは当然テロワールを形成できないということで、100年かけることにしました。このテロワールをつくっていくプロセスそのものを一緒に楽しんでもらえる施設にしたいなと思って、ざっくりとですが、最低限の水道とかそういった設備をするのに今から5年かけます。そこから100年後の2125年にグランドオープンをするということで考えています。これがまさに先ほど申し上げたような、リゾート開発の負の遺産と自然災害の負の遺産とを掛け合わせた新しい和牛メゾンという産業です。日本には和牛をメゾン形態で生産して販売する設備・施設がないので、これが日本国内に初めて誕生します。主に欧米人にとって馴染みのあるシャンパンメゾン、カーブとメゾンのビジネスモデルを踏まえているので海外のバイヤーさんがすごく買いやすい仕組みである。新しい仕組みじゃないのです。日本国内独自のエキゾチックな仕組みでもないのです。欧米人が今まで馴れ親しんだ生産物の買い方の仕組みを和牛に当てはめてやっていこうということです。

それでは、阿蘇の状況をムービーにしているのでこちらをご覧ください。

#ムービー

「阿蘇の土地というのは標高も1,000メートルぐらいあって非常に冷涼な気候で、「名水百選」に選ばれた水源もありますし、採草地とか放牧地とかいろいろあるのですけれど、全部合わせると500ヘクタールぐらいはある。阿蘇とか北海道は放牧地があるのですけれど、日本全国には山林とかいっぱいあると思うので、そういった所で今後は放牧ができたらいいな」

「急な起伏のある坂を登ったりすることによって足腰が強くなって、普通の繁殖牛に比べて倍ぐらいの仔牛を産むことができる。牧草牛にとって親子放牧というのはとても大事で、親が教えてくれることによって放牧地での過ごし方というのを覚えてくれるので」

「うちの会社ではIoTの技術を積極的に導入しています。牛の首にセンサーを付けてセンサーから飛んできた情報をスマートフォンでキャッチして確認することによって、きちんと発情を見逃さずに受精をできるようにしています」

「畜産で使えるIoTというのがなかなか現場の意見と差があったので、ならば現場で本当に求められているものをシステムインテグレートしていくのは面白いんじゃないかなと」

「効率はものすごくいいですね。」

「牛にとってこの環境というのは全くストレスもなくて、広い土地に無限に草が生えている」

「なるべく食べ続けられるお肉を僕たちはつくりたいなと。それにはやっぱり環境負荷がなるべく少ない、環境と共存している畜産というのを目指したいなという感じです」

「草を食べて糞をして、それがまたこの土地の栄養になって、また新しい草が生えて、自然の中で循環していく」

「食べ続けたい、を実現するにはやはり放牧であったり、こういう牧草を食べる牛というのを消費者にお届けするのがひとつかなと」

「おいしいお肉を作りたいというのが一番ですよね」

野々宮さん:

僕が22世紀に対して描いているイメージというのは、今までみたいに性急に事を進めないということです。ゆっくりとか徐々にとか価値の保存とか、そういったものが実は価値創造につながっていくんじゃないかなというのは、今、身を持って体験しているところです。ただ当然実験中なので結果はまだ出ていないのですけれども、今のところ感触としては金融マン時代に感じた、物事がスケール(拡大)していっている感覚というのは強く感じています。

もうひとつは自分の足もとですね。僕の場合は食肉文化です。この食肉文化をとことん掘り下げることによって何が起きるか。ちょっと予想していなかった副産物なのですけれども、周りのギークが寄ってくるのですね。「お前、なんか知らんけど和牛を牧草で育ててるらしいな、何やってんの? 俺すごいこういうことやってる*りょうし*なんやけど」とか、もしくは「俺こういう絵めちゃくちゃずっと描き続けてるんやけど」とか「石をひたすら彫り続けてるんやけど」「実はこんな変わったチーズやってんねんけど」とか、「野々宮さんが言ってるテロワールって半端じゃないですよ。うちも三代かかってますから」というワイナリーとか、そういった足もとをめちゃくちゃに掘り下げている、文化を形成しようとしている彼らが集まってきてくれる。なおかつ彼らとはすべて事業ドメイン(領域)は違うのにも関わらず、同じ言語で朝まで会話ができるのですね。言っていること、使っている単語というのはほぼ同じで、人の趣味や人の興味で僕も遊べる。これが思いもよらなかった副産物です。

この辺りが、福本理恵さんのご講演のROCKETや、SPACEのお話にもあったのですけれど、損得だけではなく、期限を設けず、興味のあるものをとことん掘り下げる。ピボットもオッケー。こういったことによって産業につながっている人たちをたくさん目の当たりにしてきています。ただこれを更に発展的に考えていくと、ゆっくりと価値創造をすることが素晴らしいのだ、これに対してお金を払いたい、という仕組みを作っていく必要があるのですけれども、ここに関しては皆さんギークなのでコミュニケーション力がすごく低い人が多いですね。我が強い。僕もそうですが自分が話を始めたら止まらないし、相手の気持ちがよくわからないし、よく失敗するのですよね。だけども思いだけは強い。これをフェリシモがうまくキュレーティングしてなおかつ彼らの情熱、時間、こういったものを消費者やマーケット、もしくは教育に対して志望している層に会って、この辺りを伝えていってあげる、そういった作業にすごく可能性を感じるなと思っています。

僕もこうやって足もとの放牧・牧草和牛畜産に関してかなり特異に掘り下げています。この情報は今までのご縁、ご恩返しと思って、全て開示したいと思っています。今後フェリシモで試行錯誤されていく中、どんどん試行が進んでいくと思うので、その試行に対して一コンテンツメーカーとして全ての情報と労力をお出ししたいなと思っています。そういった機能が実はギークの世界には存在しません。ここに大きなミスマッチが生じていて、本来的には価値があるだろうし恐らく共感を受けやすいだろうけれども、それがうまくスケールしない。だから再投資が進まない、掘り下げ続けるにはどうしても足りないものが出てくる、なのでそれを諦めちゃう、みたいな悪循環が今起きているというのがギークがたくさんいる世界の現場かなと思います。僕がいるのは北海道なので主には農業系の方が多いのですけれども、当然これは他の業界、業種でもいえることだと思います。こういった部分をうまくつないでいく、編集して言語化していってあげる、そういうことがフェリシモとできればなと個人的に思っています。ありがとうございました。

司会:

野々宮さん、ありがとうございました。締めにふさわしい情熱と、それから私たちも時期が来れば阿蘇や北海道に行きたくなるようなお話もたくさん盛り込まれていました。非常に共感の多いお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。

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