フェリシモCompany

「虫とりのむこうがわ ―蝶使いのめざす世界―」

蝶使い

道端慶太郎さん

開催日
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Profile

1975年、奈良生まれ。物心ついた頃から、虫などの動く生き物を見つけると追いかけ始める。幼稚園では虫を見つけると行ってしまうので整列できず、先生を困らせた。標本も作ってみたが、性格が雑なためコレクターにはなれず、昆虫学者を目指す。大学で研究者には向かないと気づき、それでも自然に関わる仕事がしたくて、環境コンサルタントという仕事に就き、以後、13年ほど自然環境調査に従事。
大好きな仕事ではあったが、野生の生き物が減っていく様子を調べているだけではつらくなり、人と自然の関係性を再構築し、ラピュタのような世界をつくろうと退社。2015年、株式会社空から蝶を設立。大好きな蝶を使って世界を変えるという意味で「蝶使い」と名乗る。まず、一度体験したら人と自然が強くつながるものとして、2000km旅する蝶アサギマダラを幼虫から飼育して、羽化したら空に放す飼育キット「虫とりのむこうがわ」を発明。

※プロフィールは、ご講演当時のものです。

講演録 Performance record

第1部

道端 慶太郎さん

フェリシモ:
本日は奈良からお越しということで、神戸にはよく来られますか。

道端さん:
神戸は電車はもうつながっているのですが、昔からトラウマのような大阪の壁があって、奈良の人は意外と来ない町です。

フェリシモ:
そうですか。本日はこちらにもありますアサギマダラさんと一緒に電車で来られたということで、大丈夫でしたか。

道端さん:
ガタゴトゆられて、無事かどうかまず確認しました。

フェリシモ:
来られてすぐに確認いただいてありがとうございます。

それでは早速ですが、まずは「蝶使い」という肩書きを初めて耳にされた方も多いと思いますので、お仕事内容や肩書きに込めた思いなど、自己紹介も兼ねてお話しいただけますでしょうか。

■「蝶使い」を名乗るまで―生き物が好きだった少年時代と進路

道端さん:
みなさん、こんにちは。道端と言います。先ほどご紹介いただきましたが、生物の調査の仕事をしていました。1年くらいかけて昆虫の調査をしてお国相手に報告するのですが、ずっと生き物が減っていく様子をレポートしていた時にちょうちょを使って何か変えていきたいと思って「蝶使い」という肩書きを創出して名乗らせていただくことになりました。

フェリシモ:
ありがとうございます。短い肩書きにも思いがぎゅっと詰まっています。虫が大好きな昆虫少年だったとうかがっており、いま、蝶使いとして活動されていて、好きなものに携わるお仕事をされていると思うのですが、そこに至るまでは自然な流れだったのでしょうか。それとも紆余曲折があったのでしょうか。

道端さん:
物心ついた時はもう生き物を追いかけていました。背がいちばん低くて、なかなか整列できない子どもで、幼稚園の卒業式でも先生にそう書かれました。生き物が好きで「生き物の仕事がしたいな」とずっと思っていました。

小学校に上がっても昆虫を捕っていて、小学校低学年くらいから標本に興味がわいて作りだしましたが結構ボロボロになって、美しい標本を買おうと思って1回、お母さんに標本展示販売会に連れていってもらったことがあります。マニアックな世界で、『月刊むし』という、それもマニアックですが、雑誌の後ろに「標本展示販売会、どこどこ」と書いてあって、大阪のどこかだと思うのですが連れていってもらいました。そうしたら、その時にまわりの大人たちを見てあまりにマニアックな景色にお母さんが二度と連れていってくれなくなって、標本を作る道からはずれていったというのがあります。性格が向いていなかったのもあります。標本は1個でも、足の先でも欠けたら値打ちがぐっとなくなるのです。管理も含めてマメさが必要で「無理やな」と思いました。

それで中学、高校と虫からいったん離れてバスケばかりしていたのですが、やっぱり生き物をしたいと思って、大学に行った時からは生物系をやりたいと意識していました。でも、科学や物理とくらべて生物はあまり仕事がないというのは何となくおわかりかと思います。

それで研究者か学校の先生になるしかないと思いました。ふたつしか知らなかったので。(先生を選んだのは)教育に興味があるというよりは消極的な意味で、「研究者はやっぱり無理だな」と思ったのです。僕は北海道大学農学部に行って分子生物学をしていました。本当はフィールドワークをしたかったのですが、成績で決まってしまったのです。分子生物学は研究室にこもってDNAとかをずっと分析したりして、僕から言わせると見えない生き物が全然おもしろくなくて、「これは脱出やな」と思いました。

そうすると、もう一方のということで、教育が好きというわけではなかったのですが教師になろうと思いました。教職を取る時に、僕は奈良なので奈良女子大学付属高校に行きましたが、ここはちょっと変わっていて、付属とつくようにずっと先生が変わらないのです。それで教育実習に戻ったら学校の先生が「こんな仕事あるで」と教えてくれたのが環境調査の仕事です。

前の仕事は環境コンサルタントです。大きいダムや道路を作る時は、日本も先進国なのでいきなりズドっとやっていいわけではなくて、法律で調査をすることが決まっています。その時に調査をするのが環境コンサルタントという仕事です。運よくその仕事に就けて、最初の魚の調査の時は夢みたいでした。おやじと一緒にやっていたように川に行って魚やエビをゴニョゴニョ捕って、僕は先輩に「これでお金をもらっていいんですか」と聞きましたが、本当にそんな感じで日々が過ぎました。

5年くらいはすごく楽しい仕事でした。キャラバンみたいにハイエースで行って泊まり込みながら全国に行って調査をします。よく「テントに泊まるのですか」と言われますが、それはしんどいのでビジネスホテルに泊まります。開発予定の所なので、正直言うと調査する所は天然記念物がある所やすごくいい所ではないです。どちらかというと中途半端な、都市でもない、すごい原生林でもない間の所が開発されるので、全国のそういう所に行っていました。

春夏秋と同じ場所に調査に行き、冬になったら報告書を書きます。僕たちにとってそれが国土交通省に提出する成果品で、大学生が論文を書く感じです。1年かけて調査をして報告書を書くというのが流れで、楽しいのですが、書いている時に「このままでいいんかな」と考えてしまうようになったのです。調査に行ったら楽しくて春から秋は一瞬で過ぎるのですが、冬になったら、冬の気候もあるのかもしれませんが、まとめながら「いいんかな、これで」「それでどうなるんだろう」と。報告書には「ここに絶滅危惧種がいて、こうやる方が望ましい」とか書くのですが、後はお国が決めることなのでそこまでしか力がなくて、そのむなしさを感じるようになったのが5年目くらいからです。

■自然をビジネスにすることのむずかしさ

フェリシモ:
好きな仕事だけどむなしさや迷いも出てくるようになって、「どうしようかな」と今後について考えられます。

道端さん:
考えながらも、それまで生き物のことしか知らなかったので何もできなかったのですが、ある時、結婚したタイミングだと思いますが、奥さんに「有機農業やってるとこ、見にいかへん? 」と言われて、農業に興味は全くなかったのですが、1回行ってみたのです。そうしたら、有機農業は結構くせもののおやじがやっていたりして、そういうちょっとこだわりの強い方に、僕が「こんなことをしている」と言ったら「おまえ、何やってんねん。アホか」みたいなことを言われて、僕も割と素直なところがあるので何となく思っていたことを言われたら「ほんまやな」「そうかもしらん」と思い始めたのがそのころです。奈良で有機農業をしている人で、そこでは同じ年くらいの男の人がそのおやじの跡を継いで農業をやり始めていました。「おかしいと思うんやったらさっさとやめて有機農業やったら」と言われたのですが、「何かキャラちゃうな」というのがあって、キャラが違うとしか言いようがないのですが、あと、もう10年くらい調査をして得てきた知識や実際に各地で見てきた生き物のことを世に還元できていないのはもったいないと思ったのです。

何かしなければいけないと思いましたが、それまで生き物のことしか追っていなくてビジネスのスキルがないのでいきなり辞めても生きていけないのが目に見えていました。給料がいくらとか明細も見ておらず、「何となく生きられるからいいわ」みたいな、お金に関してはそれくらいルーズでした。それで「まずビジネスを習わなければいけない」と思って東京のNPO法人が教えている社会起業塾に行きました。その時は社長とか5、6人に囲まれて面接を受けました。何も知らなくて、計画書もむちゃくちゃだけど「教えてください」と言ったら「何か変なやつ来たな」みたいな、確かにその時は変でしたが、そこから習い始めて、いろいろもがくようになりました。

フェリシモ:
習ってからもいろいろあったということですね。自然を相手にされているので決まりきった答えもないでしょうし、先が見えないし時間もかかるということもあると思いますが、具体的にどういった課題がありましたか。

道端さん:
ビジネスにするのがむずかしいのです。絶対に守らなければいけないのに、自然環境にはお客さまがいません。商品があったら誰かがお金を払いますが、「じゃ、誰がお金くれるん? 」と言うとないのです。いまでもすごくむずかしいと思っています。環境税というのもありますが、「誰に何を」と何回も聞かれて僕はいつも「地球のために」と言うのですが、先生に「地球ってどうやってお金もらうの」と言われて、そういうことの繰り返しで苦しかったです。そして続々と同期の人たちが自分のビジネスを立ち上げていくのです。35、6の僕の横で、例えば14歳くらいからホームレスのことを考えていた女の子が20歳で起業したりするのです。そのコミュニティがあって悔しすぎて、まず会社を辞めました。

飼育キット「虫取りのむこうがわ」を思いついてから辞めたわけではなくて、本当に何もなくてとりあえず辞めてしまいました。それで何かしないとだめなので、前の調査の仕事はフリーランスの人もいるのでそのアルバイトをしたり、教員免許があったので非常勤の高校教師として学校にも1回行きました。免許を取っておいてよかったと思いました。その時に高校生にいろいろ言いました。「社会人生活が長かったし、いま、社会起業塾で習っているから5分だけビジネスの話をして、のこりは生物の話をするから」と言ったら、最初の話だけ高校生がよく聞くのです。「高校生もそういうところに興味があるのかな」と思いました。教師は1年少しくらいやりましたが、やっぱり僕が学んできたことの蓄積がもったいないと思ったのと、僕が高校のころから20年くらいたっているのに内容が3分の2くらいは変わっていなくて、僕という生物にいちばん近かった人間が忘れているようなことも多くて、そして教え方がもっとうまい人が横にいるし、「これは僕がやるのは社会の損失やな」とまた勝手に思ってしまったのです。

フェリシモ:
「誰のために」というのがない分野なので、聞かれたら「地球のために」と答えていたということですが、いろいろな課題があった中で蝶なら人と自然をつなぐことができるかもしれないということで蝶をお選びになられていますが、いろいろな生物の中でなぜ蝶を選ばれたのですか。

道端さん:
まず昆虫の調査担当だったというのがあります。そして「辞めなければ」と思ってからずっと植物の勉強をしていました。なぜかというと地面があって、植物があって、植物を食べるちょうちょやバッタがいて、カマキリがいて、鳥がいて、いちばん上は猛禽類といってワシやタカですが、ピラミッドがこうあったら人間活動によって削られて小さいピラミッドになるのです。そうしたら昆虫が減っても何が減ってもまず植物を増やさないと上は増えないと思って植物の勉強を始めたのです。だから起業塾に行っていた最初のころも庭造りの事業計画を出していて、「空から蝶を呼ぶ庭造り」みたいななまえでした。なぜ蝶にしたかというと、僕が得意で好きだったというのもありますし、ちょうちょは植物を植えたらやってきます。例えば庭にミカンを植えたらアゲハチョウがやってきます。同じように食草といってちょうちょはだいたいにおいて食物が決まっています。キャベツ畑のまわりにはモンシロチョウがいます。環境のものさしと言いますが、そういう環境ができたというのが蝶によってわかるので蝶がいいと思いました。

■2,000kmを旅する美しい蝶、アサギマダラ

フェリシモ:
蝶の中にもいくつか種類があると思いますが、その中でアサギマダラを選ばれている理由も教えていただいていいですか。

「#スライド」

道端さん:
浅葱(あさぎ)はネギの若いころの色のことで、少しブルーなのです。これは僕が撮った写真ですが、空が透けているのではなくてもともと羽根が青いのです。空が透けているみたいですが、それだと手品みたいに植物が消えてしまっているので、透けているのではなくて羽根が青いのです。これを浅葱色と言うのですが、まず美しい。後で飛ばしてみようと思いますが、飛び方も美しいです。光に当たっている様子は本当に美しいというのと、アサギマダラは旅をする蝶として有名です。アサギマダラを知っている方はおられますか。

フェリシモ:
結構、ご存じの方がおられます。

道端さん:
今日、初めて見た方はいらっしゃいますか。

まだまだですね、僕の活動も。

フェリシモ:
初めての方も多いので、少しご紹介ください。

道端さん:
2,000kmを旅する蝶と証明されていて、春になると台湾や沖縄から北上してきます。海を渡って九州、四国の南と北上していって、最近は温暖化の影響で北海道でも、昔は珍しかったのですが、結構いるみたいです。だからトランプさんが何と言おうが温暖化は間違いないと僕は思っています。夏は山の高い所で過ごします。僕は富士山の標高1,800(メートル)くらいの所で見たことがありますし、山登りをされる方はひょっとしたらお花畑でこの蝶を見たことがあるかもしれません。夏は本州のいろいろな高い所で過ごして避暑をしています。そして秋になるとまた南に下っていきます。ガーっと下っていって、紀伊半島でいうと和歌山を過ぎて、この辺ですと淡路島の南を過ぎて、室戸岬を過ぎてというふうに南へ帰って行って、いまはもう寒いのでちょうど沖縄のあたりです。

フェリシモ:
気温にあわせて移動するというセレブな蝶です。

道端さん:
そうです。生き物は気温がすべてな所があるので、いつもいい気温のところにいる感じです。

フェリシモ:
ほかに蝶という生き物の特徴はありますか。

道端さん:
植物とつなぐということです。僕は10年くらい各地で調査をしましたが、その時に「人間が作ろうが、自然が作ろうが、相手にとってはあまり関係ないな」と思いました。具体的に言うと、カワラバッタというこれまた美しいバッタがいます。少しマニアックですが、外は地味なのに飛ぶ時、羽の中は青い色をしています。絶滅に近いバッタで、なまえのとおり川原にいます。川原は昔は石がコロコロしていましたが、いまは利水や治水の関係で氾濫を全部せき止めています。その結果、氾濫がほとんどなくて川の中に結構木が生え、河川の樹林化といって国交省では問題になっています。要は川原が減ってきていて、そうすると、カワラバッタがある現場では線路の石ころのところからわいていたのです。線路は人間が作っているもので、しかも油みたいなものがボトボト落ちているのに、石ころで草のない環境さえあったらカワラバッタは生きていけるのだとその時に思いました。人が作ろうが、場所とエサがあれば、衣食住の衣以外のものがあれば、生き物は来るのだなと思いました。関係なかったですか。

フェリシモ:
大丈夫です。

道端さん:
よかった。

フェリシモ:
(見本で置いてある、箱の中の蝶は)元気に飛んでいる感じです。

道端さん:
きれいでしょう。

フェリシモ:
あとでもう少し近くで見ていただけたらと思いますが、ここから見ると羽の間がきれいな青色です。

道端さん:
あ、1個挟まってる。

フェリシモ:
よかったらいま、どうぞなおしていただいて。

「#挟まった蝶をなおす」

道端さん:
これで大丈夫です。

「虫とりのむこうがわ」について話す道端さん

■子どもたちに蝶を見せたいという思いから開発した「虫とりのむこうがわ」

フェリシモ:
次に開発された「虫とりのむこうがわ」についておうかがいしたいのですが、「虫とりのむこうがわ」をご存じの方はどれくらいいらっしゃいますか。

道端さん:
ありがとうございます。「好きの向こう側」というタイトルで呼んでいただいてちょうどよかったなと。これ、どちらが先でしょう。僕の方が先につけていたかな。

フェリシモ:
そうです。「虫とりのむこうがわ」をご存じの方があまりいらっしゃらないので、開発の経緯やむずかしかった点など裏話もあれば教えていただきたいのですが。

道端さん:
はい。庭造りをしなければいけないと思ったのですが、造園屋さんではないので野生植物を種から育てようと思いました。そしていろいろな植物を育て始めて、その結果、ちょうちょを呼ぶ、ちょうちょの食草である植物を植えることにしました。これは教育にもなると思い、箕面にこどもの森学園というどんな子でも受け入れるオルタナティブスクールとして最近人気の学校があって、そこにほとんど交通費だけで教えに行き始めました。育てた植物を植えて気づいてくれる場所が欲しいと思っていて、「これを植えたらアゲハチョウが来ます」「これを植えたらキチョウが来ます」と言いながら子どもたちと一緒に植えていました。アサギマダラをいちばん呼びたかったので最終目標のアサギマダラを呼ぶ植物を植えたのですがなかなか来ませんでした。しかも1年かけて移動するので1年に1回くらいしかチャンスがないのです。この辺でいうと、春は日本列島を上がっていくのですがなかなか合う植物がなくて、「合う」というのはその時に吸いたい植物が決まっていて、それがタイミングよく咲いていないといけないのです。秋に下がってくる時も植物によるのですが、合わないといけないのです。

なんとか子どもたちに見せてやりたいと思うけどチャンスが少ないので、逆の発想で考えたのが「虫とりのむこうがわ」です。こういうものがあったら、幼虫からもう否応なしに見せられます。そして、空に放したら庭造りをした時にやってくることをイメージしながら植えることができるという着想です。それで会社名も「空から蝶を呼ぶ庭造り」から「空から蝶」というなまえにしました。

フェリシモ:
好きななまえです。ストーリーを感じます。

道端さん:
空から蝶がやってくるイメージです。

フェリシモ:
先ほどご存じだった方は育てられたことは・・・・・・ありませんか。では、まだどなたも体験されていないということで、本日、キットの販売もございますので。

道端さん:
6個だけ持ってきています。

フェリシモ:
生き物なので数量限定ですが、よろしかったら休憩時間に見ていただけたらと思います。こちらはウェブで販売されています。

道端さん:
はい。ただ、あまり販売できていなくて。

フェリシモ:
やはり生き物なので。

道端さん:
そうなのです。販売できる時と新聞に載るタイミングがあわなくて、新聞に載った時にいただいた注文をまだお送りできていない人もいるので、ここに持ってきた分はひとまず、というところです。すみません、商売が下手で。前、たまたま毎日新聞の全国欄に載せていただいた時にすごく注文が来てしまったのです。その時はそんなに売れないと思っていたので用意もしていなくて、待っていただいている部分が結構あるという状況です。なかなか調整がむずかしくて。

フェリシモ:
商売と結びつけるとなると、生き物は一筋縄ではいかない感じです。
虫の写真はないですか。

道端さん:
あります。ちょっと待ってください。

フェリシモ:
虫の画像がありますのでスライドに映します。

道端さん:
虫のことよりアサギマダラをいきましょうか。

フェリシモ:
そうですね。せっかくなので。

「#スライド」

道端さん:
では、アサギマダラがどういう蝶かをお見せします。先ほど成虫を見せましたが幼虫と卵はこんな状態です。ここにも持ってきているので後で見てください。卵があって、かえったところの幼虫です。ちょうちょはかえるとたいがい殻を食べます。最初の食べ物は自分の殻です。こうやって幼虫が葉をグリグリと食べて成虫します。かわいいでしょう。持ってきているのはこのころです。だんだん角(つの)が出てきます。次は閲覧注意の画像で無理な人がいるかもしれませんが、こうなります。

アサギマダラの幼虫

「#スライド」

道端さん:
どうですか、これ。さなぎになる前はこんなにけばけばしい色で、実はホームページに載せようと思ったら「キモいからやめといた方がいい」とデザイナーさんに断られました。でも、僕はこれが好きで、飼育していただけるとこれがいちばんかわいくなります。本当に。嫌々飼われたお母さんも「この幼虫がいちばんいい」と。

「#スライド」

道端さん:
その次にどうなるかというと、前蛹(ぜんよう)といって少し色が変わってきます。これはどのちょうちょにもありますが「蛹(さなぎ)になる前」と書いて前蛹です。動かなくなってクルクルとなります。

「#スライド」

道端さん:
そのあと、ここにも持ってきていますが、さなぎがこれです。金粉みたいなものがあるでしょう。後で見ていただけるとわかりますが銀色の粉みたいな、ガラスみたいなのが出てきてきれいです。中が透けていて、さなぎ自体は透明です。だからちょうちょの模様が入っているのが見えますか。ちょうちょの模様がもうできています。これはかなりできかけの方ですが、できている様子がずっと見えます。

「#スライド」

道端さん:
もう少したつとこうなります。これは前から見たところで、下の方についているのが目です。もう蝶の模様があるのがおわかりでしょうか。僕が調査をしていた時はこんなにゆっくり観察できることはありませんでしたが、これで観察できるようになりました。

「#スライド」

道端さん:
直前はこれです。これは横から見たものです。目があって、羽に血管みたいにブワーっと黒いのが入っていきます。

「#スライド」

道端さん:
出てくる時です。殻は透明です。出てきて、ここから羽を伸ばしていきます。

「#スライド」

道端さん:
羽を伸ばしていくとこんな感じです。この真っ黒なものは羽化直前です。これはたまたまふたつ同時に出てきてこんな形になりました。きれいでしょう。

フェリシモ:
きれいです。すごい。

道端さん:
これがアサギマダラです。ほかのちょうちょも見せましょうか。

フェリシモ:
ぜひお願いいたします。

■姫路の市蝶、ジャコウアゲハ

「#スライド」

道端さん:
これはジャコウアゲハというちょうちょです。姫路から来られた方はいらっしゃいますか。時々、市の蝶とかありますが、姫路の蝶です。だからこれを入れてみました。

「#スライド」

道端さん:
これはどんな蝶かというと、卵はさっきと違ってこのように真っ赤です。

「#スライド」

道端さん:
卵を生んでいます。わかりますか。この端の方にも卵が写っています。左上に赤いのが。

フェリシモ:
見えます。

道端さん:
そのアップが先ほどのスライドです。幼虫はナウシカの王蟲(オーム)みたいです。いきますよ。

ジャコウアゲハの幼虫

「#スライド」

道端さん:
小さい時はかわいいです。このトゲみたいなものは1個1個がプニプニしているので痛くないです。こんなにかわいいものがだんだん大きくなってくると黒くなってきます。

「#スライド」

これです。これでもまだかわいいです。こんなに小さいのにアゲハの仲間はやっぱりにおいの臭角(しゅうかく)というものを出します。くさいけど時々なつかしくなってにおいたくなりませんか。くさいのがなつかしいみたいな。

「#スライド」

道端さん:
大きくなってきたらだいぶエグいです。模様も出てきてモスラみたいです。

「#スライド」

道端さん:
最終形態はこれです。模様がドワーっと入っていてかっこよくないですか。

「#スライド」

道端さん:
これは前蛹です。アゲハの仲間はこうやって糸をたらしています。アサギマダラは葉っぱからぶら下がりますが、アゲハは糸でからだを固定して斜めになるタイプです。

「#スライド」

道端さん:
さなぎになった姿はこれです。

お客さま(子ども):
何で電柱にあるん?

道端さん:
何で電柱にあるのか、いいことを言ってくれました。実は現場は大阪市内の町中です。軽トラも走っていますが、横を車がブンブン走ります。こんな所でも植物さえあればちょうちょはいると言いたくてわざとこの写真にしたら、男の子が仕込みのように突っ込んでくれました。ありがたいな。

「#スライド」

道端さん:
植物はウマノスズクサと言います。ニュルニュルとなっていますが、春に蛇みたいに出てくるこの植物を食べるちょうちょがジャコウアゲハです。さなぎの様子がおどろおどろしいでしょう。怪談『番町皿屋敷』に出てくる「お菊さん」のなまえにちなんでオキクムシと言って、これがジャコウアゲハのさなぎです。これはちょっと気持ち悪いです。

「#スライド」

フェリシモ:
でも、出てきたらきれいです。

道端さん:
ジャコウアゲハは普通のアゲハと違って後ろが赤いという特徴があります。ほかの生き物に対して「毒を持ってるぞ」といっています。天敵の鳥に飛ぶ時に見せて威嚇します。

フェリシモ:
実際に毒はあるのですか。

道端さん:
ちょっとあります。

フェリシモ:
少し多めに見せているのですね。ほかにはありますか。

道端さん:
もう1個いきましょうか。

フェリシモ:
お願いいたします。

■一見地味だけど美しいムラサキシジミ

「#スライド」

道端さん:
ちょうちょはその植物があるという環境の指標になるし、変化するのが楽しいです。ムラサキシジミは一見、地味なちょうちょですが、これわかりますか、茶色いのがちょうちょです。

フェリシモ:
葉っぱみたい。

道端さん:
実はこれ、右上に幼虫がいます。アリがついているのがヒントですが見えにくいですね。どんな蝶かというと中身はこんな。

「#スライド」

お客さま(子ども):
ヤッター!

道端さん:
きれいでしょう。ハハハ。美しすぎるな。感動した?

フェリシモ:
きれいですね。

道端さん:
そうです。地味だと思いますが違います。ムラサキシジミの中はこんなに美しいです。

「#スライド」

道端さん:
みんなが気づいていないだけで、これは町中にもいます。なぜ気づかないかというと、ほとんど羽を閉じていて飛ぶ時だけ青いのが見えるからです。僕はずっと狙って羽が開くまで待っているからこういう写真が撮れます。

「#スライド」

道端さん:
同じ姿勢で卵を生んでいます。これはなぜ町中にいるかというと、アラカシという樹木が食草で、ということはそこへ卵を生むということです。アラカシはどこの公園にも植えられていて、庭木にもよく植えられます。

「#スライド」

道端さん:
これが卵です。見にくいですが、木の根本にある白いものです。アサギマダラは縦長の細いラグビーボールですが、これはおまんじゅうみたいな卵です。

「#スライド」

道端さん:
アップです。これは卵から幼虫が出た後です。穴があいています。殻はウニみたいです。

「#スライド」

道端さん:
幼虫はこれです。出たところはこんな感じです。

「#スライド」

道端さん:
これを見てください。アリが来ていますが食べられないです。何をしているかというと、アリと一緒に暮らしています。

「#スライド」

道端さん:
これもアリが来ています。絶対アリが来ます。この蝶が甘い蜜を出します。

フェリシモ:
それを狙ってきているのですね。

道端さん:
狙うというか、それをいただく代わりにアリはちょうちょが食べられそうになるのから身を守っています。

「#スライド」

道端さん:
これは最終形態でさなぎ直前です。アリのサイズくらいだった蝶がアリよりだいぶでかくなりました。こうやって守られて生きています。

「#スライド」

道端さん:
これはさなぎです。

フェリシモ:
黒くなりました。きれい。

道端さん:
黒くなって地面に転がったりします。植物を知っていたら「じゃ、どの蝶がいるな」とわかって蝶を探す気になります。例えば、この蝶の場合はフジバカマという植物を植えたら秋にやってきます。それを知っていて10月には来ると思ってフジバカマを見ると、注意を払っているので見えるのです。

■アサギマダラの生態

「#スライド」

道端さん:
これは野生のアサギマダラです。これはフジバカマの仲間のヒヨドリバナという植物です。箱に入れているのは少しずつ羽がすれてきますけど野生はきれいです。

「#スライド」

道端さん:
これは調査をしているチームで、アサギマダラの移動調査をしています。この人たちが調査をしてきてくれたから2,000km移動することがわかりました。これはマークしている様子です。見てください。羽に文字を書いているのがわかりますか。8月3日、「BV」は場所のなまえです。「KMI002(ミチハタケイタロウ、002)」という感じです。業界ではマッキーの極細がおすすめと言われています。

フェリシモ:
書いていて羽を傷めたりしないのですか。

道端さん:
後で放す時にさわっていただけると思いますが、粉がつかないのです。鱗粉でちょうちょがいやになる人が結構います。あれは髪の毛みたいなもので普通は抜けやすいのですが、この蝶はないわけではなくて抜けないのです。だからほぼ鱗粉がつかないので、こんなふうに書けます。

フェリシモ:
すごいですね、羽に文字が書けるなんて。

道端さん:
動画にいきましょうか。

フェリシモ:
ぜひ、お願いいたします。

道端さん:
小学生にいつも出すクイズがあるのですが、このちょうちょが何で2,000kmも飛べるかわかる人はいらっしゃいますか。いちばん後ろの僕、わかりそうやな。

お客さま:
体力がすごくあるから。

道端さん:
近いといえば近いかな。結論から言うと、飛ぶとバタバタするからしんどいですが、このちょうちょはあまりバタバタしないのです。体力の消耗を抑えるというか、飛んでいる様子が少しだけ撮れているので見てください。最初はバタバタしますが、すーっと飛行機みたいに行く時が見えます。

「#動画」

道端さん:
飛んでいるでしょう。もちろん、時々はバタバタします。こうやって滑空します。もう1回いきます。こうして風に乗るとエネルギーを使わなくていいです。こうやってフワーっとしている姿も見てほしい景色のひとつです。

フェリシモ:
あまり羽を動かさないから模様がずっと見えてきれいです。

道端さん:
そうです。

「#動画」

道端さん:
右側にいるのが生まれたての幼虫です。かわいいでしょう。殻から出たところで、生まれたところだけ何も模様がないです。それからしましまになったり角(つの)が生えたりしていきます。

「#動画」

道端さん:
これは生駒の庭に産卵しにやってきたところです。僕は有機農業にはまっていた時に、自給自足して社会と縁を切ろうと思っていた時期があるのですが、その時に買った山の家です。植物を植えたらやっぱりやってきて、「これは社会に戻って教えなあかん」と思いました。植物があったらやってきます。これは2年目か3年目からやってくるようになりました。1回来たら、それが来るわけではないのですが、なぜか毎年来るようになります。

「#動画」

道端さん:
成虫が植物の蜜を吸っているところです。揺れて見えにくいけどわかりますか。

フェリシモ:
真ん中あたりですか。

道端さん:
そうです。川の対岸の結構高い所にある植物の蜜を吸っているところです。秋はできるだけ栄養をためて体力を消耗しないように渡っていきます。ここらあたりだと10月半ばが渡りのピークで、もうほとんどは南にいると思います。

成虫が吸蜜するのはフジバカマと言いましたが、幼虫が食べる植物もあって、セットだとちょうちょがいる期間がいちばん長いです。その植物は場所によって変わります。南で言うと、近い仲間で例えばアゲハチョウはミカンもサンショウも食べますが、これはミカン科の仲間です。植物とちょうちょでいうと、南では多肉植物のサクラランという植物を食べて、本州ではキジョランやイケマという植物を食べて、北の方に行ってもイケマを食べますが、多肉食物から常緑植物を食べるようになって、落葉する植物を食べるようになると変わっていく中で、僕がいちばん好きな植物はキジョランです。

「#スライド」

道端さん:
こういう植物で葉っぱがあって、親指のすぐ横にある小さいのが卵です。

「#スライド」

道端さん:
これはつる植物ですが、実がこれです。

フェリシモ:
大きい。

道端さん:
すごいでしょう。手榴弾みたいな実があって、僕は蝶使いなので育てるためにこれを集めます。これを見たことがある人はいますか。

フェリシモ:
ひとりだけいました。

道端さん:
すごい人がいました。なかなか珍しくて、場所でいうと紀伊半島中から集めるというか、どこにでもないので各地に行きます。

「#スライド」

道端さん:
これは葉の裏にいるところです。ふだんはむき出しではなく潜んでいます。本州で冬を越す時は幼虫で、こうやって冬をじっと耐えて過ごします。キジョランの花は地味で、大きな実がなるのに2年くらいかかります。

フェリシモ:
そんなにかかるのですね。

道端さん:
はい。あれは1個の種がボンとあるのではなくて、中身は50~60くらいの種です。

「#スライド」

道端さん:
中身はこれです。ドラゴンのうろこみたいでしょう。この1個1個が種です。細くなっているところが綿毛の部分で、本当は毛がタンポポみたいにファーっとなりますが、開く前に撮っています。キジョランはエサにも入っています。

フェリシモ:
「虫とりのむこうがわ」のお写真も、もしございましたら。

「#スライド」

道端さん:
はい。幼虫です。おじさんみたいな、バイキンマンみたいな顔がかわいいでしょう。次々変わっていく幼虫をめでるために筆がついています。

「#スライド」

道端さん:
先ほどふたについていたのが最終型でいちばんうまくいったものです。成虫が2匹ついていますが、ここに殻があってもう1匹います。3匹ともうまくいくことは結構むずかしいのですがこういう感じです。

「#スライド」

道端さん:
これはうちの子どもです。幼虫の世話をしています。実は割と文句を言いながら無理矢理撮った写真です。

「#スライド」

道端さん:
これもまあまあやらせ写真ですけど。

フェリシモ:
かわいらしいです。ちゃんと手に乗ってくれるのですね。

道端さん:
そうです。うちの子どもは、ここにも来ていないのでおわかりかと思いますが、僕がやっていることにあまり興味がないみたいで。

フェリシモ:
そうなのですか。いや、今日はお仕事ということで。

道端さん:
まあ、仕方がないです。

フェリシモ:
あまり興味のないお子さんもめでていくと愛着が出てくるというキットですが、お子さまにより体験していただきたいということで、学校の授業であったらいいのにと思いました。

道端さん:
学校からは問い合わせがきて何度か送ったことがあります。公立は結構こういうのはめんどうくさいと思いますが、インターナショナルスクールやどこかからかぎつけてくださった札幌の小学校に送ったことがあります。

フェリシモ:
いまは定着していないけれどお呼びがかかればという感じですか。

道端さん:
そうです。去年はほとんど用意できなかったので。

フェリシモ:
それはやはり自然のもので、そのへんがいちばんむずかしいところですね。

道端さん:
ほぼ全滅に近かった年もありました。これは夏に育てられないのです。暑さに弱くて、1回ミスしたらまた次の秋となるので、なかなかそのへんはどうしたものか。1回、水の中に容器を入れて、「冷やし虫むこ(虫とりのむこうがわ)」と言ってみた時がありましたがだめでした。無理があったと思っています。

フェリシモ:
いろいろなチャレンジを繰り返していまに至るということですね。

「虫とりのむこうがわ」以外で蝶を通じて試みておられることはありますか。

道端さん:
夏休みに地元で虫取りの授業をしています。夏休み以外にもしていますが、虫取りして標本を作ろうというものです。前の夏もしたのですが、標本を作る時に「かわいそうだ」と言って泣き出す子どもがいました。すごくわかるのですが、なかなかあの時はむずかしかったです。ただ、その時も同じことを言いましたが、僕も子どものころからいろいろな生き物を殺したりしてきましたが、そういう人たちが「生き物がいなくなったらやっぱりさびしい」ということで絶滅していく生き物を何となく思っていたり、いろいろなものを守ろうとしていることも確かで、ふれずに無視するように終わっていくのは何か違うという感じはあります。

フェリシモ:
なるほど。

「#スライド」 

道端さん:
これは海を渡っていくところです。淡路島から本州側を見ています。ピントがあまり合っていませんが、何となくアサギマダラとわかるでしょう。海を渡る蝶です。日本だとどう考えても数百km陸地がないところがあります。実はアメリカにもこれのオレンジ版みたいなちょうちょがいて、オオカバマダラといいますが、カナダからアメリカ大陸を縦断してメキシコまで行きます。距離でいうと、記録によると4,000kmくらいありますが、ずっと陸上です。アサギマダラは絶対、海を渡らなければいけなくて、どうやって海をやり過ごしているのかという話にいまだに決着がついていません。「海の上で寝ていた」「それをテレビで見た」と言う人もいますが、まだどうなのかわかっていません。僕は一気に渡りきるか、流木とかに漂着するかどちらかと思っています。

フェリシモ:
そのあたりはこれからということですね。

道端さん:
野生の生き物なので基本的にはわからないことだらけです。

フェリシモ:
解明されきれていないところにおもしろさがあるのかなと思います。

道端さん:
はい。

フェリシモ:
バタフライガーデンについてもお話しいただけますか。

道端さん:
ちょうちょの食草を植えるとバタフライガーデンができます。イギリスでは結構行われていて、要はアサギマダラが来る植物とか、いろいろな食草と成虫が蜜を吸う植物の両方を植えたら季節ごとにいろいろなちょうちょが訪れるというのがバタフライガーデンです。僕も自給自足しようとした場所にそういう植物をいっぱい植えていてバタフライガーデンみたいなものですが、そうしたら蝶が来て楽しめます。町中でもできますし、いろいろな所で楽しめることのひとつです。

■既存で自分の場所がなければ作るしかない

フェリシモ:
少しお話は戻りますが、好きなものに携わることについてもう少し深く聞かせていただければと思います。最初は環境コンサルタントとして調査をされていて、「このままだったらちょっと」ということで紆余曲折があり、有機農業がターニングポイントかと思うのですが、好きなことを仕事にしていけたらいちばんいいですが生活のこともあります。お金ではなくて好きな方を続けてこられたことについてお話しいただけますか。

道端さん:
「料理が好きだったら料理人になってしあわせに生きられたのに」とあっさり思います。でも、やっぱり好きなものにうそをつけないし、「野生の生き物しかおらんな」というのは自分の中にありました。好きなことは理屈ではないと思っています。フェリシモさんでは有名な猫部というのがありますけど、ネコとか犬とかほ乳類にはあまり興味がなくて、物心ついたらは虫類以下の無脊椎動物とか、割と下等な生き物ばかり追いかけていました。標本商という標本を売る仕事は、美しい生き物がいますのでいまでもあると思います。真っ暗な業界のような気がしないでもないですけど、その職に就いたらアマゾンとかに行って好きな生き物や虫を捕りながら生きられたかもわかりませんが、たぶんむなしさが訪れるし、そもそも標本をきれいに保管することがマメじゃないのでできませんでした。学校の先生も向かないとなって、いろいろな生き物の仕事がことごとく「あかんな」と思ったら、辞めるころには「最悪、もう作るしかないな」と思っていました。

フェリシモ:
「作ってしまおう」と。

道端さん:
はい。キットを開発できたのはたまたまで、それがなかったらいま、何をしているかわからないですけど、とにかく自分の好きなことは何かを見つめました。生き物好きでもいろいろあると思いますが、振り返ったら、わがままだと思いますが、僕はつかまえるまでが好きなのです。いまでもそうですが、新しい生き物を見たらつかまえるまで必死で行きますが、つかまえてしばらくさわったらもうパっとなるのです。

フェリシモ:
つかまえて満足なのですね。

道端さん:
はい。「もうこの生き物は1回見た」みたいになるのです。だから昔から鳥には興味がないです。鳥ははるか遠くにいて、鳥の調査チームはずっと双眼鏡で見ているのですが「あれは何が楽しいんやろな」と思っていました。昆虫や魚の調査は、今日も持ってきていますが、網を持って捕ります。はっきりいうと捕り倒すのが仕事なので、それはすごく楽しいです。だから、好きなことの中でもどの作業が好きなのかを振り返りました。あちこちに行くのも好きでした。

フェリシモ:
自分の中で好きなことを突き詰めて整理したということですね。

道端さん:
それはしました。好きなことしか長続きしないだろうと思ったので、その中でできることをと思ってここにたどり着きました。

フェリシモ:
長続きするものを見つけてこれを仕事にしようと思っても、リアルな話、生活できるかどうかという問題もあります。結婚されていたという話もありましたし、そのあたりは気になりませんでしたか。

道端さん:
うーん。

フェリシモ:
すみません、夢を壊すようで申し訳ない。

道端さん:
気にすべきことだと思います。けど、その時は。

フェリシモ:
「俺はこれや」というのが勝っていた感じですか。

道端さん:
なかったですね。キットも開発できていなかったから本当にどうやって生きていくかわからない状況で、来年どうしようという。

フェリシモ:
奥さまにしたら「大丈夫かしら」と。

道端さん:
いまも思っていると思います。

フェリシモ:
「もう心配で、心配で」という感じですよね。

道端さん:
たぶん辞めると言ったら聞かないというのはわかっていると思うので。

フェリシモ:
そういうところも理解した上でということですね。

道端さん:
誰かが何かを決断して止められることってないでしょう。

フェリシモ:
その決断の強さもありますけど。

道端さん:
娘が結婚する時でもそうかなと思います。変なやつを連れてきても。

フェリシモ:
でも反対しませんか、変なやつを連れてきたら。

道端さん:
一応するけど、どうしようもないと思うじゃないですか。

フェリシモ:
そうですか?

道端さん:
それはあなたたちが最終的に。

フェリシモ:
最終的には、本人が思うのならというところに親はなるしかないということと一緒で。

道端さん:
それと一緒かどうかわからないですけど。

フェリシモ:
好きの気持ちが勝って貫いたという感じですね。

道端さん:
そうです。開発できたからよかったですけど。頭の中で「これができたら素敵だな」とイメージしたのです。どうやって開発したかというと、いろいろな論文に情報がありますが間が抜けていて、間は自分で実験して1周まわれることがわかりました。でも、できた時は「あ、できてしもた。どうしよう」とは思いました。

フェリシモ:
それは想定外でしたか。

道端さん:
いや、寂しさというか、開発している時は苦しいけど楽しいので、どMなのかもしれません。

フェリシモ:
産みの苦しみということですね。

道端さん:
そうです。考えてバタバタやっている時は金はないけど楽しいです。ちょうちょを捕りに、富士山から沖縄くらいはいろいろな所に行っています。どの時期にどれを捕ったらどうとか、金もないのによく行っていたと思います。

フェリシモ:
好きの気持ちがあってこその行動だと思います。いまのお話を聞いていると、好きなことを仕事にできればいちばんしあわせかと思いますが、普通は生活のことをどうしても考えてしまうと思います。それでもやっぱり「好き」を貫く強さにすごいなと思います。

道端さん:
できないですよね。

フェリシモ:
なかなか。

道端さん:
あとは、ずっと生物学をしていたので生物的な考えで、生態系はいろいろ錯綜するじゃないですか。社会の中で自分に合う場所は、必死でもがいて探さないとパコっとはまる場所はないと思っていて、既存のものしか表に出ていないから、そうしたらもう新しい空間のはまる場所は自分が作るしかないというか。

フェリシモ:
そこに行き着くというところが好きなことを突き詰めた人ならではという感じがします。ある所にはまってしまいがちですが一から作るのは大変ですし、それを作っていくのは好きの気持ちがあってこそだと思います。

道端さん:
あと、見せたいというのはありました。まず子どもたちに見せたかったし、これなら新宿のビルに住んでいる人でも見られます。実際、そういう人たちに飼育していただいて、ビルから出していただいたこともあります。だからそれが社会の中で自分がやるべきことなのかなと思っています。

キットを自然との暮らしを考えるきっかけにしてほしい

フェリシモ:
今後も「虫とりのむこうがわ」を通してそういう体験をいっぱいしていただいて広めていきたいという感じですか。

「#スライド」

道端さん:
そうです。これを見てください。Monarch(モナーク)というのがオオカバマダラというちょうちょで、カナダからアメリカ大陸を縦断してメキシコまで移動します。これはメキシコの樹林で群になって冬眠することで有名です。逆にこちらのアサギマダラは英語でChestnuts tiger(チェスナッツ・タイガー)と言います。後ろの羽の所がくり色なのでくり、チェスナット・タイガーと言います。

フェリシモ:
きれいななまえです。

道端さん:
マダラチョウの仲間なので模様が似ています。アサギマダラは東アジアにいて、日本中に行って、日本では海を渡っていきます。「旅する蝶=地球」と書いていますが、僕はこれは地球スケールだと思っていて、ほかの蝶にはないアサギマダラのスケール感が好きです。

フェリシモ:
この蝶にしかないものなのですね。そこもアサギマダラを選ばれた理由かと思います。

道端さん:
いま考えると、全部が完璧でした。旅をするということで大事なのは、僕たちみたいな自然環境屋は遺伝子汚染といって混ざることをいやがります。例えば大阪にしかいない蝶を北海道に持って行ったら遺伝子が混ざりますが、それは僕たちにとっては気持ち悪いのです。カブトムシはもうぐちゃぐちゃですが、やっぱりそっち出身の人間としてはそれはいやだと思っていて、こういうキットを作ることはアサギマダラがいちばんむずかしいくらいなので、技術的にいうとほかのちょうちょでもできるのです。でも、それだとどこのお客さまが買ってもいいというわけにはいかないのです。例えば、神戸市でつかまえたジャコウアゲハは「神戸市の人だけ買ってください」というのならできるけど、それはいやなのでアサギマダラだけにしたのです。

フェリシモ:
なるほど。

道端さん:
旅すること、羽が美しいこと、粉が落ちないこと、あと幼虫が気持ち悪いこと。

フェリシモ:
気持ち悪い方がいいのですね。

道端さん:
幼虫が気持ち悪くて成虫が美しい方がいいと思いませんか。

フェリシモ:
そのギャップがある方が、ということですね。

道端さん:
はい。小学校3年か4年でちょうちょの幼虫を飼育する授業がありますが、先生が用意できるのはモンシロチョウかアゲハチョウです。モンシロチョウには悪いですが、幼虫が地味というか普通の青い感じです。アサギマダラを見ていただいたらわかるように、黒い感じから宝石みたいなさなぎになって成虫になるというすべてがいま、思うと完璧でした。

フェリシモ:
当初はそういうふうには。

道端さん:
そこまで考えていなかったですけど、「開発するならこの蝶しかないな」とは思っていました。

フェリシモ:
結果的にすごくつながっているということですね。ここにもいま、さなぎなどがありますが、お子さんだけではなく大人の方にも体験していただいて、その体験が将来の日本の自然や、大きく出ますが、地球の環境を救うかもしれないと考えると、もっと広まってほしいと思いました。

道端さん:
実は、大人の人ほど体験してほしいかもしれない。やさぐれた、と言ったらあれですけど、そういう人たちもいろいろなことを考えるきっかけになると思います。子どもはもちろんですけど。

先ほどスライドにあったような、地味な服装で調査をしてくれる人がマークをしている姿が通常ですが、このキットを買ってくれたつめがきらびやかでイケイケのお母さんがマークをしている写真を送ってくれました。それを見た時、僕はすごくうれしくて、「何か変わってきたな」という感じがしました。マニアックなままではもったいない生き物だと思っているので。

フェリシモ:
虫に興味がない方にも広まってきつつあることが感じられたのですね。

道端さん:
はい。

「#スライド」

道端さん:
これは毎年、小学生向けに奈良市の教育センターで標本作りの授業をする時に話す資料です。僕が思い描いている世界をイラストに描いています。ここにアサギマダラがいますが、ドローンもあって「虫とりのむこうがわ」を持っています。僕はテクノロジーを否定しているわけではなくて、これは放っておいても進むだろうと思っています。ただ、テクノロジーが進んでいく中で明らかに人間のせいで生き物が絶滅しているのに放っておく世界はかっこよくないと思っています。だから両方生きるような、と思ったらラピュタやナウシカの描いているような世界です。フェリシモさんも新社屋を建てられるということで、こういうことができるのではないかと思います。公園でも、例えばテーブルくらいの場所でもフジバカマを植えたら、うちの近所の奈良でもアサギマダラがやって来ます。小さいエリアでも結構インパクトのあることができます。どんな植物でも植えればいいわけではなくて、何のために何を植えるかよく考えます。その植物によってちょうちょが来ることを知ってやらないとおもしろくないですが、知っていたら暮らしが豊かになります。

フェリシモ:
少しのスペースでもできるということなので、これから広がっていくといいですね。

道端さん:
そうですね。日本の国蝶はオオムラサキですが、このちょうちょが秋に帰って行く時には、10月ころですけど、割と都会でも見やすくて、それを各地でめでながら中継できるようになると楽しい世界かなと思います。その前に僕のキットで育てて、空に放してひととおり知っていただけるとなおさら。

フェリシモ:
キットを広げていく活動も続けながら、いろいろな夢も広がっていけばと思います。

「#スライド」

道端さん:
いま、トノサマガエルも準絶滅危惧種になっています。レッドデータブックというものが環境省や各都道府県から出ていて、僕はそういうことを調べる仕事を専門にしていましたが、1990年からガガーっと絶滅が進行しています。すごい自然の中にいる生き物ではなくて、例えばトノサマガエルやイモリ、メダカもそうですけど、普通の生き物が絶滅していっている状態がいまです。トノサマガエルが絶滅危惧種と聞いたら年輩の方はびっくりされるかもしれませんが、世界はそういう感じです。アサギマダラは絶滅危惧種ではありませんが、そこから僕みたいにほかのちょうちょにいく場合もありますので自然と暮らしていくことを学ぶきっかけにはいいものだと思います。

「#スライド」

道端さん:
これは僕がやろうとしていることです。植物を増やして、こういう環境ができたということの結果としてちょうちょが来るという話です。

フェリシモ:
ちょうちょで人と自然をつないでいきたいということですね。ありがとうございます。まだまだお話が尽きませんが、そろそろ第1部終了のお時間となりますのでここでいったん休憩とさせていただきます。道端さん、ありがとうございました。

第2部

質問1

お客さま:
道端先生、わくわくをありがとうございます。蝶使いの達人ですが、蝶に使われることはありますか。

道端さん:
今日もアサギマダラを10頭つれてきて、卵からひととおり用意してとか段取りが大変で、10月になると蝶の奴隷のような生活を送ります。使われっぱなしです。これを広めようとするために結構な時間を費やしていて、「蝶使われ」という肩書きに変えた方がいいかもしれません。

質問2

お客さま:
幼虫が木から家の壁や門などに移動していますが、いつ移動するのでしょうか。

道端さん:
アゲハの幼虫ですか。アゲハチョウの幼虫はさなぎになる時に木から移動して別の場所でさなぎになります。これは習性なので、移動するのはさなぎになる時です。食草というお菓子の家みたいなエサの木を離れるわけですから、もうエサは必要ないという時です。

質問3

お客さま:
母が蝶好きで「今年も何とか蝶がきたよ」と言っていたのですが、木を切ると来なくなりますか。草の花があれば大丈夫でしょうか。

道端さん:
種類によりますが、大まかに言えば草原が好きなちょうちょと森が好きなちょうちょがいて、キチョウやアサギマダラは森のちょうちょです。日本は雨の量と気温が高いことによって放っておくとどこでも森になります。森ではないところはどうしているかというと、運動場のように踏み荒らしているか、草刈りしているか、草原環境は誰かが手入れをして保っている場所なので、手入れをし続けると草原環境のちょうちょが来るようになります。放っておくとだんだん森になっていくので、徐々に森を好きなちょうちょが増えていくことになります。

近所の奈良市で「ちょうちょの種類から環境を知ろう」ということをしているのですが、リストアップされているちょうちょを見ると、「ここは草原があって、湿地があって、ちょっと森があって」というイメージがわきます。「環境のものさし」と言うのはそういうことです。

質問4

お客さま:
蝶のお話、楽しませていただきました。最近、九州などのあたたかい地域で見られる蝶を近畿で見かけるようになりました。このまま温暖化していくと日本にいる寒い場所で飛んでいる蝶がいなくなるのではと心配です。大丈夫でしょうか。

道端さん:
例えば、ナガサキアゲハとかだと思いますが、なまえのとおり、昔は長崎までしかいなかったのがいまは大阪とかたぶん名古屋くらいでもいると思いますが、北上しています。同じようにイシガケチョウという美しい蝶も、昔は僕たちの近所にはいなかったけどいま、生駒山にいます。だからアサギマダラもそうですけど、温暖化は生き物からいうと当たり前くらいわかりやすいことです。「大丈夫でしょうか」と言っていただきましたが、どうできるものかというのもあって、ただ、昔から寒い時代がきたり、あたたかい時代がきたりというのは確かにあるはずで、そう思うとちょうちょは移動できるからまだいいと思います。暑くなりすぎたら北上しますし、寒くなったら降りてくるというのがあると思いますが、植物がその速度に追いつかなくなるだろうと思っています。そういう意味で植物の方が心配です。すみません。無力すぎて「大丈夫ですか」と言われて「大丈夫です」とは言えない僕がいます。

質問5

お客さま:
今日、キットを買わせていただきました。いま、幼虫でこの冬の寒さを越していきますが、季節がそれぞれ違うのでどのように育っていくのかなと。私はいままでさなぎをよく見てきて、アサギマダラではありませんが自分でも育てています。飼育箱でさなぎから生まれてきた蝶を見る瞬間の喜びがいつも私の中にあって、育てるのは楽しいです。

道端さん:
さなぎから育てるのが好きなのですね。

お客さま:
そう、出会うことが楽しいのです。いろいろな方たちに喜びを持った暮らしができるようなメッセージを何らかの形で伝えていきたいという思いが私には絶えずあります。道端さんが蝶を通してこのようなことをされているとうかがい、素晴らしいことだと思って今日、初めてうかがいました。話がそれましたが、季節は大丈夫なのでしょうか。

道端さん:
いまから飼育し始めて、ということですか。野生ではいま、本州では幼虫の状態です。家の中で飼育すると、暖かい部屋ですと早く成長します。場合によっては冬に大人になることがあるかもしれませんが、大人の飼育の仕方もあります。具体的にいうと、ストローがクルクルとなっているところをチューと伸ばしてカルピスを薄めた液につけたら飲みだします。成虫を10羽持ってきていますが、あれはそうやって毎日エサを与えています。それで春までは充分飼育できるので、暖かくなるまで室内で飼育していただいて、暖かくなったら放してあげます。

お客さま:
私としては舞い戻ってきてほしいのです。たまたまご近所の方がフジバカマをくださって植えていますが、そういう食草があったらまたやってきますか。

道端さん:
そう願ってのキットでもあるので、本人はやってこないですが、命をつないでいったものが帰ってくるだろうと思って生きたら楽しいじゃないですか。

お客さま:
夢がありますね。どうもありがとうございました。

道端さん:
幼虫は嫌いですか。さなぎだけを集められるのですか。

お客さま:
いろいろなものをいままでしてきました。

道端さん:
僕とはまた違う好きの指向です。それぞれ好きなポイントがあるのですが、これが重要です。

お客さま:
アサギマダラはこの色に惹かれました。

道端さん:
さなぎを探すのはむずかしくないですか。

お客さま:
蝶から育てて飼育箱の中でさなぎになります。

道端さん:
大人の蝶からですか。

お客さま:
はい。アゲハとかですけど。

道端さん:
成虫に卵を産ませてということですか。

お客さま:
育てて、さなぎになって、ひと冬越してということをします。

道端さん:
なるほど、わかりました。ありがとうございます。

質問6

お客さま:
初歩的な疑問ですが、2,000kmの旅をするというのはひとつの蝶が2,000km飛ぶのですか。

道端さん:
そうです。

お客さま:
そして2,000km戻っていくのですか。

道端さん:
いや、2,000km先で確認されているということで、基本的に往復はしません。例えば東北で放したものが沖縄で発見されたり、富士山で放したものが南の方で発見されたり、反対に沖縄で放したものが本州で発見されたりとかもあります。それは個体そのものをマジックで管理しているのでわかります。

お客さま:
2,000kmはどれくらいの時間をかけて飛んでくるのでしょうか。

道端さん:
まちまちですけど、正確に言うと2,400kmくらいが最長記録で、3日くらいで行く時もあります。ただ、あちこち寄りながら行っているかもしれないのでドローンであとをつけてほしいです。3日の場合はドバーンと行っていると思いますが、いろいろな所に立ち寄ったりして行く蝶もいるので、60日後に確認された例もあります。成虫は1年以上は生きないので年を越してはいないです。数カ月後の場合もあるし、数日後の場合もあるという感じです。

お客さま:
天候には左右されないのですか。

道端さん:
左右されると思います。僕がちょうちょを捕りに行っても、雨の日はほとんど飛んでいません。雨の時、ちょうちょは基本的にジーっとしています。気温が低い時も動けないのでジーっとしています。

お客さま:
それだけ時間がかかるということですね。

道端さん:
ちょうちょにとってはタイムロスになります。「早く南に行かないと」という時、晴れてうららかな日にフワーっと行きたくなるでしょうね。

お客さま:
今年のように天候不順が続いたりすると、やっぱり毎年と違う動きがあるのですか。

道端さん:
ネットワークの情報がメーリングリストで入ってきます。年によって入ってくる情報は違いますが、不思議とすごく違うというのはないです。例えば、メモを見たら去年の10月は今年にくらべて雨ばかりでしたが同じように来ていて、異常というほどのことはないです。台風であろうが何であろうが、どこに避難しているのか不思議ですが、なんとかしてしのいでいるのでしょう。

お客さま:
日本に飛んでくるのは台湾あたりからが中心ですか。アメリカから来ることはないですか。

「#スライド」

道端さん:
アメリカにはいないです。基本的に日本とアジアの東側が分布域です。アジアでいうと、ヒマラヤとか山岳地帯の蝶になります。高山蝶と言いますが、アジアでは高い山にしかいない蝶が日本を通る場合には全国を通ります。寒いのにも弱いけど暑いのにも弱いです。オレンジのはオオカバマダラという蝶です。これはオセアニアにもいて、オーストラリアあたりとアメリカにいますが、この蝶がアメリカから飛んでくることはほぼないです。(アサギマダラは)いままで台湾、香港、中国の東側から飛んできた記録があります。

お客さま:
それは大陸や気流の関係ですか。

道端さん:
そうです。全部自力ではしんどいと思うので、風をつかまえてやってきて帰ります。

質問7

お客さま:
アサギマダラがさなぎから成虫になりやすい時間はいつくらいかわかりますか。

道端さん:
むずかしい質問です。先ほどのさなぎでいうと模様が見えてきていますが、この次に真っ黒になります。

アサギマダラがさなぎから成虫になるところ

「#スライド」

道端さん:
これは入れ墨みたいに模様がちょっと入ってきています。羽の筋が入っているのがわかりますか。この次になるのがこんな状態です。

「#スライド」

道端さん:
真っ黒です。「死んだ」と思う人がいますがこれが正解で、こうなった1日後くらいと僕は言っています。こうなってから1日くらいは目を離さずにがんばってもらえたら見えると思います。

「#スライド」

道端さん:
そして、ぶら下がった状態にきれいになってからは4時間くらいあるので、この写真は撮りやすいです。

「#スライド」

道端さん:
こうやってぶら下がって羽がくしゃくしゃなのは5分くらいです。ピンとなってから4時間くらいは乾かしているので、僕のキットを試していただけたらこの姿は見ていただけると思います。今日買っていただいたお客さまは、いつでも「どうするの? 」と聞いていただいて大丈夫なので僕に連絡してください。

フェリシモ:
ありがとうございます。

道端さん:
何年生ですか。

お客さま:
3年生。

道端さん:
僕の娘は2年生です。

質問8

お客さま:
先ほど自然調査のお仕事をされている時に各地を回っていたとおっしゃっていましたが、その土地に根づいてやる農業とかではない自然の仕事は、自然調査に限らず地方を転々とする仕事が多いですか。僕は農学部に進学しようと思っている学生ですが、生物系や森林系に進んだ時に将来、定住しない職業が多いのかと思ったのですがいかがですか。

道端さん:
調査の仕事は、ということですか。

お客さま:
調査の仕事に限らずですが、いや、たぶん調査になると思います。

道端さん:
森林の調査の仕事ということですか。

お客さま:
それも含めて、生態や自然のフィールドワークの職業があったとしたら、それはあまり定住しないのかと思ったのですが。

道端さん:
定住しないと言っても本当に家がないのではなくて、僕も家には毎週のように帰ってきます。おっしゃっているのは、農業は基本的に同じ場所でずっとやっていますから調査系の仕事、森林調査とかにそういうのが多いということですか。いま、農学部の学生さんということで、例えばどんな仕事に就こうと思われているのですか。

お客さま:
それを「はよ決めなさい」と言われていて、僕もそちらが好きなのはわかったので。

道端さん:
フィールドが好きなのですね。

お客さま:
物作りに行ったら病んでしまうのではないかと。なので、農学部に行くことははっきりと決まっているのですが、そうなった時に研究職に行って試験管を振っているのもいやなのです。

道端さん:
僕の行った道です。

お客さま:
そうです。それで、先ほどおっしゃっていたように「教職員になるか、研究職になるか」みたいなので「うーん」という。

道端さん:
時代は変わってもみんな同じことを考えるのですね。

お客さま:
同じような悩みを持っていて。

道端さん:
それで言うと、僕は前の仕事を否定した訳ではなくて、僕がやめようがその調査の仕事はずっとあります。ほかの人がフィールド調査に行くだけですし、その調査がないと道路とかはできないのです。結局、誰かがやることになります。その調査は、生物のことが好きなのであれば1回は就いてみてもいい仕事かもしれません。僕はそのことによっていろいろな植物や生き物のことを知れたからキットを開発できました。そのことに関しては、前の仕事をさせていただいたことをすごく感謝しています。1年のうちに普通の人では出られないくらいフィールドにいる時間が長いですし、だからとりあえず好きな作業を目指すのは全然いいと思います。

お客さま:
ありがとうございます。

道端さん:
すみません、ぎくしゃくとして。かみあっていないかもしれないけど、釈然としなかったらまた言ってください。

お客さま:
僕自身、何を聞きたかったのか、最初に聞きたかったのは、例えば結婚されてからいまの仕事を始めたとおっしゃっていましたが、それまでは転々とされていたから安定した生活ではなかったのではないかと思ったのです。転々としていると、例えば持ち家とか生活の上でいろいろ支障が出るのではないかと。

道端さん:
わかりました。僕の伝え方に語弊がありました。転々とするというのは、職を転々としているのではないです。雇い主が国土交通省なので調査というのはすごく安定している仕事です。言うと意外と驚かれますが、市場に出ない仕事で僕の会社は大きい方でしたが、僕が辞める時、社員は1,000人くらいいて、そういう普通のサラリーマンです。だから、前の仕事は安定していないという感じは全然ないです。むしろいまの方が不安定きわまりなくて。環境コンサルタントという業界は割とそんな感じです。そこからフリーランスになると安定していないですけど。フリーランスというのは調査に行く時に安定している会社の人が何人か外にいる人たちを連れて行きますが、調査に呼ばれなくなったら終わりですし安定していないです。どちらを望むかによります。

すみません。答えになっているのか、いないのか、またあとで聞いてください。

質問9

お客さま:
先ほどキットを購入させていただきました。中にふれ合い用の筆が入っていますが、アサギマダラを育てる上で素手で幼虫とふれ合いはしない方がいいでしょうか。私も昆虫が好きでカブトムシをよく育てていたのですが、カブトムシの幼虫のからだのためにできるだけ素手でさわらない方がいいと聞いていたので、土の移しかえをする時は素手でふれないようにしていました。昔からのイメージで、アゲハとかの幼虫は荒いさわり方をしなければ素手でふれても大丈夫だと思っていたのですが、アサギマダラはどうですか。

道端さん:
素手でさわりたいということですね。

お客さま:
そうです。

道端さん:
ハハハ。

お客さま:
小さいうちは素手でふれない方がいいと思っていますが、大きくなったら大丈夫ですか。

道端さん:
2~3cmくらいに大きくなったらさわってもいいと思いますが、人間の手には菌がついているので、基本的に小さいうちはさわらない方がいいというイメージです。大きくなったらさわってもいいと思います。

かわいがってあげてください。

質問10

お客さま:
楽しいお話をありがとうございます。休憩時間にキットを見に行けなかったので、宣伝も含めて簡単にキットの説明をしていただけたらと思います。疑問に思っていることは、幼虫はかなりの勢いで葉っぱを食べますが、キットの状態でエサをどうされているのかがわからないです。

道端さん:
キットの説明をきちんとできていなかったので説明します。この中に幼虫がいま、小さい状態で3匹入っています。この中に入っている緑のものがエサです。都会の人に植物を供給するのはむずかしいと思ったのでエサを開発しました。具体的にいうと、粉末状で入っていて、やり方は書いてありますが、水で溶いて電子レンジでチンしてお茶っぱみたいな感じで使います。それで、ここにおいておくと幼虫が食べに来ます。さなぎになる時は、たいていの幼虫は容器のふたにつきます。それはアサギマダラがぶら下がり型のさなぎだからです。でも、たまに地面で転がってさなぎになる時があります。そういうさなぎは上に留めてあげないと、羽化して成虫になった時に羽を伸ばす空間がなくてくしゃくしゃのまま固まってしまいます。そういうことは「空から蝶」のホームページやFacebookを見ていただいたらありますし、質問を書いていただいたらその都度答えます。箕面のこどもの森学園の人たちもひもでつるしてぶら下げて羽化しました。それができないと羽がくしゃくしゃのまま固まるという悲劇的な状況になります。ちょうちょで羽が開かないのは生き物的にも見ていてすごく切ないです。だからちゃんと伸ばして放していただきたいと思います。

大人に早くなりすぎた場合は、チュルチュルのところを伸ばしてエサをやります。これ、あとで見てください。いちばんかわいいサイズです。見本で前に置いてあるのは小さすぎる幼虫と大きすぎる幼虫を持ってきていますが、いちばんかわいいサイズがこれです。

キットの説明をする道端さん

道端さん:
いま、5年目くらいで毎年改善しないとだめなのですが、最初は生まれたてのあの小さいケースに入っている2mmくらいの幼虫でした。結構むずかしいのでこちらで少し育ててからということになって、このくらいのサイズでしています。エサは実験もして3匹成長できる分が入っているので大丈夫です。これは幼虫をめでるための筆で、掃除にも使えます。ちょうちょの幼虫は糸を吐くので自分の糸で絡まりそうになっている時はきれいにします。あと、フンが混ざってくるので、たまってきたら時々掃除をしないといけません。エサは緑色ですがフンは真っ黒でコロンとしているのでわかります。この小さいのがあの蝶になるってすごいことだと思いませんか。いまでも羽化する時にポッと出てくるのを見たら感動します。娘も4歳でしたが、ある日、さなぎからポっとぶら下がっているのを見てびっくりしたと言っていました。

質問11

お客さま:
「虫とりのむこうがわ」は2,980円ですが安すぎるのではないかと考えます。もう少し価格を値上げしたらいかがでしょうか。

それから、好きなことを仕事にすることは素晴らしいと思うのですが、現金収入を増やす方法は何か別のことを考えておられますか。

道端さん:
するどい。これね、値段をつける時に2万円と言ってもいいし1,000円と言ってもいいし、基準がないからわからなくてすごく迷いました。僕も本当はもっと高くしたいのですが、普通のご家庭でも買える価格を考えて現在の設定にしました。

後者の質問でいうと、当然、僕はまだこれだけでは生きられませんので、ほかの仕事をしていたのですが、いまはほかの仕事でも同じ方向に向かっている仕事をしています。具体的には、起業塾の時の先輩の会社、エーゼロでウナギの養殖をしています。ウナギも絶滅危惧種ですが「食べるな」というのも何か違うと思っていて、そこではウナギを放流して調査することもしています。ニュアンスがむずかしいのですが、絶滅危惧種に対して「食べるな」と言うのか、そうではなく守る取り組みをしながら食べるのか、何がいいのかという結論はわからないですが、いまはそれでやるのがいちばんいいと思い、共生はむずかしいですが、そういうこともしています。教師もそうですが、もともとは全然同じ向きを向いていない仕事をしながらこれを続けていたのですが、どうせなら同じ方向に向かってやらないともったいないと思っています。

もうひとつ思うのは、これだけで食べられるようになって、最終的に作れるようになったとしても、こういうものは何万個も売っていいというものではない感じがします。そういうイメージもあって、「これだけしていたらあかんやろな」という感じは自分の中でしています。そう考えると、高くしたいけれども、これくらいでまずは知っていただけるのがいいかなと思っています。

フェリシモ:
ありがとうございます。では道端さん、このあたりでそろそろ例の件をお願いできますでしょうか。

道端さん:
せっかくなのでみなさんからちょうちょを放していただいて、飛ぶところを見ていただこうと思って10匹持ってきました。10匹とも生きているかどうか少し心配ですが、僕が手のひらに置いていきますので、放したいという人、お子さまとか特にこの蝶にさわってください。では真ん中にみなさん寄っていただいて、改めてこの蝶の美しさを知ってもらって放します。網を持ってきていますので、あとで回収しますので大丈夫です。では、やりましょう。

「#蝶を手のひらに置いていく」

道端さん:
こう持って、手のひらに置いてからみんなで放しましょうか。意外と粉がつかないの、わかりますか。羽が青いの、わかりますか。これが浅葱色と言います。空みたいに青いでしょう、これが好きなのです。こう手のひらに置いて、手を上に上げて「せーの」で持っている方を放します。せーの、はい。

「#蝶を放す」

お客さま:
わー。

道端さん:
飛ばない? ちょっと揺らしてあげて。ほら、時々ヒラーってなるでしょう。

フェリシモ:
すごくきれい。

道端さん:
基本的に明かりの方に寄っていこうとします。窓があれば窓の方にバーっと寄っていきます。

お客さま:
明るいところに飛んでいくのは昆虫の習性ですか。

道端さん:
この蝶の習性です。電灯や窓があれば窓に。飛んでいる途中、降りていく時とか時々フーっとなるでしょう。あれが滑空する様子をちょっと見せています。最終的には1回集めて、また見せなければいけないので、その時見せたらもう放します。

お客さま:
集められるのですか。

道端さん:
それがいま、不安ですけど。網がまあまあ長いのでいけると思うのですが、子どもたちに網を見せましょうか。

「#網を見せる。」

フェリシモ:
道端さん、ありがとうございました。

「#拍手」

フェリシモ:
まもなく講演終了の時刻が迫っておりますので、以上で質問のお時間を終了とさせていただきます。たくさんのご質問をいただきありがとうございました。最後に道端さんに神戸学校を代表して質問をさせていただきます。道端さんが一生をかけてやりとげたい夢について教えていただけますでしょうか。

道端さん:
会社を辞める時に人と自然をつなぎたいと思ったのでこういう活動をしていますが、人々がまず自然を楽しんでくれることです。10月にアサギマダラが来るのはほかの国ではなかなかないことなので、それをきっかけにいろいろな楽しみを知っていただきたいです。アサギマダラ以外にも「この時期にはこの花がここで咲いて」という楽しみは何100個もあります。サクラが4月に咲くのはみんなうれしいですが、そういうのがたくさんあったら生きていて豊かな感じがして、いつも大げさに言いますが「今日も生き抜いてよかった」と思います。「これがまたここにあった」というのは楽しいです。

そして、生き物があれだけ絶滅していくのは切ないと思うのです。どうしていいかわからない中で、僕は見て見ぬふりをできない立場にいたというか、たまたまいることになってしまったのでこうなっているのですが、どうしたらいいかということでいま、都市部にキットのように自然とふれ合える場所を連れてくる活動をしています。いまでは自然の中にそう毎日は行けないので、そういう活動をまずしていきたいと思っています。

ウナギについてもまだ解決策はありません。やっぱり食べないというのはむずかしくて、生き物と共存するのは食べないということではないと思っています。利用しているけど共存しているというか、そのサイクルの中に全部入ってしまっているというか、いまいる岡山のエーゼロでは自然のつながりを1個1個つなぎなおしています。シカが増えて道に出てくるのですが、そのままだとシカは殺されて捨てられるだけです。それはあまりにも切ないので肉にして加工します。皮は捨てていたのですが、革職人の男の子が村に住みついてそれをかばんにしていく作業を始めました。

僕たちは未来の里山と言っていますが、フェリシモの方とも何名か里山の会で飲みながら里山について語っていますが、新しい技術も使いながら自然との関係を再構築できると思っています。そのひとつにこのアサギマダラがなれればいいなと思っていて、少し堅くなりますが、循環的なシステムを作れたらいいなと思っています。

道端さんとの集合写真
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