フェリシモCompany

~ その⑦「床板はがし隊」で聞いた3月11日の話  ~ 【7/10】

■次は床板はがし隊に参加
4日目から、大槌町で作業している「床板はがし隊」に合流することにしました。
僕は大学4年間、建築現場のアルバイトばかりしていたので、今回の建築現場経験者の枠に入れてもらえることになったのです。
ここでは、津波が床上まで浸水されたお宅におじゃまして、バールとハンマーで床板をはがしていく作業がメインです。津波から2ヶ月が経とうとしているのに、家の床下に流れ込んだ泥水はまだ乾いておらず、悪臭を放ち、床板を腐らせていきます。また床上浸水してしまった家の多くはブレーカーがショートしてしまい電気がストップしています。中には水道管などが詰まって水が出ない家も多く存在します。
 
津波で倒壊をまぬがれたとはいえ、実はかなり苦労をされている方もたくさんいらっしゃるという事実を、恥ずかしながらこの現場に来て初めて気づかされました。
我々ボランティアはまず「大工・建築現場経験者から構成される床板はがし隊」と「泥の掻き出し隊」に分けられます。和室など畳の下にある板をバールとハンマーを使って1枚1枚はがして釘が残らないように後処理をします。それが終われば次のお宅へ移動して同じように作業を進めます。
板をはがし終わったお宅には続いて「泥の掻き出し隊」がスコップを持って訪問し、次々と泥を掻きだし石灰で消毒をするところまでが一連の流れになります。
まず最初に僕たちの班がお伺いしたお宅は、57歳の女性が一人で住まれている平屋の家でした。
 「あらーー、みなさんわざわざありがとうございます。ほんとにありがとうございます。」
女性はそんな第一声で僕たちをにこやかに迎え入れてくれたので、少しホッとしました。
サンマ隊でこれまで作業してきた場所はガレキばかりのさら地で、直接の被災者の方と話すような機会はなかったのですが、今回は家主のみなさんは全員津波に遭遇されているため直接お会いすることに少し緊張を覚えていたのです。
メンバーは道具を庭に置かせてもらい、作業する部屋や手順を確認した上で作業に入っていきます。
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バールをハンマーで叩いて釘の頭を掘り起こし、テコの原理を利用して一気に釘を抜いていきます。
経験者や本職の人ばかりなのでどんどん作業は進むのですが、これがかなりのハードワークで、10分もしない間に服が絞れるほどの汗が出てました。
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■女性が話してくれた、3月11日のこと……
3部屋ほどの床板をはがし終わって作業終了となりましたが、庭で休憩している僕たちに、家主の女性が3月11日ことを語ってくれました。
“あんときねぇ 私は海の近くにあるスーパーのレジの仕事してたんだぁ。すごい揺れたもんだからすぐに店ん外出て、一回車乗ってうちに戻ったんよ。そしたら、周りのひとたちが「津波がくっぞーーー!!」って声出しながら山の方に走っていくから私もあわてて車乗って、向こうの山の上のほうに逃げたんだぁ。
私は足が悪いもんだからさぁ、あんとき車乗ってなかったら巻き込まれてたかもしんねぇ。山の上でね、津波がいろんなものを巻き込んでいくのをただ見てるしかなかったんよ。
そしたら今度は遠くで火の手があがってねぇ。ガソリンスタンドで油に火がついたもんだから、水の上で火が燃えてるような格好になってね、それが流される家のプロパンガスに次から次へと引火してねぇ。
ボーーーーン!ボーーーーーン!!ってものすんごい火柱あげて爆発しながらこっちのほうに近づいてくるんよ!日が暮れた後に山まで火が来ちゃったもんだから今度は山火事が始まってねぇ。
山の上に避難した人を自衛隊のヘリコプターでまた別の山まで運んでもらって、なんとかその辺にいた人たちはみんな助かったんよ。
今は避難所やら福祉センターやらで、食べもんにしろ衣類にしろ何かの配給があるって聞いたら、ひとまず並びに行ってもらうようにしてるんよ。
まさかぁ、こんなことになるとはねぇ、、、が残っただけでもほんと良かったと思わんとねぇ。
でもみなさん、遠いとこからよう来てくださった・・・。ありがとうねぇ。ほんとにありがとうねぇ。ありがとう。。。”
その後、女性は家の中に入って、小さなかごを持って戻ってきました。
そこには小さなチョコレートが10個ほど入っています。
「これ、みんなで食べてくださいな。」
慌てて断ろうとしましたがどうしてもみなさんで食べてほしいと言われたのでありがたくいただくことにしました。こみ上げてくるものを必死でこらえて食べたそのチョコは、ほんの少し塩辛く感じました。
(次回に続く)
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