
― フェリシモの商品・サービス企画の根底にあるサステナビリティ・ストーリー ―
事業性、独創性、社会性が交わり合い生み出されるフェリシモならではの商品やサービス。この連載では「社会性」にフォーカスし、プロジェクト担当者たちの想いをお伝えしています。
後編では、日本の伝統を暮らしに取り入れることで生まれる豊かさや、産地や作り手に寄せるお二人の思いにさらに迫ります。伝統を今の生活へとつなぎ直し、未来へ受け継いでいくために、エル:メントが大切にしていることをお伝えします。
話し手:豊田尚子さん、蜂谷華穂さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
【 インタビュー前編はこちら 】
手仕事のある暮らしが日常にくれる豊かさ
伝統が息づく商品を、日々の暮らしの中にも取り入れているというお二人。
そうしたものが身近にあることで、どのような豊かさが生まれるのでしょうか。

豊田さんは、身のまわりに“手仕事のもの”があることで、暮らしのなかに余白が生まれるような気がするといいます。
豊田:グラス、風鈴、アクセサリーなど……ちょっとした手づくりのものがあることで、暮らしのなかに、ふと立ち止まる瞬間が増えているような気がします。そして、その心地よさを家族と共有できることも魅力だと感じます。
自身の楽しみにとどまらず、その思いはお子さんにも受け継がれているようです。
豊田:娘が、切子細工について調べた時期があったんです。生活のなかに、素敵なものがあって、使うことで興味を持ち技術を知ることで、次の世代にも知ってもらえるきっかけになっていると感じました。
伝統が息づく商品が身近にあることが、次の世代にとっての興味や学びの入り口にもなることが、豊田さんの言葉からうかがえます。
好きになった土地や人から、ものづくりが始まる

ご自身が企画した西陣織の技術から生まれた京織(R)のポーチを普段から使っているという蜂谷さんは、それを持つことで、「自分の感覚が整う」ような気がするといいます。
蜂谷:日本には、精神性に紐づくような伝統様式が数々あります。縁起や繁栄を願うものに美意識を宿す心意気。それらにふれることで、審美眼を養っている感覚です。日本の文化っていいなぁって思います。
そうした感覚を呼び起こしてくれるものを日常的に使っていると、自分のセンスに少し自信が持てるような気がすると、蜂谷さんは話します。その実感はとてもささやかなものだと言いながらも、日々の暮らしに小さな張りを与えてくれるものでもあるようです。
蜂谷:ちょっとだけ背筋が伸びたり、旅先で素敵なものに出会ってうれしくなったり。本当に些細なことなんですけど、そういうところで豊かさをもらっている気がします。

また、お二人のものづくりへの姿勢には、素材や技術だけでなく、作り手への愛情も強く宿っています。
蜂谷:豊田さんは、たくさんの工房さんを訪問されていて、ぜひここにお願いしたいという気持ちがいつも強くあって。
好きなものを知り、その背景にいる人に会い、その出会いがまた商品になる。お二人の仕事には、そうした個人的な熱量が宿っています。

今の生活者に届くかたちへ、伝統を再解釈する

お二人が実際に伝統産業の現場を訪れていて感じる課題は、職人の減少という一言ではととても片づけられません。
私たちの生活のありようが変化するなかで、昔から作られてきたものが、そのままでは今の生活になじみにくいという現実もあります。
だからこそ、今の私たちの生活においてどうすれば引き継げるのかを常に探りながらエル:メントの活動は展開されています。
豊田:着物を着る人も限られているし、神社仏閣の装飾品だってそのまま使う人はいませんよね。ただ同じものを作り続けていても、成り立たなくなっていくので、そこに新たな視点を取り入れることが必要だと思うんです。

また、ほとんどの産地では分業制が成り立っているため、そのどこかの工程が減ることでも、全体が立ちゆかなくなる難しさがあります。
蜂谷:分業しているのが伝統工芸・産業の特徴で、そのどこかが一つでも事業が縮小してしまうと、産地全体が一気にシュリンク(縮小)していく傾向があります。
そんななかで、フェリシモができることの一つは、伝統を今の暮らしへと翻訳し、用途の入口を広げること。
蜂谷:ただ企画をしてものを売るという役割だけではなく、私たちなりの解釈で、素材を生かしたり、新たな機能を持たせたり。再解釈してものづくりに落とし込むことで、ディレクション的な役割を果たすことも、フェリシモの使命だと思っています。
産地の技術や誇りに敬意を払いながら、今の生活者の感覚とつなぐ役割。
ものづくりや基金を通して、その“間”に立つことこそ、エル:メントらしい伝統との向き合い方なのです。
知ること、訪れることから未来はひらかれる
お二人の話を聞いていると、日本の伝統を暮らしに取り入れることは、文化を守るだけでなく、自分自身の感覚を豊かにしてくれて、その用途を広げることで日本特有の美しく豊かな文化を、子の世代、孫の世代へと継承していく未来にもつながっていくのだと感じます。
今後は、さらに多様な産地と関わっていきたいこと、また、この基金をエル:メントだけでなく会社全体へ広げていきたいと聞かせてくれました。

蜂谷:社内のプランナーも、知らず知らずに伝統産業のものを扱っていたりするんですね。だから、フェリシモのいろいろなブランドがともにアクションを起こしていけたらなと。
基金を商品に付けることで、産地とお客さまのあいだに、買ったあとも続いていく関係が生まれます。そして、知ることが産地を訪れることにつながり、さらには産地で働いてみたい、といった新たな出会いにもつながっていくかもしれません。

豊田:産地では、ものづくりの現場に人を呼び込むイベントや、期間限定で工房を開放するような取り組みも行われています。そうした場での出会いが、「やってみたい」と思うきっかけになり次世代の職人を育てていく。そうした可能性は充分あると思います。
蜂谷:まずは、日本にはこんなにも素敵な伝統的なものがあるのだということを、若い世代も含めて、もっと知ってもらいたいと思っています。
暮らしに取り入れることが、産地や技術との距離を縮めるきっかけになる。そしてそこから、次の人や次の時代へつながっていく。
ニッポン伝統応援基金は、そんな循環を少しずつ育てていこうとする取り組みなのかもしれません。

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