フェリシモCompany60th

伝統工芸を、今の暮らしへ。日々の心地よさを提案するel:mentの「ニッポン伝統応援基金」と、産地の未来をつなぐものづくり ~el:mentプランナーにインタビュー~【前編】

蜂谷華穂さんと豊田尚子さん

― フェリシモの商品・サービス企画の根底にあるサステナビリティ・ストーリー ―

事業性、独創性、社会性が重なり合い生み出されるフェリシモならではの商品やサービス。
この連載では「社会性」にフォーカスし、プロジェクト担当者たちの想いをお伝えしています。

今回ご紹介するのは、フェリシモが商品を通して、日本各地の伝統ある産業や工芸、文化を応援するために立ち上げた「ニッポン伝統応援基金」です。
この基金が目指すのは、伝統を守るだけでなく、現代の暮らしに寄り添いながら、変化を重ねて受け継がれていくあり方も応援していくこと。
その中心を担うのが、「ありのままの自分にすっとなじむ心地よさ」をコンセプトにものづくりを続けてきたブランド「el:ment」(以下、エル:メント)。素材や背景にある物語、日々の暮らしになじむ美しさを大切にし、産地に足を運びながら商品を生み出してきました。
エル:メントが考える“心地よさ”は、自分のためだけのものではありません。自分にとって心地よい選択が、まわりの人や社会のうれしさにもつながっていく。そんなブランドの思想が、「ニッポン伝統応援基金」にも息づいています。
ニッポン伝統応援基金に込めた思いとともに、日本の伝統工芸の現状と未来について、プランナーの豊田さんと蜂谷さんにお話を伺いました。

話し手:豊田尚子さん、蜂谷華穂さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局

伝統を、今の暮らしへとつなぐために

2026年6月に始まったニッポン伝統応援基金は、日本各地で受け継がれてきた伝統ある工芸や文化、産業の発展や次世代継承者の育成などを応援するための基金です。

フェリシモではこれまでも、日本の伝統工芸の技術を生かした商品開発や日本伝統生活文化基金付きの「日本の美しいものコレクション」商品などを通じて古き良き日本の文化の継承と再生を応援してきました。
しかし、時代の流れのなかで、伝統を守るだけではなく、いかに今の暮らしの中で使いやすいものへと変換し、生活に根付かせていくか、という視点もまた求められるようになってきました。

そうしたものづくりを手がけてきたのが、エル:メントです。日本に息づく伝統の価値を受け継いでいくため、産地に根付いた織物や陶磁器など、日本ならではの技術や素材を取り入れながら、日常に落とし込んだものづくりを続けてきました。

紬織りの人間国宝・染織家のコレクション「el:ment×アトリエシムラ 染織家・志村ふくみさんのテキスタイル まとえる美術品プリントワンピース」(左)、兵庫県で200年以上続く播州織「el:ment×織馬鹿 星空に想いを馳せる 播州ジャカード織りコットン100%大判ストールの会」など、さまざまな伝統技術を取り入れた商品を展開しています。
紬織りの人間国宝・染織家のコレクション「el:ment×アトリエシムラ 染織家・志村ふくみさんのテキスタイル まとえる美術品プリントワンピース」(左)、兵庫県で200年以上続く播州織「el :ment×織馬鹿 星空に想いを馳せる 播州ジャカード織りコットン100%大判ストールの会」など、さまざまな伝統技術を取り入れた商品を展開しています。

長い時間をかけて磨かれ、守られてきた伝統の美しさに魅了されたプランナーたちが、全国各地を巡りながら職人や技術と出会い、その産地を好きになることからものづくりが始まっていく。エル:メントでは、そんなストーリーに満ちた商品が数多く生まれています。

そうした思いを持ったエル:メントが中心となって育てていくニッポン伝統応援基金は、工芸や産業にとどまらず、広く文化や芸能まで視野に入れている点が特徴です。

基金の背景にある、産地の切実な声

エル:メントでは、伝統産業の産地を訪ね、素材や技術、職人との出会いを積み重ねながら商品をつくってきました。
そのなかで、プランナーが産地で何度も耳にしてきたのが、後継者不足や認知を広げたくても広げ方がわからないなどといった切実な声でした。

蜂谷:行く先々で、「後継者がいなくてきびしい」「最盛期には40人いた職人が今では5人」などといった話をいくつもお聞してきました。

蜂谷さん

右肩下がりにどんどん職人が減っていく(*1)一方で、新たなものづくりに挑戦をしたり、ワークショップなどのイベントを行い集客をしたり、「産地の方々がすごくがんばっていらっしゃる」姿を見てきたという蜂谷さんと豊田さん。

蜂谷:企業として、お買い物だけでは手が届かないところでの活動への応援が必要だと感じ、基金を創設しました。

また、エル:メントのお客さまは、「自分にとっての心地よさ」を大切にする方がたくさんいらっしゃいます。

蜂谷:自分だけではなく、周りも、ひいては社会もうれしい状態こそが心地いいと考えていらっしゃる方が多いのではないかと思うんです。だから、お買い物をすることでほかの人もしあわせの輪に巻き込んでいけるような状態をつくれたらと思い描いています。

お買い物をする人と作り手との距離をより身近にして、関係性を育てていく。
エル:メントがコツコツと実現してきたそうしたアクションが基金を通してさらに広がろうとしています。

兵庫県の播州織工房 織馬鹿(おりばか)さんを取材させていただいた際の様子。
兵庫県の播州織工房 織馬鹿(おりばか)さんを取材させていただいた際の様子。200年以上続く播州織に、新たな魅力を吹き込んでおられる工房「織馬鹿」さんと「el:ment×織馬鹿 星空に想いを馳せる 播州ジャカード織りコットン100%大判ストールの会」をともにつくりました。

*1 伝統的工芸品に関する「経済産業省説明資料」P4を参照

工芸の魅力を、日常の装いへ

ニッポン伝統応援基金が付いた商品の第一弾として、2026年6月に登場するのが、伊万里焼の文様を落とし込んだ「el:ment 有田焼の手筆の趣を愉しむ コクーンシルエットワンピース〈花唐草文〉」と、Web限定で販売する「el:ment 有田焼の職人の手筆の趣 江戸の形を今に伝えた 染付のおてしょ皿」、また、お寺や神社仏閣を彩る金属製の装飾、錺(かざり)金具を用いた「el:ment 神社仏閣でいにしえより継がれる錺(かざり)金具で作る軽やかイヤアクセの会」です。

まだ訪れたことのない土地は、どこか遠い存在に感じられるもの。だからまずは、伊万里焼の素敵さにふれる入り口になればと、陶磁器好きの蜂谷さんが企画したのがこのワンピースです。

蜂谷:同じ産地であっても、工房さんによって絵付けの雰囲気やタッチが異なるんです。この違いも陶磁器の魅力の一つなので、職人さんの作風を忠実に再現することで、そのおもしろさを感じてもらえたらなと。

実際の器を工房から送ってもらい、撮影してデータ化。職人が手描きした絵のタッチや濃淡まで、そのまま再現することにこだわりました。
実際の器を工房から送ってもらい、撮影してデータ化。職人が手描きした絵のタッチや濃淡まで、そのまま再現することにこだわりました。

そしてもう一つが、Web限定で販売する「el:ment 有田焼の職人の手筆の趣 江戸の形を今に伝えた 染付のおてしょ皿【WEB限定アイテム】」です。古い器のかたちを復刻し、新たな絵付けを施したもので、6ヵ月にわたり毎月異なる柄が届きます。

おてしょ皿とは、豆皿とも呼ばれる小さなお皿のこと。室町時代にはすでに使われていたとされ、もとは京都の朝廷の食卓で、塩を手元に添えるための器として用いられていたのが始まりなのだとか。
おてしょ皿とは、豆皿とも呼ばれる小さなお皿のこと。室町時代にはすでに使われていたとされ、もとは京都の朝廷の食卓で、塩を手元に添えるための器として用いられていたのが始まりなのだとか。
el:ment 神社仏閣でいにしえより継がれる錺(かざり)金具で作る軽やかイヤアクセの会
el:ment 神社仏閣でいにしえより継がれる錺(かざり)金具で作る軽やかイヤアクセの会」は、お寺や神社仏閣を彩る装飾や保護に用いられてきた、錺金具を活かして。錺金具を製造されているのは、京都の錺金具竹内(株式会社竹内)さん。昭和42年の設立以来、手彫りによる原版の制作を大切にされています。今回は、職人さんが手彫りで掘った原型をもとに機械で仕上げました。

さらに7月には、「el:ment いにしえより受け継がれる着物の文様 伊勢型紙をまとうコットン混ワンピース 」や、「el:ment いにしえより受け継がれる着物の文様 伊勢型紙が揺れるステンレスイヤアクセの会」といった、日常ではなかなかふれる機会の少ない工芸の美しい技術を取り入れたアイテムも発売予定です。

el:ment いにしえより受け継がれる着物の文様 伊勢型紙をまとうコットン混ワンピースとel:ment いにしえより受け継がれる着物の文様 伊勢型紙が揺れるステンレスイヤアクセの会
伊勢型紙とは、着物に図柄を染色するために文様を手彫りで彫り抜いた型紙のことで、伊勢の地(現在の三重県鈴鹿市)で発展。大正13年創業以来、意匠の充実や型紙の製造に努め、日本の文化を受け継いできた、(株)オコシ型紙商店さんで、数ある文様の中からプランナーが厳選した縁起のよい文様をワンピースやイヤリングに展開しています。

お二人の企画の起点は、旅先での出会いだったり、産地とのつながりだったり、現地での“発掘”だったりとさまざまです。

蜂谷:私たちが個人的に旅先で興味を持ったものからアプローチすることもありますし、ご縁があって出会った職人さんや団体さんとのつながりから、さらに掘り下げていくこともあります。

今の暮らしに無理なく取り入れられるかたちへと落とし込むプロセスに、プランナーたちの思考と工夫が息づいています。

一過性ではなく、産地の未来につなげるために

第一弾の支援先に選ばれたのは、福井県 越前鯖江地域(福井県鯖江市・越前市・越前町)の観光地域づくり法人である「一般社団法人SOE」と、佐賀県内の伝統工芸や伝統産業を束ねる「ピースクラフツSAGA」です。

福井については、蜂谷さん自身が現地を訪れ、ワークショップの開催や若手支援など、産地一体となって活動を展開する姿を目の当たりにしたことが、応援の後押しになったといいます。

蜂谷:実際に伺った時に、商品づくりだけでは届かない産業観光のまちづくりにもしっかり取り組まれていて、ぜひ応援したいと思ったんです。

蜂谷さんと豊田さん。

エル:メントのものづくりには、お客さまが産地を訪れ、その土地を好きになるきっかけになればという思いも込められています。佐賀を選んだ背景にも、九州という土地に足を運ぶ入り口になればという願いがありました。

蜂谷:関西から九州は遠く感じられますが、知らないから行かないという側面もあると思うんです。この機会に佐賀のすばらしさを知っていただいて、足を運ぶきっかけになったらうれしいですね。

基金を通して目指すのは、単発の支援ではなく、産地全体で人が育ち、次の担い手や新たな可能性へとつながる循環を後押しすること。この基金は、“応援”であると同時に、“未来への投資”でもあるのかもしれません。

後編では、お二人が工芸品や産地に寄せる思い、そして伝統を未来へつないでいくために大切にしていることについて、さらに詳しくお聞きします。

後半へつづく

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