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そもそも「推し」とは?幅広いジャンルに存在する「推し」の概念について考えてみた

文具好き、マンガ好き、資格取得マニアというコレクター気質満載のフリーライター、みのうかなこです。日々、こっそり推し活を楽しみながら、推しキャラへの愛を貫いています。

推し活に励む大人女子にとって、「推し」は人生そのもの。といっても、「推し」の対象は幅広く、アニメや漫画、ゲーム、宝塚に2.5次元、アイドル、ジャニーズにディズニーなどなど。ほかにも、歴史や鉄道、スポーツ界にも沼が存在し、細かく挙げていくとキリがないほど。それぞれが奇跡的な「推し」との出会いを果たし、いつしか沼にハマるわけですが、ジャンルによって推し活の内容も変わるし、使われる用語が違うこともあります。それでも、「推し」という言葉から伝わるイメージはほぼ同じなのはなぜなのでしょう。そもそも、「推し」って、なんなのでしょうか……。

日常的に「推し」という言葉を使っていたけれど、突き詰めて考えてみるとかなり奥深い「推し」という表現。あらためてその言葉の使い方を確認しながら、「推し」の使い方について一緒に考えてみましょう。

「推し」とは

考えれば考えるほど「推し」とは不思議な言葉で、「○○を推す」と言うときの主語はファン本人のはずなのに、実際に使われている「推し」は“対象”を表すものに変化しています。

デジタル大辞泉(小学館)によると「推し」とは『他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物』とのこと。

もともとは「推薦する」という意味の「推す」であり、「推し(ている)」という現在進行形表現になったのではないかと考えられます。つまり、単なる「好き」を超えて、人に推薦したい、紹介したい、薦めたいと感じるような対象を指しているのが「推し」と言えるでしょう。

「推し」という言葉が広がったのは、アイドルオタが使い出したことが始まり。グループのなかから最も好きな対象を「一推しメンバー」と表現するようになり、それが短縮化されて「推しメン」に。さらに簡潔化して定着したのが「推し」です。

以前には、「推し」のような意味合いで「嫁」と呼ぶ人もいましたが、今では「推し」が主流ですね。婚姻をイメージさせる「嫁」という表現よりも、男女や人外の区別がなく、どんなものでも対象となる「推し」という言葉には、多様化した沼をすべて受け入れてくれるような懐の広さを感じてなりません。

どう使う?「推し」が意味するものとは

「推し」の表現が幅広くあるように、「推し」に対する定義も人それぞれ。私は、漫画、アニメオタの部類なので、「推しキャラ」もあれば、「推し作品」もあります。どちらも同じように「推し」と表現するけれど、「推しキャラ=推し作品」になるとは限りませんし、推しキャラは推しキャラとしか言えません。どちらも推しであることには変わりませんが、そこにはまったく違う愛が存在するのです。

単純な「好き」では言い表せない「推し」

「推し」という表現を「好き」に置き換えてみると、なんだか違う気がするのは私だけでしょうか。確かに「好き」であることには間違いありません。でも、もっとそれ以上の、尊さとか美しさとか、高揚感とか……「好き」では言い表せない熱い想いがそこにある気がするのです。

激推しへのほとばしる愛を訴える一方で、二推しや推しのコンビに対して母親のような気持ちになることもよくあります。わが子の成長を願うような気持ちが湧いてくる彼らも、私にとっては「推し」です。同じ「推し」の表現だけれど、そこには相いれない違いがあります。この違いを同好の士は理解してくれるのではないでしょうか。

「有望株」も「推し」

そしてもうひとつ。激推しとまではいかないけれど、これから伸びてきそうな予感がする対象や、好きになりそうな予感がする対象も「推し」と表現することがあります。「推し」の語源が「推薦する」なのですから、「大好き!」とまではいかなくても「ちょっと注目して!」と言いたくなる「推し」も存在するのです。

ひと目ぼれのキャラもいれば、物語が進むにつれてジワジワと心を侵食してくるキャラもいて、それはどちらも等しく「推し」。揺れ動く乙女心のまま、激推しになったり、二推しになったり。早めにツバをつけておこう、というやや不純な動機で注目するキャラも、私にとっては誰かに布教したくなる「推し」の対象です。

対象作品やジャンルを指す「推し」

さまざまなジャンルに推しが存在するなかで、ジャンルそのものに対して「推し」と表現することもあるでしょう。例えば、私の場合、アニメかスポーツかと問われると、断然「アニメ推し」です。ほかにも「ジャニーズ系推し」「ディズニー推し」「宝塚推し」など、ジャンルごとの「推し」も表現のひとつと言えます。

気軽に使ってきた「推し」ですが、細かく見てみると自然と使い分けしていることがわかります。ただ尊いだけでなく、いろんな愛情を丸ごと表現してしまう「推し」。本当に奥深い言葉です!

推しとはなんなのか。この記事を書くにあたり考えてみたものの、ますます沼は深まるばかり。「神」とも言えるし、「子ども(のようなもの)」でもあるし、「愛でるもの」「布教したくなるもの」でもあり……きっと、正解はないのでしょう。

基本!?「推し活」用語おさらい

今更ではありますが、オタクならではの共通語として使われている推し活用語から、「推し」とはなんなのかを振り返ってみましょう。

例えば、アイドルなどがファンのために行うファンミーティングを略した「ファンミ」や推しからのお手振りといったファンサービスを略した「ファンサ」など。最近の2.5次元では、ファンサ前提の構成が考えられていて、グッズ作りにもつい熱が入ってしまうものです。ただし、こうした用語は2.5次元のないゲームやアニメ、漫画のほか、歴史や鉄道といったジャンルではあまりご縁のない用語でしょう。

ほかにも、ライブや舞台のチケット当選を祈る「当選祈願」や、「安定の落選」「復活当選祈願」などは、SNSでハッシュタグが乱立するオタの共通語。ディズニーオタの間では、ショーに落選することを、落選時のコール音を表現して「トゥルった」という独自表現もあります。

ジャンルごとに異なる用語として、やはり特徴的なのが宝塚オタ用語ではないでしょうか。宝塚オタの間では、「推し」は「ご贔屓」となり、さらにファンミに該当するイベントは「お茶会」と呼ばれています。そのジャンルでしか通用しない用語も多くありますが、それこそが沼でしか学べない専門用語と言えるのかもしれません。

「推し」の表現アレコレ

それにしても、推しの概念は幅広い。推しがひとりだけとは限りませんし、複数の推しのなかから最も推している対象もあるわけです。さらに対象を細かく限定したり、「推し」具合が細分化されたりするうちに、今では「推し」を使った表現が増えています。ジャンルによっては「推し」を表現するのに別の言葉を使うこともあります。

最近ちまたで使われる「推し」表現の一部をまとめてみました。

好感度レベルで変わる「推し」表現

・激推し(げきおし)……激しく応援している特定の対象を指す。同じ意味合いで神推し(かみおし)もある
・単推し(たんおし)……応援し続けるひとりだけの対象を指す
・二推し(におし)……2番目に応援している対象を指す
・箱推し(はこおし)……応援しているグループ全体、もしくは、キャスト全体を指す。同じ意味で全推し(ぜんおし)や推しグル(おしぐる)もある
・最推し(さいおし)……複数の推しがいるなかで、最も応援している対象を指す
・推しメン(おしめん)……上記でも説明したとおり、「推し」と同じ意味。それが「最推し」なのか「二推し」なのかは、これだけではわからないことがある。

「推し」にまつわるその他の表現

・推し様(おしさま)……尊すぎる推しに対して、敬意を込めて「様」をつけた表現
・推し変(おしへん)……推している対象を変えること
・推し被り(おしかぶり)……ファン仲間と推しが被っている状態
・推しぴ(おしぴ)……複数の推し対象をまとめた表現
・推し活(おしかつ)……推しに対するファン活動を行うこと
・推し事(おしごと)……推しに関するファン活動全般
・推し仲間(おしなかま)……同じ推し、もしくは推しが所属するグループやジャンルを同じように推している仲間のこと
・DD……そのジャンルで活動する人を広く応援する主義(誰でも大好きの頭文字でDD)

まだまだ、たくさんの表現がありますが、「推し」に対する個々の愛情表現により、関連語は広がる一方!

ジャンルごとに異なる「推し」の呼び方

ジャンルによっては、「推し」という表現を使わないこともあります。先にもお伝えしたとおり、宝塚では、「推し」ではなく「ご贔屓」と呼びますし、ジャニーズや舞台系では「自担」「担当」という呼び方がメジャー。一方で、女性アイドルだと、そのまま「推しメン」と呼ばれるので、同じアイドル系でも男女の違いによって呼び名が変わっているのも興味深いですね。

かといって、宝塚ファンやジャニーズファン、2.5次元舞台ファンの方が「推し」という表現をまったく使わないというわけでもなく、人によって使い分けている方もいます。そして、そこには、「ご贔屓」と「推し」、「自担」と「推し」の違いがあり、また同じ概念とはいいがたい。奥深いぞ、「推し」! いずれもおおむね同じ意味合いを持つ言葉ですが、ジャンルによって使う用語が変わるのは、その世界でしかわからない何かを秘めているのかもしれませんね。

「推し」とは「人生を彩るもの」

「推し」と表現するとき、そこにはそれぞれの思いが詰まっています。最推しも二推しも、それぞれへの確かな愛情があり、「推し」であることに変わりはありません。それぞれへの愛情表現で推し活を楽しみながら、これからも無償の愛を届けていくのでしょう。ただそこに存在するだけで人生を彩る「推し」。推しに出会えた奇跡を喜びつつ、自分らしく推しへの愛情表現を深めていきたいですね。

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