#011 [2024/01.31]

わたしたちの、このごろ

違和感が行動の源になり、
現在のライフスタイルを
かたちづくっています

Re!naさん

こう語るのは、フリーでライター業をしているRe!na(以下、れいな)さん、25歳だ。

ライターという肩書きがありつつも、それだけにとらわれることなく精力的に活動する彼女。
2023年は、PARCOとFUDGE、そして全国14の喫茶店がコラボレーションするイベント「純喫茶ファッジ in パルコ」に携わり、全国6都市を巡回。今回取材にお伺いしたのは、そのうちの1つ、広島だった。

一体どんな変遷を経て、彼女は今のライフスタイルに辿り着いたのだろうか。

ミュージカルに魅了され、
すべてを捧げた10代

Re!naさん:「姿勢がよくなるように」という母の思いがあって、3歳のころからクラシックバレエを習い始めました。ミュージカルに興味を持ったきっかけは、小学5年生の時に観た「アニー」です。私も舞台に立ってみたくなって(笑)。

心に火がついたれいなさんは、ミュージカルの世界に飛び込むため、クラシックバレエに加えて歌やジャズダンス、タップダンスを習い始めたそう。目指す場所を明確にしようと思ったとき、彼女が目標に定めたのは「宝塚音楽学校」への入学だった。

Re!naさん:宝塚って、年に1度受験することができて、どんな人でもチャンスは最大4回なんです。今振り返ってみても一番ストイックにがんばっていたのはそのころだと思います。

れいなさんは人より筋肉がつきにくい体質だったこともあり、レッスン以外の時間も毎日ハードな筋トレをこなし、食事の管理も徹底したという。しかし、宝塚音楽学校への入学は狭き門だった。

宝塚音楽学校への入学を目指していたころのれいなさん

Re!naさん:中3から高3まで挑戦し続けて、一度は最終選考まで残りましたが、惜しくも夢はかなわなかったです……。

選考結果を知った瞬間に「大学に行きたくない!」と大泣きしたれいなさん。次の目標が見つからないまま大学へと進学した。

大好きなグルメ
撮って書いて広める。
新しい楽しみを見つけた

宝塚の夢は敗れたが、変わらず舞台女優になりたいという思いがあり、大学入学後も歌とダンスは続けていたそう。そんな折、れいなさんに新たな軸ができる。

Re!naさん:幼いころから食べることが大好きで、赤ちゃんの時は「腕がちぎりパンみたいだった」と聞いています(笑)。高校生の時に知った、あるカフェをきっかけにカフェ巡りをするようになりました。

備忘録として、足を運んだカフェの写真をInstagramに残すことが日課になったという。そんな時に偶然、「ナゴレコ」という名古屋の飲食店を紹介するキュレーションメディアと出合い、ライターの求人に応募。公認グルメライターとして執筆活動を始めた。

Re!naさん:同じ大学の先輩がナゴレコ学生編集部の副編集長を務めると聞いて興味を持ち、初期メンバーとしてジョインしました。みんなと0から1をつくっていくのがすごく楽しかったです。

また、大学4年生の時、日本初演ミュージカルに出演することができ、達成感を得られたことから、舞台の世界からは足を洗う決意ができたと話す。

Re!naさん:すべてやりきりました。

思い描いていた仕事と違う。
初日からつまずいてしまった
ファーストキャリア

その後、就職活動を開始したれいなさん。興味のあるグルメやダンスとはまったく違う、ベビー・マタニティ用品を扱うメーカーへと就職し、ファーストキャリアを築き始めた。

Re!naさん:好きで仕方のないことを仕事にすることで、のちに嫌になってしまう可能性を恐れて、あえて思い入れのないものと向き合う選択を取りました。

とはいえ、これまでグルメの発信活動をしてきた側面で貢献できることがあるのではないか?という思いから「広報兼SNSマーケター」という職種に応募し、内定をもらったそう。しかし、入社式で賞状を受け取った瞬間に、違和感を感じたという。

Re!naさん:ほぼ法人営業の仕事で、想像と現実のギャップが大きかったです。そんななかでも会社に貢献しようと、自分なりにいろいろがんばってみましたが、なかなか思いが届かず……。ここにいても成長できないと感じ、1年1ヵ月で退職しました。

上:「純喫茶ファッジ in パルコ」を機に知った、ingの靴。
真ん中にラインが入っていることに珍しさを感じて購入

下:数年前から愛用している、ラルーチェのリング。
つけていると不思議とエネルギーが湧いてくる

不安はあったものの、「文章もかけて写真も撮れる。今まで何もしてこなかったわけじゃないから辞めてもきっとやっていけるよ!」という友人の言葉が彼女の背中を押した。

「人」も紹介することで
温度をあげたい

意を決してフリーランスに転身したれいなさんだったが、やりたいことは明確に見えていた。

Re!naさん:最初に書いていたのはデータ(アクセス、外観/内観写真、メニューなど)にレポートを添えるグルメ記事で、ひとけがなく淡々としていました。それはそれで成り立っていますが、徐々に違和感が生じてきました……。そこ(店)に携わる人の想いを汲み取って伝えたいと思ったんです。そのほうが記事自体の温度が上がって、より行ってみたくなるんじゃないかなと。次のフェーズに移ろうと思いました。

当時インタビュー記事がなかった「ナゴレコ」で、街で活躍する人々のバックグラウンドにあるストーリーを伺うインタビュー企画「BEHIND THE LIFE」を立案したという。

Re!naさん:今後もずっと大好きな「食」に軸足を置きながら、「人」を紹介する記事の執筆や企画を立てていきたいです。

帽子は「純喫茶ファッジ in パルコ」の大阪(心斎橋)での会期中、
京都に足を運びたまたま出合ったセレクトショップで購入。
帽子は小学生のころから好きなんだとか

編集部のまとめ

彼女の新しい人生は始まったばかりだが、さまざまな人と出会い、少しずつ自分のやりたいことができる場所を増やしているという。
今年からは、引き続き全国を転々としながら好奇心の赴くまま行動するそう。
やりたいことがあるなら、待っているのではなく自分から迎えに行く。そんな姿勢を見て、近ごろやるべきことに追われてばかりの私も、初心に立ち返り新鮮な気持ちを思い出すことができた。
これから彼女がどんな人生の物語を紡いでいくのか、とても楽しみだ。

STAFF
photo / text : Nana Nose