[2025/11.27]
暮らしのお買いもの
【真夜中の小さな物語】vol.10
がんばれない夜に
~わたしを溶かすおまじない~
「また今日もこんな時間になってしまった」
ベッドに横になる。明日のことをぼんやりと考えながら、スマホを眺めていると時間があっという間に溶けていく。
「明日も仕事なのに……何やってるんだろう」
社会人5年目。このごろ、なんだかがんばれない。

「昔はもっとがんばれてた気がするのにな」
そんなことを考えていたら、時計は25時を回っていた。
小学生のころをふと思い出す。わたしは”がんばれる子”だった。夏休みの宿題は早めに終わらせることができていたし、たくさん賞状をもらっていた。恥ずかしがり屋だったけど、いろんなことに興味を持っていて、好きなことに真っ直ぐだった。
でも、年を重ねるにつれて、必死にがんばることが分からなくなってきた。失敗することが怖くなった。誰かの目をいつも気にしていて、がんばってるフリだけがうまくなっていく感覚があった。
キラキラしている誰かを見ると羨ましくって……
どうしようもなく、自分がだめに思える。
わたしってなんなんだろう?
何がしたいんだろう?
このままでいいのかな?
ぐるぐる、もやもや……

そんなとき、いつか届いた「25時のおまじない」と書かれた箱が目についた。開けてみる。まるで夜の星空をぷかぷかと漂っているようなイラストに自分を重ねる。
そっと手に取り、枕にシュッとひと振り。
甘い空気に包まれて、なんだかとろけるみたい。
疲れたとき、もうひと踏ん張りしなきゃいけないとき、寄り添うように母がくれた、あのチョコレートの香りだ。
懐かしくてやさしい気持ちになる。

同封されていたリーフレットには、こんな言葉が綴られていた。
ありのままでいたいのに
くらべて悩んでしまっているの
テオラココ テオラココ
みんなはどこに向かっているの?
テオラココ テオラココ
きっとみんなも同じ夜
初めて聞く。不思議な言葉。
わたしも唱えてみる。
「テオラココ テオラココ…」
心がだんだんほぐれていく。

空が明るくなっている。
おまじないを唱えていたら、不思議と眠りについていたようだ。
枕もとにはあのミストがちょこんと。
がんばること、ありのままでいることは大切かもしれない。
それでも、がんばれない夜、もやもや悩む夜、どこに向かっているか分からなくて不安な夜は、誰にだってある。
そんな夜があったって大丈夫。
だってわたしには、いつだってやさしく寄り添ってくれるチョコレートの “おまじない”があるのだから。

心がそっと溶けたなら、また一歩踏み出してみたらいい。
「テオラココ テオラココ……」
今回登場した『25時のおまじない』はこちら

STAFF
photo & text saho



