[2025/11.27]
暮らしのお買いもの
【真夜中の小さな物語】vol.8
社会へ踏み出すわたしのお守り
長かった大学生活も終盤に差し掛かり、春から社会人になるわたし。
就職活動を経てあこがれていた企業に内定をもらうことができたけれど、季節が進み卒業の日が近づくにつれて、不安が浮かぶ夜が増えている。

大学近くの葉っぱが赤や黄色に染まり、だんだんと寒くなってきたこのごろ。
押し入れから引っ張り出したふわふわの羽毛布団に潜り込み、目をつむる。
はっきりとした理由はないけれど、なんだか不安だ。
社会人1年目って、どんな感じなのだろう。
家と職場を往復する日々は、わたしに何をもたらすのだろう。
ベッドから抜け出し、窓を開けて外の匂いを吸い込んでみる。
夜の空気が流れこんできて、胸がスーッとした。
深夜の25時。
家族が寝静まり、街も静かになり始める。
やっぱりわたしはこの時間が好きだ。
あ、そういえば。
本棚の上に置いているお気に入りのアイテムが目に入る。
フェリシモ チョコレート ミュージアムで買った『25時のおまじない』。
今夜もベッドの上でミストをひとふきすると、チョコレートの甘い香りに包まれた布団ができあがる。このパッケージを部屋に置いていると、不思議と背中を押される気がするのだ。

感受性を持て余し些細なことで傷つきがちだった10代のころのわたしを思い出す。
その疲れ切った心を何より癒やしてくれたのも、この部屋で過ごす夜だった。眠い目をこすりながら、大好きな音楽に出会い、文学の世界にのめり込み、雑誌を読んでは夢を抱いていたんだっけ。
そんなわたしが思い描いた夢の上にいる、今のわたし。
あのころよりは強くなったつもりだけれど、今も何気ないことで胸がギュッとなり眠れなくなってしまう夜がある。
ひとり暮らしが始まり自分の力でお金を稼げるようになれば、好きなものを食べて、好きなものを着て、たまにはぜいたくをしよう。
手に入れる自由と引き換えに浮かんでくる少しの寂しさや不安をやわらげてくれるのは、自分の心に素直になれる時間なのかもしれない。

チョコレートの布団に包まれているうちに、だんだんと眠たくなってきた。
インテリア雑誌、ギター、小説、レコード……
わたしの好きなものばかりが並ぶ部屋を見渡してみる。長いようで短かった、この部屋で過ごした日々。忙しない日常の中でも、忘れたくないものがたくさんある。
たとえば、わたしの仕事で誰かの暮らしが豊かになったり、わたしの言葉で誰かの心が軽くなったり。この部屋で受け取ってきたものを、誰かに返せるようになる日を思い描いてみる。
自分だけの部屋と、自分だけの愛おしい時間。
春から社会に踏み出すわたしの心を、おまじないのように守ってくれますように。
今回登場した『25時のおまじない』はこちら

STAFF
photo & text 陽菜



