[2025/11.19]

暮らしのお買いもの

【真夜中の小さな物語】 vol.1
テオラココ、テオラココ。
私にとってのおまじない

「まだ25:00か」
目を覚ましても、空はまだ真っ暗だった。

ここのところ、あまりうまく眠れていない。
布団に早く入っても寝付けなかったり、眠れたとしてもすぐに目が覚めてしまったり。
好きなことは何ですか?と聞かれたときには「寝ること」と答えていた学生時代を懐かしく思う。

眠れないときこそ「眠らなきゃ」と焦ってしまうのはどうしてだろう。
そんなときに頭の中をよぎるのは、過去の失敗や、明日やらなければいけない仕事のことばかり。

こうした負のループを抜け出すにはどうしたものか。

そんな私のことを気遣った友人が「よかったら、これ」とプレゼントを渡してくれた。
包みを開けると、「25時のおまじない」と書かれたリーフレットと、フレグランスミストが入っていた。

ミストの蓋を開けると、ふんわりと甘いチョコレートの香りがした。

「わあ、いい匂い」

甘く、やさしい匂いは私の不安な心を溶かしてくれる。

そういえば最近、チョコレート食べてなかったな。

もう少し心に余裕があったときは、時折甘いものを食べながらゆったりする時間を過ごしていたことに気がついた。

リーフレットを開くと、空に浮かぶ女の子のイラストとともに、こんな言葉が添えられていた。

そうか、このごろ、みんなそんな感じなのか。

言語化できない、もやっとした不安を抱えた夜。
誰にも相談できずに考え込んでしまった夜。
こうした夜を過ごしているのは私だけじゃない、と思えた瞬間、心がふわっと軽くなった。

「テオラココ」

魔法のおまじないを唱えながら、ベッドに横になってみる。

私は考えすぎなのかもしれないな。

眠れない夜があったっていいじゃないか。

もっと気楽に、もっと自由に。
テオラココ、テオラココ、テオラココ……

ふと目が覚めると、部屋に光が差し込んでいた。
時計に目をやると、時刻は7:00を指していた。

「25時のおまじない、か」

久しぶりにぐっすり眠った後に見た朝日は、一段と眩しく見えた。


今回登場した『25時のおまじない』はこちら

STAFF
photo & text 結城りん