[2025/07.17]
暮らしのお買いもの
【このごろコラム】
書いて生きていたい
わたしは「メモをたくさん取るよね」と言われることが多い。
先輩に教えてもらったこと、友達と話をしていて素敵だなと思ったこと、心に残ったフレーズなどをふとメモに取る、手書きで。
肌身離さず持ち歩くスマホではなく、手書きを好んだ結果、わたしの家には、言葉の詰まった日記なのか名言集なのかよくわからないノートが何冊も並行している。
なぜわたしは手書きにこだわるのだろう、便利な時代になぜ書くのだろう。
ひとつ、素敵な言葉を自分に取り入れたい、と思ったとき、わたしは書く。
「打つ」ことで生まれる均等な文字の羅列ではなく、不ぞろいな文字を「書く」。
耳から入るものを、手を動かして「書く」ことで、からだにしみこんでくる感覚がある。
この一週間、自分が素敵だと思ったことを書きだした。

万年筆を初めて使った。
紙にインクが染みこんで、時間が経つとくっきり形を表す。
並べてみる、眺めてみる。こんなにたくさん素敵なことが並んでいるんだ。
ぐんぐんエネルギーが湧いてくる。
からだに言葉が入ってくる。
手書きだから間違うことだってある、気にしない。黒丸で塗ってしまえばよい。
その跡だって人間らしくていいと思う。
ひとつ、頭のなかをきれいにしたい、と思ったとき、わたしは書く。
書き出すことで、するすると糸がほどけていくように頭のモヤモヤがなくなっていく。
ずっとよくわからず抱えていた重たい物体を、からだから放出する感覚になる。

かなえたいことを、思いつくまま書き出した。
今は机上の空論だとしても、はじまりはじまり、と自分の中で唱えながら。
頭の中に潜めていることを、紙に書き出すには意外に勇気がいるなと思う。
それでも夢が膨らむ。
それが実現するかどうかを考える前にまず、心が躍る夢を書く。
わたしは今日ここで、決意表明をした気分になった。
わたしの大好きな海沿いの街を走るんだ、お気に入りの車で。
海風を感じながら聴くプレイリストを準備しておこう、と思うと胸が高鳴る。
大人でもまだまだ夢を持てるなと思う。
ひとつ、この感情を残したい、と思ったとき、わたしは書く。
うれしさや感動を感じたとき、丁寧に字を書く。
悩んだり涙が止まらないときは、ぐらぐらとした字を書く。
字にはその時の自分が抱いた感情を未来に引き継ぐ力がある。

高校時代の友人にプレゼントでもらったチョコ。
昔は飲み物とスイーツのかけ合わせは甘い×甘いだったのに、いつのまにか甘い×苦いを好むようになった。
チョコとコーヒーのように、人生も時には苦さがあるから甘さを感じられるとしみじみする。
出会って9年経つ友達と、プレゼントを贈り贈られる関係性が続いていることに感動する。
社会人なって特に、離れていてもお互いを思いやる人と出会うことのむずかしさを感じると同時に、毎年ほっこり温かい気持ちにさせてくれる友人に感謝いっぱいになった。
考えてみると、わたしの人生に「書く」時間は欠かせないなと思った。
大げさに言うと、わたしにとって「書く」は自己表現、芸術のひとつじゃないかと思う。
言葉をからだに取り入れたり、からだから解き放つには、「書く」ことが必要になっている。
字にこもる思いや願いは、アナログだからこそ表してくれると思う。
忙しい毎日に、頭でいっぱいになって心のありようを見つめる時間は削られてしまう。
だからこそ、日々「書く」ことを続けたいと思う。
心と対話する時間を持ちたいと思わせてくれる、特別なペンと紙だと思った。

最後に、一緒に住む人とお互いに手紙交換をした。
こんなの小学生ぶりだった。
何を書けばいいのと戸惑っていたけれど、渡してくれた手紙には、思いやりとやさしさが溢れていて、
涙を流してしまった。
毎日飽きないほど会話をしているはずだけれど、こんなに感動できるんだと思った。
わたしもお返しに手紙を書いた。
これから、時にはおしゃべりじゃなくてお手紙でコミュニケーションを取ってみようと思った。
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STAFF
photo & text :おまめ



