ブックディレクター幅允孝さんと一緒に選びました

1,000人集まれば復刊できるお守りになる本

今回のセレクトテーマ お守りになる本

絶版になった名著を復刊させる「復刊リクエスト」プロジェクトが、フェリシモに帰ってきました。今回はブックディレクター幅 允孝さんに「お守りになる本」というテーマで、未来につなげたい一冊のセレクトを依頼。
みなさまからの「復刊リクエスト」が1,000人集まれば、復刊が決まります。応援よろしくお願いいたします!

『深呼吸の必要』『世界はうつくしいと』などで知られる詩人 長田 弘さんが晩年、思いがけずがんの告知を受けた妻に寄り添う日々の中から生まれた21篇。目にやさしく、たっぷりの余白をとって綴られるのは、みじろぎもせず、ただただ佇む自然のなりたちとかたち。ありありと情景が浮かぶ平易な言葉の連なりから、最後の3行で世界と意識がそっくりくつがえり、自らを深く見つめ直せる。そんな、詩ならではの代えがたい体験ができる名著。

お申し込みの数が1,000 を超えると 復刊が決まります

人はかつて樹だった
著者:長田 弘 出版社:みすず書房 ¥1,980(税込み)

復刊リクエストお申し込み締め切り2024/2/25 まで

フェリシモ定期便をご購入中の方は
2024年3月分まで

お申し込みはこちら ・2024年4月中旬(フェリシモ定期便5月分~)お届け開始
・お申し込みの数が1,000未満の場合は復刊はありません

ブックディレクター 幅 允孝(はば よしたか)さんインタビュー

聞き手:山村 光春
取材場所:「鈍考/喫茶 芳」

僕らの選書の定番本を、ぜひ復刊させたい。

詩集『人はかつて樹だった』は、僕らがライブラリーなどで選書をする時の、定番となっているタイトルです。著者の長田 弘さんはすでに亡くなっていて、つまり新しい作品は出てこない。だけど一方で彼の詩は古びることなく、老若男女誰でも、どのタイミングで読んでいただいても、感じるところがある。人のどこかに“刺さる”というよりも“なでる”ような。

さらに言うなら、ここに書いてある言葉って、本当にイガイガがないんですよね。高潔ですけれど、高いところから言ってるわけでもなく、ざわざわしたいろんなものを吸い取って、くるんでくれる。そして自分をシンプルで、簡潔な状態にしてくれる。そういう、お守りみたいな存在なんです。

なので、これが版元切れの絶版だと聞いた時「えっ?本当にないの?」と聞き返しました。しかもそれによって古本の価格が上昇し、著作者も本意ではないような金額になってしまうのは、見るに堪えない。なんなら僕が買い取って出したいぐらいだと、本当に思っていました。

なのでこの機会に、ぜひ復刊させたい。そう強く願っています。

日本人だからこそ感じる、詩歌の魅力。

今、時間の奪い合いが激しい中で、長い小説にはなかなか向き合えないかもしれない。だけど詩なら、さらっと手に取って、ひとつだけ読むこともできる。また不思議なのは、二度と同じように読めないこと。以前の時の感じ方と、違った角度で入り込んでくるところがあって。小説でもありますけど、詩はそれをより分かりやすく感じます。どういうことかな?って立ち止まったり、数行読み返したり。そうしてちゃんと掴みに行って、心に刻んでいく。

詩に限らず、短歌や俳句なども含めた「詩歌」に、最近面白いものが増えていて、注目しています。小説が文学の中心のように感じられるかもしれないけど、実は近代に入ってからで、詩歌は古来から長らく人が書いてきたもの。それもあり、元来我々日本人のDNAに、すっと入ってくるところがあると思うんです。言葉の細やかなニュアンス、行間、余韻を読み取りながら解釈する。せっかく日本語が母語である僕らだからこそ、詩を読むことをおすすめしたい。

人が希求する、そばに自然がある生活。

僕は東京の街場に30年間暮らしてきましたが、今年私設図書室と「喫茶 芳」を併設した京都分室「鈍考 donkou」を作り、二拠点生活を始めました。特にここは木造で、床とか柱だけじゃなく机とか椅子とかぜんぶ、杉だったりオークだったり、いろんな木を使っていて、庭には檜やソメイヨシノが見える。そんな木に囲まれた空間にいると、原始的な気持ちに還って、心が落ち着くんですよね。窓の外をぼーっと見て「あ、夾竹桃が揺れてるなぁ」なんて思いながら、ビールやワインを飲む。これが一番しあわせです。

この本は『人はかつて樹だった』というタイトル通り、身近な自然がモチーフになっています。読んでいると、風景が思い浮かぶんです。なくなっていると言いつつ、身の回りにはやっぱり自然があって、それは人が無意識も含めて、そういうものを希求してるからだと思うんです。だから都会に住んでいても、木のものを選んだり、ベランダに緑や花を植えたりする。僕はその素晴らしさを、日々実感しています。

BACH代表/ブックディレクター
幅 允孝

公共図書館や病院、学校、ホテル、オフィスなどのライブラリー作り、書籍の編集・制作など、人と本の距離を縮めるためのあらゆることを扱う。最近手がけたプロジェクトはミライエ長岡〈互尊文庫〉〈こども本の森 中之島〉や早稲田大学 国際文学館〈村上春樹ライブラリー〉など。近著に「差し出し方の教室」(弘文堂)がある。2023年5月、私設図書室および「喫茶 芳」を併設した京都分室「鈍考 donkou」をオープン。

お申し込みの数が1,000 を超えると 復刊が決まります

人はかつて樹だった
著者:長田 弘 出版社:みすず書房 ¥1,980(税込み)

復刊リクエストお申し込み締め切り2024/2/25 まで

フェリシモ定期便をご購入中の方は
2024年3月分まで

お申し込みはこちら ・2024年4月中旬(フェリシモ定期便5月分~)お届け開始
・お申し込みの数が1,000未満の場合は復刊はありません

@BOOK PORT(@ブックポート)とは、1985年から2013年まで作られていた本のカタログ。作家の桐島洋子さんをキャプテンに、専門家たちが「本のソムリエ」となり、よりよい本と読者との出合いを考え、女性のためのさまざまな良書をセレクト。単なるカタログにとどまらず、多彩なメディアを届ける窓口としても機能していました。