真鍮のアトリエで出会った宝物たち / 恋するパリ通信

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私は蚤の市や、パリ市内に今も残っている専門の工具店などをのぞくのが大好きです。部品を見ては「何に使えるかな……」と考えたり、ただうっとり眺めるために購入したり。ボタンやレース、真鍮(しんちゅう)の部品、シャンデリアのクリスタル、糸、リボン……。ある人にとってはガラクタかもしれませんが、私にとってはインスピレーションの源であり、宝箱にしまう大切なものです。今回は、刺しゅう作家の方が教えてくれた秘密の場所、真鍮屋さんへご案内します!

北マレ地区にあるショールーム。

北マレ地区にある真鍮のアトリエ「Artmetal(アールメタル)社」は150年以上も続くサヴォワフェール(匠の技)が息づく場所。いちばん古い金型は、なんと1829年のものだそうです。ジュエリー、ファッションボタン、軍事用ボタン、革製品、照明、家具、記念コインまで、多彩なモデルを今でもSavigny-le-Temple(サヴィニー=ル=タンプル)にある自社工場で製造しているのだそう。

入ってすぐには動物や装飾的なものが並んでる。

スタッフの方が、お店の仕組みや歴史をていねいに教えてくれました。「ここはショールームになっていて、実際に手に取って見本を見ることができますよ。気に入ったものがあれば、工場に在庫確認をし、在庫があれば購入可能です。真鍮の部品は25ピースからの注文になります。もし在庫がない場合は300ピースからの製造・注文になるので、個人の方だと大きな数になってしまいますが、相談も可能です。150年以上前からある、美しいアールデコやアールヌーヴォーのものなど、私たちでもびっくりするほど美しいピースがあるんですよ。ぜひ、時間があったらサヴィニー=ル=タンプルの工場にも見学に行ってみてください」

昔ながらのアトリエをショールームとして使っている。

12万点にもおよぶサンプルは、クリエイターたちに夢とインスピレーションを与え続けています。顧客には、コスチュームジュエリーのデザイナー、ファッションクリエイター、オートクチュールを仕立てる職人、オペラ・映画・演劇の衣装デザイナー、軍事用デザイナー、さらには国際的なインテリアデコレーターたちが名を連ね、厚い信頼を寄せているそうです。

タイポグラフィーもいろいろ。デコラティブなものもシンプルなものも素敵。

初めお店に入ったときは、あまりの数の多さと美しさに圧倒されてしまいました。選ぶどころか、ただただ圧倒されて眺めるばかり。写真を撮るのも忘れて、まるで美術館を訪れたときのように見入ってしまいました。少し深呼吸をした後、特にお花や植物のモチーフに私は惹かれるので、そのブースをゆっくりと回りました。「これを使って何を作れるかな? 絵を描くためのオブジェにしようか? それとも、刺しゅう作家さんが言っていたように、洋服やバッグに縫い付けるのもいいかもしれない……」などと考えていくうちに、どんどん目に留まるものが出てきます。

ずっと見ていたい植物のコーナー。 

「すべての未加工部品には、鉛およびニッケルを含まない真鍮を使用しています。また、当社は持続可能な発展を重視した方針を採用していて、環境に配慮した製造をしているんです」 お店の方のこの言葉を聞き、環境への配慮も大切にされていることに、さらに興味が湧きました。

左:目移りしてしまうほどたくさんのサンプル。整然とカテゴリー分けされている。 / 右:真鍮はもちろん、ディスプレイされている木枠も素敵。

世界中からの注文電話に対応する傍らで、ボタンコーナーに移動して真剣に品定めをしている私に、お店の方はいろいろと歴史を話してくれました。

アクセサリーにすぐ使えそうなボタンはその場で買えた。

「実は当社がその歴史と技術を受け継いでいるのですが、1814年以来、数多くの美しいボタンには、当時の創業者たちの頭文字を取った「TW&W Paris」――つまり、トレロン(T)、ウェルドン(W)、ヴェイユ(W)の唯一無二の刻印がほどこされてきました。このTW&W Parisは現存する最古の金属ボタン製造会社で、1904年に「Coinderoux」へ改称、2008年にはJANVIER社(アールメタル社の母体)へと継承されました。ナポレオン軍の制服用ボタンから、現代のオートクチュール向けのものに至るまで、その形状や素材のすべてが歴史を物語っています」

アクセサリーに仕立て、販売しているものも。

これから蚤の市でボタンを見る時には、必ず裏の刻印をチェックすることになりそうです。陶器と同じように、ボタンにも深い歴史があり、背景がある。そして今も絶えることなく、技術もエスプリも受け継がれている、これがまさに「サヴォワフェール(匠の技)」ですね。

使われている棚もアンティーク。こういう整理棚欲しい!

私はアトリエ見学が大好きなので、今度は工場を訪れてみたいと思います。 そのレポートも、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

TAKANAKA MASAE
雑誌や広告でファッションコーディネーター&スタイリストとして活動中。
パリに住んではや20年、毎日自転車でパリの街をパトロールしています。


Instagram: 移動花瓶屋さん @cabin.e.dream

パリの日常: @massaetakanaka

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