オランダのアムステルダム近郊に住むゐ(うぃ)です。 オランダといえばチューリップが有名ですが、17世紀に同じく大流行したのがドールハウスです。お金持ちのマダムが富を誇示するためにこぞって高級なドールハウスを職人に作らせたそうです。当時のドールハウスがオランダ各地の美術館に展示されています。 私は2020年にロンドンからオランダに転居し、その後すぐにロックダウン。家に閉じこもる生活を送る中でドールハウスの歴史に魅せられ、自分でもミニチュア家具を作るようになりました。今日は私も大好きで、オランダで爆発的な人気を博した児童書『マウスマンション』シリーズ(カリーナ・スカープマン作)に登場するネズミのドールハウスを紹介しましょう。
この絵本に出てくるマウスマンションは、幅2メートル、高さ3メートルもある巨大なドールハウス。マンションの部屋数はなんと100以上もあります。 作者のカリーナさんがドールハウスの制作を始めたのは2008年。完成すると、そこにネズミのぬいぐるみを置いて撮影し「サムとユリアの物語」として出版したのが2011年。その後、絵本としてシリーズ化され、オランダのみならず世界各国の子どもたちに愛されているのです。
マウスマンションの大半は廃材で作られており、家は古いバナナやオレンジなどの段ボールと木材でできています。床の板張りや家具の多くはアイスクリームの棒で作られ、ランプはボトルキャップで、琺瑯に見えるキャニスターやバケツは紙でできており、50〜70年代の古布も多く使われています。
カリーナさんはこの本を書く前はアムステルダム市の政治家であり、作家であり、彫刻家でした。体調を崩して議員を辞職した時、子どものころ好きだったネズミの絵本の世界を作りたいと思ったのだそうです。近所の人々が仲よく助け合って暮らすマウスマンションの世界は、インドネシア移民のシングルマザー母娘としていじめを受け、疎外感を感じて育った少女時代のカリーナさんの夢の体現なのだそう。
マウスマンションの魅力はひと部屋、ひと部屋にそれぞれの物語があり、手づくりのあたたかみがあることですが、出てくるキャラクターにはそれぞれモデルがいて、各部屋の様子はカリーナさんやその家族の体験を反映しているのだそうです。
「マウスマンション」シリーズは2012年には日本語版も出版されています。ぜひ書店などで探してみてください。
レポーター ゐ(うぃ)
オランダ在住のリサーチャー。趣味はミニチュア作り、ガーデニング、西洋文化史、服飾手芸史、ひとり旅。
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