フェリシモCompany

一人ひとりの思いやりの積み重ねが大きな力になる。共同購入で贈る、新しい支援のかたち「みんなでおそなえギフト」とは?

こんにちは、フェリシモ基金事務局のmotoです。

みんなでおそなえギフト」は、2022年にスタートした、フェリシモの「おてらぶ」と認定NPO法人おてらおやつクラブによるコラボレーション企画です。
今、日本の子どもの7人に1人が相対的貧困に直面しており、そのなかでもひとり親世帯の貧困率は48.1%となっています。こうした状況において、困難を抱えるひとり親家庭をみんなで応援できるのが「みんなでおそなえギフト」です。
「みんなでおそなえギフト」は、基金ではなく、ひと口100円で買い上げいただく商品です。共同購入の金額が8000円に達すると、お米やお菓子、レトルト食品の詰め合わせ一箱を「おそなえギフト」として全国のお寺におそなえします。そして、読経を終えた後、「おてらおやつクラブ」を通じて、全国の支援を必要とするひとり親家庭に匿名でギフト配送されます。
どんなときも仏縁を大事にする「おてらぶ」部長の内村彰さんに、「みんなでおそなえギフト」にかける想いと誕生の背景をお聞きました。

話し手:内村彰さん
聞き手:フェリシモ基金事務局

“寄付”ではなく“お買い物”で誰かを支える仕組み

内村さん

「みんなでおそなえギフト」は、寄付ではなく、お買い物をすることで困難を抱えるひとり親家庭を支援する取り組みです。自分のための“お買い物”という、とても日常的でわかりやすい行為を、どこかの誰かのために向けてできないだろうかという発想から企画が始まりました。今回、一緒に企画をさせていただいた奈良県安養寺の松島靖朗さんが運営する「おてらおやつクラブ」は、お寺に集まった“おそなえもの”を、全国の困りごとを抱える母子家庭に“おすそわけ”する活動を行なっています。果物やお米、ジュースなどの仏さまへのおそなえものを “おさがり”として箱詰めし、支援を必要としている方たちへお届けしています。その仕組みにフェリシモのお客さまがふだんのお買い物の流れで参加できて、フェリシモが配送までできたら、支援の裾野が広がるのではないかと考えたのが「みんなでおそなえギフト」です。“お寺へのおそなえ”と聞くと、箱詰めされたジュース、ようかんやフルーツの缶詰など、ちょっと大きなものが仏像の前に供えてあるイメージがありませんか。それをもっと気軽に、ジュースを1本買うくらいの感覚で“おそなえ”できる仕組みにしたいと思い、価格を100円に設定しました。

“もの”を届けるのではない、仏さまからの“おすそわけ”

お客さまには、共同行動購入というかたちで、「みんなでおそなえギフト」をひと口100円からお買い物をしていただけます。参加していただいた方々の思いが8,000円分集まると、そのお金で物資を調達して、ひとつのギフトボックスが完成します。おてらおやつクラブの活動で行っている“一度仏さまへおそなえする”という行為は、目に見えない大切なつながり、つまりご縁でつながっているということを明らかにする大切なポイントだと考えています。ですので今回のプロジェクトでもギフトボックスをそのまま発送するのでなくて、完成した箱を、今度は東大寺など各地のお寺に運んで “おそなえ”として読経していただき、仏さまの“おさがり”としてまたフェリシモに持ち帰り、物流センターから発送するという仕組みになっています。今回のコラボレーションでは、「おてらおやつクラブ」さんとフェリシモ双方のよさをうまく生かした仕組みをつくっています。

私たちダイレクトマーケティングを手がける企業の強みは、全国にスムーズにものをお届けできる物流システムを持っていることです。このシステムを「みんなでおそなえギフト」でフル活用できるよう、プロジェクト発起メンバーのひとりであり「猫部」などの立ち上げメンバーでもある松本竜平という担当者が、社内のシステム構築に動き回ってくれました。そして、「おてらおやつクラブ」さんには、支援を必要としている方たちの情報があります。その中から、今、支援を必要としているエリアを選んで、匿名で配送しています。そして、全国のお寺さんが社会活動の一環として参加してくださっています。読経していただく方法もいろいろあって、すべてのギフトボックスをおそなえしたうえで読経していただくこともあれば、一部を目録にしてお送りし、読経していただくこともあります。お寺さまと一緒に行うプロジェクトですので、お寺さまの状況なども事前にご相談させていただいたうえで行っています。

支援を必要とする人たちが増えるなかで

日本では、もう何年も前から、子どもの7人に1人が相対的貧困に直面しているという状況が続いています。さらに、コロナ以降、仕事がなくなって収入が少なくなった母子家庭も多く、いっそうしんどい状況に追い込まれているという社会的背景があります。「おてらおやつクラブ」さんに寄せられる支援を求める声も、コロナ以前の16.9倍にも増えたといいます。一方で、おうち時間が増えたことにより、通販業界の市場は拡大しました。比べるべきデータではないかもしれませんが、僕はこのギャップにこそ支援の裾野を広げるヒントがあると思うんです。なぜなら、コロナ禍でお買い物の機会が増えたことが大きな一因となって、「100円ならば、他の物と一緒に買ってみよう」と支援の幅が広がると思うからです。

直接支援を受ける世帯数の推移

地域と人に開かれたお寺という存在だからこその安心感

受け取る方の個人情報は私たちには残さず、匿名のギフトとしてお送りします。段ボール箱に貼る「おてらおやつクラブ」のステッカーが目印です。受け取る方は、この匿名であることに安心してくださっているようです。「おてらおやつクラブ」の活動では、 “おさがり”をお送りする方法は大きく2つあります。一つは、「おてらおやつクラブ」と連携しているNPO法人や施設にお送りして、そこからさらに必要な方にお届けする方法。二つ目が、地域の支援とつながることがむずかしい方のご自宅へ直接お届けする方法です。

1000以上の寺院が賛同し、1ヶ月でのべ26000人の子どもたちを支える「おてらおやつクラブ」。支援を必要とする人の数も増えているけれど、支援したい人の輪も年々広がっている。
1000以上の寺院が賛同し、1ヶ月でのべ26000人の子どもたちを支える「おてらおやつクラブ」。支援を必要とする人の数も増えているけれど、支援したい人の輪も年々広がっている。

実は、顔見知りなど関係性が近いと「助けて」と言いづらかったり、子どもが周りから変な目で見られるのではないかと危惧したり、ある日突然身に降りかかった貧困という事実を自身が受け入れられなかったり……さまざまな理由から行政やNPOなどの地域の支援とつながりづらいケースは多いようなんです。また、支援団体によっては、事前登録や申し込みが必要で、必要なものがすぐに届かず、1ヶ月先になってしまうケースもあるようです。そうした、“間に合わない”状況をつくらないために、「おてらおやつクラブ」では緊急度が高いとわかれば迅速に対応できる体制をつくられています。また、各地の「おてらおやつクラブ」に賛同したお寺には幟(のぼり)が立っていて、「ここから送ってくれたのかなと、うれしくなった」という感想をいただくこともあるようです。お寺はもともと、誰もが自由に出入りできる匿名性の高い場所だから、行きやすくて、助けてと言える安心感みたいなものがあるのかもしれません。フェリシモ独自で支援を行うのでは、受け手の安心感をそこまで担保できないと思います。「おてらおやつクラブ」さんとのコラボレーションだからこそ、ギフトを安心して受け取っていただけるんだと思うんです。

誰かの思いに触れられる仕組みにしたい

「おてらぶ」での取り組みでは、いつも“仏縁”を大事にしたいと思っています。“安心感”と言い換えてもいいかもしれません。貧乏と貧困は違うという話はよく聞きます。貧乏は、耐えられるレベルかもしれないけれど、貧困とは、生活が苦しい上に社会的に孤立してしまう状況のことを言います。窮地に立たされて、自分は一人だと感じてしまう。そういう状況になってしまうと、きっと、“もの”が届くだけでは心が満たされないと思うんです。心の奥の方で人とのつながりを求めているかもしれません。そこで大切なことは、たとえ知らない人から届いた荷物であっても、“誰かとつながっている”という実感を持っていただくことです。誰かの思いに触れることが、生きる勇気になるんじゃないかなって僕は思うんです。だから、荷物の中には、「おてらぶ」のメンバーによる手書きのメッセージや手彫りのハンコを押したお手紙を入れさせてもらっています。プロジェクトを手がけていて時々辛くなるのは、フェリシモオリジナルの段ボールで配送した際に「以前はフェリシモさんでお買い物をしていました。今はとても買える状況ではないなかで、またこの箱が届くとは思っていませんでした」という切実なメッセージが届いたときです。いつ誰が貧困の当事者になってもおかしくない、今の社会を物語っていますよね。

「おてらぶ」のメンバーによる手書きのメッセージや手彫りのハンコを押したお手紙を入れさせてもらっています。

支援する人も受け取る人も、きっとご縁でつながっている

これは仏教の考え方が好きな私だからかもしれませんが、私たちの理解を超える、なにか大きなものに守られていると感じることができたら、「大丈夫」と思えることもあるのではないかと思うんです。仏さまのように、見たことがないからこそ、その存在をずっと信じていられることもあります。信仰というのは、目に見える仏像や、教義、ときに人物に集まるようにも思えますが、私は、結局自分自身の心の中にあるものだと思います。内に存在するものを、どれだけ信じることができるのか。それが、人を強くしてくれて、自信を持って生きていくこととつながるように思います。私は何かの対象に依存するのではなくて、自分を奮い立たせるために「仏さまのご縁があるから今日もがんばろう」と言い聞かせています。お客さまにも、支援を受け取る人にも、「みんなでおそなえギフト」がご縁の一部であり人とのつながりであることを感じてもらえたらうれしいです。

通販企業だからこそのマーケティング力を生かして

コロナを境に、世界的な社会情勢が変わってきましたが、私が一番感じている変化は、やはり日本国内の困りごとにみんなが目を向けるようになったことです。社会問題に対して関心はあるけれど、どこか自分のことではないという意識だった人たちが、いつ誰が当事者になってもおかしくない状況だと実感しはじめた。商品企画のためにアンケートをとっていても、以前よりも当事者意識が高まっている雰囲気を感じます。私たちは、ダイレクトマーケティングの企業ですから、社会情勢の変化や、生活者のニーズを敏感にキャッチすることができます。そのリアルな情報は、架空のお客さま像ではない、リアルで精度の高いデータです。さらに、幅広いジャンルの商品を取り扱う企業だからこそ、いま、社会で必要とされているものが、洋服なのか、雑貨なのか、食品あるいは基金なのか常に検証を行なっています。そうした特性を、販売ではなく支援にも結びつけることができるわけです。私たちフェリシモが支援を行うことの意味は、「ともにしあわせになるしあわせ」の追求でしかありません。自分たちだけが豊かになるのでなく、みんなにとってよいものが共有されて、みんなが豊かになること社会をつくっていくこと。それ以外にないですね。

“一人じゃないんだ”と実感できる場をつくっていきたい

人って助けてもらうとき、多少の差こそあれ「恥ずかしい、申し訳ない」と思ってしまいますよね。けれど、助けてもらうとか支援を受けるというのは、一方通行ではないと思います。今は、たまたま自分が支援してもらう順番がめぐってきただけであって、そこで踏ん張ることで、そのご縁をまた別の人につないでいけるかもしれない。そういう「ご縁」を信じながら、「みんなでおそなえギフト」をはじめとした活動をこれからも地道に継続していきたいと思います。

今後は、食品以外にもジャンルを広げていきたいんです。特に、教育に力を入れていきたいですね。フェリシモには「ミニツク」などレッスン系の商品も豊富にありますので、そうしたノウハウをいかした学習支援のアイテムなども開発できそうです。また、子どものことを優先させてしまうお母さんたちのための化粧品などもお送りしたいですね。そして、誰もが「大変だよね」と言い合えて、自分は“一人じゃない”と感じられるコミュニティをつくりたい。プライバシーの問題もあるので、とてもデリケートなことですから、慎重に進めたいと思っていますが、“一人じゃない”と実感できる場があれば、少しでも「貧困」を回避できるかもしれないですよね。

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