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とうほくIPPOプロジェクトレポート -みなとまちセラミカ工房(阿部鳴美さん)-前編

「とうほくIPPOプロジェクト」支援先活動レポートシリーズは、第4期と第6期の支援先である「みなとまちセラミカ工房」阿部鳴美さんに、お話をうかがいました。

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JR女川(おながわ)駅前に広がるプロムナードに構える、スペインタイルの製造と販売をおこなっている「みなとまちセラミカ工房」を訪ねました。

 

女川(おながわ)は東日本大震災前には漁港として栄えた町。震災による津波で、多くのものを失いました。線路が復旧し新しい駅舎ができて、女川駅は復活しました。再開発で生まれたプロムナードを訪れる人も増えました。それでも、プロムナードから目と鼻の先に広がる女川湾の手前の道路や周辺の高台の建設工事は今もつづいており、土を盛る作業や道路の修復が日々進められています。

 

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JR女川駅の前に広がるプロムナード

 

 

「みなとまちセラミカ工房」のなかは、鮮やかな色彩のタイルが壁一面に飾られていて異国情緒が漂います。スペインのブルーやイエローの鮮やかなタイルや表札プレートも並ぶなか、オリジナルデザインのタイルたち、なかでも日本の魚や風景のモチーフに目を奪われます。

 

こちらのショップ兼工房で、代表の阿部鳴美さんにお話をうかがいました。

 

 

■女川町でスペインタイルの工房を立ち上げた経緯を教えてください。

 

わたしは震災までの13年間、女川町で仲間と一緒に陶芸を習っていました。閉校した小学校の分校を地域で活用してもいいということで、陶芸をされている先生が講師になって陶芸教室を開いてくださっていたんです。習い始めてから陶芸がどんどん楽しくなって、週に2回通うほどのめりこんでいました。そして平成23年(2011年)3月11日、東日本大震災が起きました。

 

わたしの自宅も、陶芸を習いに通っていた元小学校も、津波に流されてしまいました。2ヵ月間ほど避難所で暮らしてから仮住まいへ移り、ようやく日々の暮らしになじんだころの9月、震災以来初めて陶芸仲間6人で集まりました。住むところがばらばらになっていたので、震災以来、全員が揃ったのは初めてでした。

 

ほんとうは7人なのですが、おひとりは震災でお亡くなりになりました。久しぶりに話をしているうちに、また以前のように陶芸をやりたいね、と盛り上がって。道具も焼成窯もなくなってしまったけれど、何かよい方法はないか調べて、震災復興の助成金を申請してみました。でも、結果は却下。仲間たちともう一度陶芸をやりたいっていう内容だったんですから、却下されて当然ですよね(笑)。

 

ちょうどそのころ、コンテナを活用した仮設住宅を設計された建築家の坂茂先生と復興イベントのお手伝いで出会ったんです。もう一度陶芸をやりたいんです、というお話をしたところ、坂先生がご縁をつないでくださって、千住博さんが学長を務められている京都造形芸術大学さんから、焼成窯を寄付していただけることになりました。

 

何かししら町の復興に役立てないかと考えていたところ、スペインタイルを紹介していただき、震災からちょうど1年後の3月11日女川を出発し、スペイン研修に参加しました。バレンシア地方の街をブルーやイエローを基調としたタイルが明るく彩っていて、歩いているだけで気分が高揚し、心躍る思いがしました。また、博物館には何百年も前に作られたタイルが展示してあり、時が経っているのに当時それを作った職人さんの思いを感じるようなとても不思議な体験をしました。

 

その時、これだ!と思ったのです。スペインタイルで女川町を彩ることができたら、これからもこの町で暮らす人たちを元気づけて、そしてここを訪れる人たちの心に潤いを与えることができるんじゃないか、と。後世までずっと遺せるものを私たちの手で作っていける、そんな希望の光を感じるスペインタイルにすっかり惚れこんでしまいました。

 

帰国してから、さっそく復興協議会にかけあい、内閣府の助成プロジェクトに応募し採択されて、仲間や一緒にやりたいと言ってくれた人、6人でスタートすることになりました。女川町の住宅や宿泊施設のプレートの製作などから徐々に活動を広げていきました。

 

 

■とうほくIPPOプロジェクトの支援はどのように活用されましたか?

 

当初販売していたのは、マグネットや表札などで、ほかに仮設住宅での陶芸体験や絵付け教室などを行っていました。本格的な活動拠点を作りたくて、建設中だったこの場所への移転をする際の、電気焼成窯の移設や内装のための資金として活用させていただきました。ほかには、製作スタッフの技術向上のための研修費用や、町中に設置されているスペインタイルの案内マップも作らせていただきました。

 

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この場所への移転後は、来店される方がそれまでの10倍くらいに増えました。復興祭のときなど、多いときは1日に1300人ほどのお客さまが来店されたこともあります。
企業団体や学生さんが、視察や研修で来られることも多いです。

 

メモリアルワークショップでは、2枚のタイルづくりをします。1枚はご自分用に、そしてもう1枚は町に残していただき、女川町に飾られます。これまでに町内に約1200枚飾られています。スペインで訪れた街のように、いずれ女川町がたくさんのタイルで彩られる日がやってくることを思うとわくわくします。

 

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 メモリアルワークショップの様子    

 

 

後編につづく 

 

【2018年秋取材:KY】 

 

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みなとまちセラミカ工房
https://www.ceramika-onagawa.com/

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