昔、日本のお寿司の海苔巻きの海苔は海外では人気なかったんです。「この黒いのなに～」的な。中にはラッピングだと思ってとっちゃう人とかもいました。
しかし、日本食が大人気になり、お寿司が世界中で食べられるようになりました。
磯の香りを世界の人が理解するようになってきました。
この辺りで人気のレストランは？とショコラティエに聞いたらかなりの確率でお寿司を人気店としてすすめてきます。海外ではどの街でもお寿司屋さんはあります。最近はラーメンも。
もちろん、日本食ブームはチョコレート界にも早くから訪れ、まず「抹茶」。これはほんとに世界に理解されました。
なんちゃって「抹茶」はないです。どの国もおいしさがわかってる味がします。
その次に来たのは「ゆず」です。これも大ブームでした。ゆずチョコは一気に世界に広がりました。
すだち、しょうゆ、味噌なんかも海外でちらほら見るようになりました。
その中で急に世界に広がりつつあるのが、この「海苔」です。

海のものとチョコ？
日本人だったらおそらくあまり考えないと思うんですが。海外のショコラティエは屈託なく素材を見ます。一部のショコラティエがやってみたところ、これは今までにないおいしさだ、と。
確かに。これは「うまい」です。チョコと海苔はチョコの歴史上とっても特別なハーモニーです。
日本文化とチョコが重なった瞬間です。

実は初めてこの海苔チョコを私に食べてみ。と言ったのは、あの人です。15年以上前です。
しかもガチの美しいボンボンで作り上げた人がいます。
あのフレンチトラディショナルな〈ロワ〉さまの職人さん、ヴァイオレットさんが私が薄暗い地下のアトリエに行ったとき、楽しそうに出してくれたのです。そのときまだ日本の食材はそんなに人気ではなかったので、レストランでもほとんど見なかったし。そうそうたるイノベイティブなスターショコラティエさえ、考えてもみなかったと思います。
日本人が海苔を食べるのも「こんな雑草食べるの？」的な感じでTVとかでも取り扱われてました。ただとっぴな感じで。
ヴァイオレットさんは日本人をからかってるのか？ふざけてるの？と思うくらいの状況でした。
冗談のつもりだろうに、やけにきれいな仕上げのボンボン。
食べてみたら、ええ？！なにこれ？悪くない。ちゃんとボンボンにカカオに溶け込んでハーモニーになってる。
しかし。。私にはこの時まだ、この味に反応できなかったのです。この時代に、これを反応できた人がいたら会ってみたい。
はい、面白いです。どうも。じゃ。トラディショナルなチョコはどこですか？的な反応に見えたかも。
ヴァイオレットさん、スルーしてごめんなさい。あなたはあのとき世界のどのスターショコラティエよりも最先端で実験してたんですね。

世界が今、追いついたのを知ってるかな。もうヴァイオレットさんは引退されてます。
いろいろなショコラティエが、ほら私海苔使うの一番でしょ？って出してくれます。それでいいのです。味っておいしいと感じるのは経験からなので、おいしいは食文化と共に変化して行きます。
世界のいろいろなショコラティエが海苔チョコを作るなか、この方の作るチョコが一番海苔の感じがします。
ベルギーの〈エリス〉さん。堂々たる海苔チョコです。

ハーモニーが見事に出来上がっています。
海苔チョコを一度体験してみたかったら、これを食べてほしい。
おいしいってどんどん進化しまくって、変化しまくって、どんどん幅が広がっています。おいしいは無限です。
次はどんなおいしいを私たちは経験するんでしょうね。楽しみです。

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