前回に引き続き、刺しゅう作家・マカベアリスさんのインタビューの最終回は、刺しゅうに対する思いや魅力について語ってくださいました。
マカベさんは、図案の目新しさや技術を誇示するようなめずらしいステッチではなく、シンプルでも植物の生命力を表現したい、とおっしゃられます。刺しゅうに惹かれた理由は、「ひと針ひと針時間がかかるけれど、手間をかけたぶん愛おしい。絵と違って、刺しゅうはできあがると立体感が出て、手のあたたかみにふれ、なでたくなる」からなのだそうです。
「手づくりの魅力って、まわりの人を喜ばせることができることだと思うんです。ちょっとでも手をかけたものは相手の心をあたたかくしますよね。とくに家事や育児、介護など手を使うことが多い人こそ、苦しい時に手を動かすとラクになれると思います。私も14年前、家族の闘病を経験したんです。その時にしていた編み物にとても救われて……。不安や恐怖でいっぱいだった頭の中がラクになった。手を動かすことは、精神や頭のお休みになるんだなって気づいたんです」。