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ベトナムのコーヒー農園と日本のチャレンジド、たくさんの思いがつながるBIG SMILE COFFEEのストーリー【前編】

2021.7.14

ベトナムのコーヒー農園と日本のチャレンジド、たくさんの思いがつながるBIG SMILE COFFEEのストーリー【前編】

ベトナムの貧しい生産者の運命を変えた 日本のコーヒー焙煎士との出会い

ベトナムの農園から届く希少なコーヒー豆を、チャレンジドのみなさんがハンドピックすることで、さらに雑味をオフ! おいしく味わうことで作り手の支援にもなるハッピーでスマイリーなコーヒーが、フェリシモの C C P(チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト)がプロデュースする、BIG SMILE COFFEE。

このBIG SMILE COFFEEで取り扱うコーヒーは、業界でも今、大注目されているベトナム産のファインロブスタ種。日本でこの希少なロブスタが飲めるようになった背景には、「8 COFFEE ROAST(ハチコーヒーロースト)」の黒田吉範さんと、高品質ロブスタの生産に独学で打ち込んできた「Future Coffee Farm」のトイ・グエンさんとの運命的な出会いがありました。ベトナムの産地に何度も足を運び、トイさんと深い信頼関係を育んできた黒田さんのお話を、C.C.P(チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト)の永冨恭子が伺います。

話し手・黒田吉範さん(ハチコーヒーロース 代表)
聞き手・永冨恭子(フェリシモCCP プランナー)

※チャレンジドとは…
ハンディキャップのある人たちを“神様から挑戦する課題を与えられた人たち”とポジティブにとらえた呼び方。

誰も知らなかったベトナムの珠玉のコーヒー

永冨 永冨

2017年に初めてベトナムへ?

黒田さん 黒田さん

「20年くらい前にベトナムにすごくおいしいコーヒーがあった」とコーヒー鑑定士の先輩から聞いて、興味本位でベトナムに行ったのが最初です。

たまたま現地で一緒にモーニングを食べた若者が「The Coffee House」というベトナムの大手コーヒーチェーンのマネージャーにつないでくれて、ロブスタのサンプルをいくつかもらいました。

帰国後にそれを先輩とカッピングしたんですよ。すると、すごく良いのが一つあって、その豆の生産者を探すところから始まりました。

永冨 永冨

ロブスタ種は、それまでコーヒー業界では評価が低かったんですよね。

黒田さん 黒田さん

コーヒーは“アラビカ種100%”が売り文句になっているくらいで、僕も20年くらいコーヒー屋をやっていますが、ベトナムやインド、ウガンダで主に栽培されているロブスタはシングルで飲めるようなレベルのものはなく、品質が一切上がっていないという印象でした。

黒田吉範さん(ハチコーヒーロース 代表) 黒田吉範さん(ハチコーヒーロース 代表)

当時は周りの同業者も誰一人ホーチミンで行われているコーヒー展覧会

に行っているような人はいなかった。誰もやっていないのなら、まず自分が最初に行ってみようと。ベトナムでも「なんでロブスタを?」と、まずそこに興味を持たれましたから(笑)。

永冨 永冨

私もバオロク市(ラムドン省)の農園ツアーに2019年休暇を取って同行させてもらいましたけど、丁寧に扱われず道端で豆を干しているような生産者もずいぶん見かけました。

【同行時のレポート】

黒田さん 黒田さん

そうやって悪く作っても全部買い取ってもらえるという土壌がずっとありました。品質は低く世界一安いコーヒーというのが常識です。“どうせ高く売れないのなら適当に作ろう”その様な風潮があります。

基本的には少数民族の人たちが農園に来て収穫するのですが、彼らの工賃は収量で決まるから、熟していないグリーンの実をどんどん採っていってしまう。

それで、車がバンバン走るような道に敷いた藁(わら)の上でコーヒーチェリー(実)を乾燥させています。安く買い叩かれるから、そういうやり方しかできない。

若い生産者は夢も希望も持てないので続々野菜に転向しているという現状がありましたね。所得が低いので農家を継げない若者たちも多いです。

永冨 永冨

その中で黒田さんが取引しているトイ・グエンさんの農園「Future Coffee Farm」の丁寧な作り方は際立っていました。

永冨恭子(フェリシモCCP プランナー) 永冨恭子(フェリシモCCP プランナー)
黒田さん 黒田さん

すごく良い豆を作っていた生産者が、トイさんでした。トイさんの農園では、赤く熟したチェリーを収穫したらその分、工賃を高く払うようにして、少数民族の人たちを指導しながらやってきています。

通気性の良い竹の乾燥台(アフリカンベッド)を作って豆を干したり、トイさんは独学で学びながら、道具も全部手作りして、自分なりのやり方を試していました。

例えば、パルプドナチュラル(※)とも呼ばれる糖度を残すハニープロセス精製方法(※)では、彼はさらにひと手間かけて精製後に少し熟成させています。

※コーヒー精製方法にはナチュラル、ハニープロセス、ウォッシュドがあり、ハニープロセスはチェリーから果肉を除去し、粘液質(ミューシレージ)は残したまま乾燥させる。ナチュラル特有の香味と洗浄による精製度を両立できるメリットがある。なお、ミューシレージの残し具合でハニープロセスも数種に分類される。

黒田さん 黒田さん

トイさんは川に浮かぶ小さな無人島と牛を買って、トウモロコシを育てるところから事業をスタートしています。

僕が初めてホームステイさせてもらった時も、奥さんが土間でトントンって料理を作ってくれて、びっくりするくらい貧しい家に住んでいた。正直彼が一番貧しかったですね。でも、貧しいから彼を応援したわけではないんです。現地であらゆる農家さん回りましたが、彼の豆の品質がダントツに良かった。

彼は貧しいのに、僕が他の農家さんへ行く時のタクシー代を知らないところで出してくれたりしていて、彼はあの時僕に人生をかけたんだなと、あとになってわかりました。

数々の申請手続きをようやくクリアして彼の農園から輸入を始めた時、17枚にもなるベトナム語と英語の長い手紙をもらいました。そこには彼の生い立ちから僕との出会い、スペシャリティコーヒーを作るまでのことまでがずっと書いてあって、彼の人柄と情熱が肌で感じとれました。

僕も彼のために何ができるか、そこからスタートしました。

より特別なコーヒーに! “チャレンジド”の集中力

永冨 永冨

貧しさからなかなか抜け出せないベトナムのコーヒー農家の応援が、さらに貧しい少数民族の人たちの応援にもなって、日本ではハンディキャップのある人たちの仕事にもつながっていったことがすごいなぁと。

伊丹市のはこべ工房(※)の人たちがハンドピックを始めたことが、私たちC.C.Pとの出会いにもなって、BIG SMILE COFFEEプロジェクトにつながりました。

黒田さん 黒田さん

10年ほど前、宝塚の老人ホームでハンドドリップコーヒーをふるまうボランティアをしていた時、工房の皆さんに運んでもらうことになったんですよ。テーブル番号に「あ」「い」とか平仮名の目印をつけるとわかりやすくなるから、『これ「あ」のところに持っていってね』という具合に始めました。

そうやって運んでくれていた女性のお母さんからある日、「娘から『仕事に行くからズボンを買ってほしい』と初めて頼まれました」という話を聞いて、僕はすごく感動したんですね。

そこで、NPO法人の代表とも話をする中で、欠点豆を取り除くハンドピックという作業を、工房の皆さんにお願いできないかと提案しました。この作業が得意でハマる人が結構いて、僕もハンドピックは大変な仕事だったから非常に助かっています。

※兵庫県伊丹市のNPO法人「手をつなぐ はこべ工房」が運営する福祉事業所。市の障害者福祉センター1階の「茶房はこべ」の運営委託を受け、今ではハンドピックに加えて、自家焙煎や給仕の仕事にも取り組んでいる。

永冨 永冨

ハンドピックは本当に大変な作業ですが、工房の皆さんの集中力がすごいですよね。黒田さんが適性を見抜いて、「ガッと全体を見ることが得意な人に最後を見てもらう」とか、それぞれの得意分野が活かせる流れをうまく作ってらっしゃる。

今でこそハンドピックを取り入れる福祉事業所が増えてきましたが、本当にその初期の頃の取り組みでしたね。取り組みが全国に広がっていること自体すばらしいと思いますし、工房の皆さんのおかげでコーヒーもおいしくなっていることが実感できます。

中編ではトイさんのサクセスストーリーや、BIG SMILE COFFEEのおすすめの飲みかたもご紹介します。

中編に続く

やってみよう

ごちそうさまを届けよう!

more felissimoでは、BIG SMILE COFFEE生産者のトイさんや、はこべ工房のみなさんへのメッセージを募集しています。BIG SMILE COFFEEを飲んだ感想「ごちそうさま」を送りませんか? 「ごちそうさまを届けよう!」プロジェクトの詳細は下記をご覧ください。

profile

黒田吉範さん

「8(ハチ)コーヒーロースト」代表。兵庫県宝塚市でコーヒーショップや自家焙煎のコーヒー豆・焙煎機などの販売を手がける。10年前からコーヒー豆のハンドピックを通して福祉事業所とのパートナーシップを育てる。ベトナムで2年にわたりコーヒー農家を歩き回り、2019年からフューチャーコーヒーファームの日本総代理店として輸入販売を始めた。

profile

永冨恭子

フェリシモ CCPプランナー。2003年のCCPのプロジェクト立ち上げ時から商品企画を担当。全国の福祉事業所やNPOとともに、障がいのある人たちの個性や能力を価値とした商品づくりに取り組み、これまで250種類以上の商品を企画開発しました。黒田さんとの出会いは2014年、ハンドピックした世界のコーヒーと福祉事業所のハンドメイド雑貨のコレクションからでした。

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