2022.8.10
フリーアナウンサーの宇垣美里さん、「なかよし」編集部の図師いづみさんをゲストに迎えた、笑顔あふれるフェリシモ魔法部の座談会。
最終回では、改めて「何かを好きでいること」の素晴らしさについて語り合いつつ、お二人から読者への熱いメッセージをいただきました。みなさんも、いまいちど自分の「好き」と向き合ってみませんか？
profile
宇垣美里さん
2014年4月にTBSに入社。アナウンサーとして数々の人気番組に出演。
2019年3月にTBSを退社後、オスカープロモーションに所属。
現在はフリーアナウンサーとして、テレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか、女優業や執筆活動も行うなど幅広く活躍中。
昨年12月には週刊文春での漫画評連載をまとめた「今日もマンガを読んでいる」を発売。
profile
図師さん
1996年講談社入社。現「なかよし」副編集長。ファンタジーものや魔法少女もののマンガを数多く担当。担当作品に「ヴァンパイア男子寮」「東京ミュウミュウオーレ！」「どうせ、恋してしまうんだ。」「ぴちぴちピッチaqua」など。
profile
前田
フェリシモのブランド「魔法部」の商品企画やプロモーションを担当。「魔法部」は、魔法使いの出てくるファンタジーや魔法少女の物語が大好きだった人に向けて、「大人になっても自分の好きな世界を愛し続けられるよ！」と提案しているブランドです。
前田
次は、if的な質問になるのですが、ご自身の好きなことが「好きじゃない」世界の自分がいたとしたら、どんなふうになっていたと思いますか？
図師さん
きっと少女漫画は作れていないですね。出版社にも入っていなかったと思います。友だちの数も今より少ないかもしれません。
想像力や、ときめく気持ちが養われてないから、人の気持ちがわからない大人になってたかもしれないです。
宇垣さん
私は、語彙が圧倒的に足りていなかったのではないかと思いますね。
あとは、言語化する、気持ちを言葉にするっていう行為には、思考も深く関わってくる。言葉が奪われてしまうと、思考も貧しくなる。だからこそ、物語を通して言葉にふれるという行為はすごく大切なんだと思います。自分は魔法少女にも、お姫様にも王子様にもなったことはないけれど、物語にふれることで、「こんな気持ちなんだ」「みんな同じ人間なんだ」って想像できるし、共感できる何かを見つけることもできる。それってやっぱり、物語の持つものすごく大きな力だと思います。
前田
私は、もし自分が物語を読むのが好きでなかった場合、いまよりもっと他人の気持ちを想像しない人になっていたのではないかなと思います。まわりが見えていなかった登場人物が、周囲にそれをガツンと指摘される話が好きなんですが、そういう話を読むたびに、他人に対する気持ちの想像力を持つことの難しさを感じますし、自分もそうなっていたかもしれない、と思います。
宇垣さん
好きなものがあるということのいちばんの素晴らしさは、その「好き」を媒介にして、名前も知らなかった人とすぐに友だちになれるということ。私は今でも、ふと「カードキャプターさくら（CLAMP）」や「美少女戦士セーラームーン（武内直子）」の名言が会話にパッと出るときがあるのですが、それが説明なしで通じる人とは話が早い（笑）。さくらちゃんの「絶対だいじょうぶだよ！」が即伝われば、この人は仲間だ！っていう、そんな感覚ってありますよね。
特に海外だと、日本のマンガやアニメって、海を超えた共通言語になるんですよね。英語が得意じゃなくても、アニメの話でどこまでも盛り上がれる。
宇垣さん
私自身、旅先のホテルのロビーで知らないお兄さんと「新世紀エヴァンゲリオン（原作：庵野秀明）」の話でめちゃくちゃ盛り上がったり、道を尋ねたお姉さんから「日本人なの？ 私、日本のアニメ好きだよ！」って話しかけてもらったり。英会話の塾に通っていたときは、オーストラリア人のおじさんの先生から「『美少女戦士セーラームーン』は、すごいね。あれは夢だね！」って興奮気味に語られたり（笑）。推しの名前ひとつあれば、国境も超えられるし、年齢も越えられちゃうんですよね。
図師さん
そうやって好きなコンテンツを通して話が盛り上がるのって、本当に楽しいですよね。
前田
素敵なお話をいろいろとお聞かせいただき、今日は本当にありがとうございます。最後に、いま自分の好きなことを好きだと堂々と言えないという人に向かって、お二人からエールをお願いします。
図師さん
自分の興味あること、好きなことは心が自然にそうさせていることなので、誰にも止められませんし、止める権利もありません。
私が敬愛する脚本家の山田太一氏のあるドラマのセリフに「物や人を深く愛せるというのは誰もが持てるものじゃない。努力しなければ持つことの出来ない能力なんだ」というものがあります。この言葉を中学生のころに知って、私はいろいろなことを深く愛せる人になろう、と決めました。
マンガでも、ゲームでも、ファッションでも、音楽でも、なんでもいいと思います。ご自分がいいなと思ったものを、深く知って愛してほしいです。そのことが、もっとご自分を違う世界やステージに連れて行ってくれますし、ご自分や周囲の人たちを深く愛することにつながると思います。「なかよし」の作品も、世界中の読者が深く知って愛してくださったからこそ、このようにコンテンツやキャラクターの人気が長く続いているのだと思っています。
図師さん
ジャンルは違っても、ひとつのものを深く知って愛していくと、人間の真理というか、古代から未来まで永遠に人の心に伝えていかなくてはならないメッセージは同じなんだ、と気づく瞬間があると思ってるんです。私は、それは「愛と美」だと思っています。少女マンガ的に言い換えると「好き」とか「かわいい」ですね。この2つこそ、人間がいつの時代も求めて止まないものであり、それがないと生きていけないものであり、人の世の平和を保つための大事な要素なのではないかと思っています。
対象をしっかり愛することが、人への理解を深め、そして人生を豊かにする。特に現代は、戦争があったり環境問題が深刻だったりと辛いことも多いですが、そんなときこそ「愛する力」を身につけて、希望を持って前に進んで行ってほしい、と思います。
今は周りに好きなことを堂々と言えない環境にいるという方も、いつか必ず、その「好き」を通じて心から共感できる仕事上でのパートナーや、お友だちが現れるはずです。恋は冷める日が来るかもしれませんが、「好き」を通じて出来たつながりは一生もので、なかなか冷めません(笑)。もし、そうやって誰かに出会うことができたなら、ぜひそのつながりを大事にしてほしいです。
宇垣さん
私は、好きなことを別に堂々と言わなくていいと思います。あなたがそれを好きだったら、それでいい。わかろうと思わない人に向かって、わかってもらう努力をする必要はまったくありません。
もしそれで孤独を感じることがあったとしても、世界のどこかには、必ずあなたと同じように、「好き」に心を揺らし、心をときめかせて、豊かな日々を送っている仲間がいるはず。今はSNSもあるし、名前も知らない人とすぐに友だちになれる。その「好き」がなければ会うはずのなかった人とつながれる。それっていちばんの尊さだし、それこそが自分の「好き」を大切にしてきた結果得られる宝物なんじゃないかと思います。好きなものを好きでいることでつかめる、かけがえのない何かというものが、誰にでもきっとあるはず。だから、あなたの「好き」を大切に守って、育てていってほしいです。
前田
今日はお二人の心の中を少し見せていただいて、改めてあこがれる気持ちと、強い自分でいられる勇気をもらいました。就職前の自分に、お二人の言葉を聞かせてあげたいです…。
図師さん
この対談を通して、「なかよし」の作品を愛してくださるお二人に会えたのもご縁のひとつで、とてもありがたく思っています。前田さんの「好き」という気持ちがここまで深くなかったら、この場もなかったわけですから。そして、宇垣さんが強いということが改めてわかりました（笑）。本当にかっこ良かったです。
宇垣さん
それはやっぱり「カードキャプターさくら」と「美少女戦士セーラームーン」のおかげです（笑）。
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ゲラゲラと笑えなくてもいい。だけど、せめてあなたが大切な誰かと、ふふふと心通わせられますように。
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1. あーりんさん 2022年08月10日 21:58
宇垣さんが大好きで宇垣さんのインスタからこの記事を知りましたが、漫画を含むフィクション作品が好きな私にはじーーんときました！漫画を通して自分自身や他人、世界を知ろうとすることができるよなーと改めて思いました。何回もこの特集やってほしいです！