おそろいのはなし
~フェリシモことば部×
岡野大嗣さん往復書簡~
後編

2025年9月11日より、フェリシモことば部では歌人の岡野大嗣さんを審査員にお迎えし、『おそろい短歌賞2025』を開催することになりました。

ことばが好きな全年齢の方を対象に、”おそろい”という言葉をテーマに行う短歌賞。

開催に際して、ことば部と岡野大嗣さんで往復書簡を交わしました。

今回は後編。岡野さんと短歌の話をさせていただきます。

前編はこちら⇒おそろいのはなし 前編


ことば部部員やまけん(以下:やまけん):短歌のこともお聞きできればと思います。

岡野さんは普段どういうときに短歌を作っていますか

岡野:多くは気持ちが動いたときに書いています。ただ、逆に気持ちが動かないときに書き始めることで、気持ちが動き出すこともあるんです。そういうときは、書きたいテーマがあって書くというよりも、目に映るもの、耳に入る音、触れているものを断片的にメモしていく。そのうちに、その瞬間の自分が少しずつ浮かび上がってきて、気持ちが動いていく感覚がありますね。

やまけん:なるほど。

例えば、岡野さんがいつも短歌を作られる際に気をつけていることや、大事にしているものについてもお伺いしてもよいでしょうか。

今回短歌を初めて書かれる、という方も中にはいると思うので、ぜひお聞きしたいです。

岡野:ちょっと禅問答のようですが、「気をつけていること」「大事にしていること」を意識しすぎないようにする、というのを大事にしています。抽象的かもしれませんが。

原点を振り返ると、僕にとって短歌は「ひとりごと」でいいんです。誰かに説明するための言葉でなくてもいい。むしろそういうものだからこそ、読む人の心に届くことがあると思っています。

そういえば、ことば部さんの中にも短歌がお好きな方が多いと聞きました。

皆さん自身は普段どんな時に「短歌」に触れていますか。

やまけん:そうですね、部員それぞれでまた違うと思うのですが、お風呂に入る前だとか、散歩する前だとか、読んだ後に時間が取れるタイミングで読むことが多いです。この歌を自分なりに解釈してみたり、解釈せずとも、読んでから出かけると街の景色が少し変わって見えたり、そんな時間がすごく好きですね。

岡野さんの短歌も、自分の中でお守りみたいになっていて、頭に浮かべながら街を歩いたことも何度もあります。

岡野さんがおそろいから浮かぶ短歌、のこともお聞きしたいです。

ご自身のものでも、ご自身でないものでも。

岡野:そうですね。自作で恐縮ですが――

パフェ越しにぜんぜん写ってくれていい またいつかゆっくり来ましょうね

ですかね。時間を共有している短歌ですね。

やまけん:とっても素敵です。パフェはそれぞれ1つずつ頼んでいるかもだし、1つを分け合っているかもしれない、だけれど、凄く、おそろいを感じますね。

それって確かに時間を共有しているからかもしれない。なんだかやさしいです。

今回は往復書簡をことば部と交わしてくださって、ありがとうございました。

最後に、今回応募くださる方にメッセ―ジをいただいてもよいでしょうか。

岡野:短歌にしてみて初めて「そうか、これもおそろいなんだな」と気づくような歌を楽しみにしています。よくある「おそろい」のイメージを、別の角度から照らすような作品に出会えたらうれしいです。


前編後編にわたり、往復書簡を読んでくださってありがとうございました。

改めてになりますが、今回の「おそろい短歌賞」では「おそろい」ということばをテーマに短歌を募集しています。

初めての方も短歌を書いてみるきっかけに、日々のことに気付くきっかけになればいいなと思っています。

募集期間は10月19日(日)まで。

ぜひ、お待ちしております。

『おそろい短歌賞2025』ご応募はこちらから

text:やまけん(フェリシモことば部)


岡野大嗣(おかのだいじ)さん

1980年、大阪府生まれ。歌人。単著に『うたたねの地図 百年の夏休み』『うれしい近況』『音楽』『たやすみなさい』『サイレンと犀』、共著に『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』『今日は誰にも愛されたかった』『あなたに犬がそばにいた夏』。がんサバイバー当事者による、闘病の不安に寄り添う短歌集『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える』を監修。連載にmeets regional「レッツ短歌!」。2023年度 NHK Eテレ「NHK短歌」選者。

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