-部員のつぶやき-
元気があれば、なんでもできる

座右の銘を聞かれると、いつからかこの言葉を選ぶようになった。

「元気があれば、なんでもできる」

プロレスラーから政治家、事業家としての顔も持つ、アントニオ猪木さんの名言だ。

とにかくエネルギッシュなイメージのある猪木さんの言葉を、どう見ても軟弱なわたしが口にするものだから、予想外の回答に驚いた反応をする人も多い。

でも、この言葉は単なる「気合」とか「根性」を表現したものではなく、人間の本質をついた言葉だと思っている。

たとえば、ひどい二日酔いのとき――

からだを起こして、ただ座っているだけでもつらい、あの感じ。

昨夜の自分は「2~3時間眠れば大丈夫」「朝からバリバリ仕事できる」と思っていたのに、朝の身支度すらままならない。髪の毛をセットするのもおっくうだし、着ていく服にこだわってなんていられない。とにかく、なにもできなくなる。

あるいはまた、失恋をしたとき――

現実が受け入れられなくて、なにも手につかない、あの感じ。

洗濯機を回したり掃除をしたり、自炊するなんてもってのほか。部屋が荒れようが、やせ細ろうがどうでもいい。とにかく、なにもする気になれない。

ところが二日酔いがおさまれば、バリバリ仕事もできるし、おしゃれにも気を遣えるようになる。
失恋から立ち直れば、部屋は掃除が行き届き、自分のために大好物のマカロニグラタンだって焼いてしまう。

そう、人間は、というか少なくとも自分は「元気がないと、なにもできない」生きものなのだ。

そのことを実感するたびに、猪木さんの言葉が頭の中に聞こえてくる。

「なんでもできる」は、さすがに言い過ぎかもしれないけれど、それくらい元気というものが大事ということ。

そして、もうひとつ。

心身ともに元気がないときは、無理をしなくてもいい。
そんなメッセージも込められているように思える。

アントニオ猪木さんは晩年、闘病中の病室から「元気ですかー?」とYouTubeで呼びかけ続けていた。

でもそれは「元気を出していこうぜ!」という意味ではないと思う。

「元気があれば、なんでもできる」
でもその前に、いまの自分は元気なのか?問いかけることが大切だと伝えたかったのではないだろうか。

元気がないときは、無理をしない。
元気があるときは、なんでもできるかもしれない。

だからこそ、まずは自分の元気を確かめながら、生きていきたいと思う。

text & photo :しもざき(フェリシモことば部)