-ことば部の本棚-
”軽さ”って。
人は選ぶことを、選ばされる。
例えば、今日のお昼ご飯。
コンビニで自分はおにぎりを買っても良かったし、パンでもよかった。
(そしておにぎりを選んだ)
大小問わず、自分に訪れる様々な選択の結果、今の自分があり、この文章を書いているのだ。
選ぶことで、自分に責任が伴い、選ばないなら責任は発生しない。
あえて雑に言うなら、選ぶことは重さであり、選ばないことは軽さともいえる。
『A子さんの恋人』の主人公A子(漫画家)は、日本にいる腐れ縁のA太郎とニューヨークにいる翻訳家のA君、二人の男性の間で揺れ続ける。
この作品はA子が、選択と軽さに向き合っていく物語だ。
選ばなければ軽やかで、お互いに他の人と代替可能な存在となりえる。
だから、「英子」でなく、「A子」であり、「A太郎」と「A君」なのだ。
A子は、そんな自分にモヤモヤもする。
A子には、結末に納得がいかず、ずっと書き直したかったデビュー作があった。
この作品を完成させること、それを選ぶことで、A子は自分とも向き合っていくのだ。
デビュー作と向き合うことが、A太郎とA君と向き合うこと、自分が大事にしたいと思うことに、リンクしていく。
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そういうことは、自分にもある。
例えば、海外にずっと行きたいと思っていた。
海外に行きたい気持ちがあるのに、行かずに後回しにしている。
そのモヤモヤに向きあうことが、他の全てにリンクしていく。
もしかすると、何かを選ばないまま、ずっと軽やかでも良かったのかもしれない。
デビュー作を書き直す必要なんて、なかったのかもしれない。
それでも、A子さんがモヤモヤしている、という事実が確かにあって、それに向き合うことだけがA子さんにとっては正解なのだ。
「やはり 答えは君にしか出せないのだ」
第7巻でA太郎は、A子さんを見て、そんな言葉をつぶやく。
A子さんに向けられたその言葉は、A太郎にも、A君にも、そして、読者である自分にも、同時に向けられている。
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さっきコンビニで買ったおにぎりをほおばり、美味しいなと思う。
本当は、パンを買った方が美味しかったかもしれないけど、自分が選び、満足しているから、きっとおにぎりが正解だったのだ。
やはり、答えは自分にしか出せないのだから。
text&photo:やまけん(フェリシモことば部)

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