ことばと短歌〜岡野大嗣さん×坂口涼太郎さん往復書簡〜前編

2026年9月11日より、フェリシモことば部では歌人の岡野大嗣さん、そして俳優の坂口涼太郎さんのお二人を審査員にお迎えし、『おそろい短歌賞2026』を開催することになりました。

”おそろい”に思うことや気持ちを、短歌に。

開催に際して、審査員の岡野大嗣さんと坂口涼太郎さん、そしてことば部で往復書簡を交わしました。

それぞれの想うことばと短歌のおはなし。

ぜひご覧ください。


ーことば部部員やまけん(以下:やまけん)
今回『おそろい短歌賞』の審査員を引き受けてくださり、ありがとうございます。
3度目の開催となる今年は、選者もお二人となっての開催となります。
岡野さんは第一回からの3度目、そして坂口さんは今回初めて選者としてご参加いただく形となりますが、それぞれ今のお気持ちをお聞きしてもよいでしょうか。

ー岡野大嗣さん(以下:岡野)
「3回続けば本物」だと信じていて、とにかく、3回目もいい賞にできると、この先10回、20回と続けていけそうな予感があります。
今回は坂口涼太郎さんも加わってくださるので、より多彩な選歌になりそうで楽しみです。

ー坂口涼太郎さん(以下:坂口)
3は好きな数字です。ひとりが点、ふたりは線だとすると、3人で初めて形ができます。
「3人寄れば文殊の知恵」と言うように、3は世界の成り立ちの起源な感じがします。
そんな、3度目の「おそろい短歌賞」に参加させていただき光栄です。
岡野さんとはおそろいな部分がたくさんありました。
たくさんおそろいがある私たちだけれど、みなさまからの短歌をそれぞれどうやって味わうのかは、おそろいな部分とおそろいではない部分があると思います。
どこがおそろいで、どこがおそろいではないのか、その全てがとっても楽しみです。

ーやまけん
3度目で、3人。確かに、3にまつわることの多い今回ですね。
2人だけに限らず、3人やもっともっと多くの人でのおそろいもあるかもしれません。
『おそろい短歌賞』はその名の通り”おそろい”をテーマにした短歌賞です。
昨年の往復書簡の際に、岡野さんはおそろいを「時間の共有」と表現されておりました。坂口さんは「おそろい」にどんなイメージがありますか。

ー坂口
それでいうと、私は「気持ちの共有」かもしれません。
岡野さんと初めて会ったとき、「”BENNIE K”の曲いいよね!」という「おそろいの気持ち」を共有できて、「おそろいの時間」を過ごせたことが、私と岡野さんの「おそろい」です。

ーやまけん
気持ちの共有、とっても素敵です。
物のおそろいだけじゃなく、気持ちや時間など、形にならないものもおそろいになる、というのが、”おそろい”という言葉の素敵なところだなあと思います。
お二人が初めてお会いされた際のイベントに、自分もお邪魔させていただいていたのですが、そのとき”ことば”についてもお話されていましたよね。
お二人は”ことば”というものを、どう捉えておりますでしょうか。

ー岡野
言葉とひとくちに言っても、僕は、「説明のためのことば」と「歌のことば」があると思っています。
前者は、文字通り、たとえば説明書やプレゼンテーションの資料を作るときに用いられる「ことば」ですね。「歌のことば」は、伝えることを前提としていない「ことば」。「言葉にならない気持ち」の輪郭をなんとかつかもうとするときに頼りになるものです。
ひとりごとや、気分を乗せるだけのハミングに近いかもしれません。
何ともいえない気持ちをかたどるために発したひとりごとやハミングがたまたま誰かに届いて、その人の内面にも作用していく。
「歌のことば」には、ときにそんなおそろいをもたらすことがあると感じています。

ー坂口
ひとりからふたりになったときに生まれたおそろいの音や形。
それが3人になり、10人になり、どんどん広がっていって、それぞれの場所で自然とおそろいになったものですね。

ーやまけん
ありがとうございます。
お二人の話を聞いて、ことばの持つ自由さを、改めて感じました。
そんなことばの持っている広さや自由さが好きだから、自分はこうしてことば部にいたり、短歌が好きなのかもしれないな、と思いました。
今回の短歌賞でも、自由に、それぞれの思うおそろいがたくさん集まると嬉しいです。

※後編は10月6日(火)にUPいたします。

『おそろい短歌賞2026』ご応募はこちらから

text:やまけん(フェリシモことば部)


岡野大嗣(おかのだいじ)さん

1980年、大阪生まれ。歌人。単著に『サイレンと犀』『たやすみなさい』『音楽』『うれしい近況』『うたたねの地図 百年の夏休み』『時の辞典』『夜なのに夜みたい』、共著に『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』『今日は誰にも愛されたかった』『あなたに犬がそばにいた夏』『ユニバーサリー・アニバーサリー』。2026年9月に初の翻訳絵本『わたしの わくわく どこにある?』を刊行。2023年度 NHK Eテレ「NHK短歌」選者。各所で短歌のワークショップや講座を開催中。

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坂口涼太郎(さかぐちりょうたろう)さん

1990年、兵庫県生まれ。俳優。森山未來演出の舞台「戦争わんだー」にダンサーとして出演し、デビュー。NHK連続テレビ小説「風、薫る」「らんまん」、NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」、映画「ちはやふる」シリーズ、ミュージカル「RENT」など話題作に出演。NHK「あさイチ」では唯一無二のキャラクターで暴れ回るほか、歌人やシンガーソングライター、振付師など幅広く活躍。昨年は初エッセイ「今日も、ちゃ舞台の上でおどる」を上梓。自作の短歌”涼短歌”も収録されている。

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