ハッピートイズプロジェクトは、手作りのぬいぐるみ(通称・トイズ)を国内外の子どもたちに届ける活動です 。
毎年発売される参加セットのレシピに沿って自宅の布などでぬいぐるみを作り、フェリシモに贈っていただきます。集まったトイズはクリスマスシーズンに各地でおひろめ展示されたのち、日本や世界の被災地や保育施設などに寄贈されます 。
これまでに68.000体のトイズがフェリシモに届き、60の国と地域の子どもたちのもとに「笑顔の親善大使」として旅立っています。
今回は、2006年から展示会場となっている神戸ファッション美術館の学芸員、大山弘美さんへのインタビューです 。
ご自身も毎年趣向を凝らしたトイズを作っている大山さんに、プロジェクトへの想いや心温まるエピソードを伺いました 。

神戸ファッション美術館
ファッションをテーマにした公立では日本初の美術館。
18世紀以降の西洋衣装、70カ国を超える民族衣装などを多数収蔵している。
1階展示室では、多彩なアートを紹介する「特別展示」と貴重な収蔵品を活用した「コレクション展示」を開催。
3階ライブラリーでは、国内外のファッション関連の蔵書約40,000冊のほか、20世紀初頭からのファッション雑誌のバックナンバーなどが閲覧できる。
公式HP:こちらから
心をつなぐ、手づくりのぬいぐるみの力
ー大山さんがハッピートイズを作り始めたきっかけは何ですか?
神戸ファッション美術館に就任してすぐに、ハッピートイズのおひろめ展示を担当することになったことがきっかけです。
もともと、ぬいぐるみや人形を作ることは好きだったんですよね。

ーもともとぬいぐるみがお好きだったんですね。
きっかけは、手芸好きな姉でした。姉が作ってくれた「ボンちゃん」というぬいぐるみをもらってかわいがってたんです。
小学生の私がふわっと抱きかかえられるくらいの大きさで、大切にしていました。
買ったり、お土産でもらったりしたものではなくて、作ってもらったものを大切にするしあわせは、小さいころから実感してたんですよね。
抱きしめると手づくりのまろやかな綿の感触を感じて、今思えばこんな存在がそのころの内向的な自分の支えになってくれていた気がします。

ー手づくりの願いがこもったぬいぐるみを抱きしめると、心が通じ合っているようで、コミュニケーションができているように感じますね。
はい、ほんとうにそう感じます。
大学時代に人形劇のサークルに入っていたとき、子どもたちに人形を見せながら「応援してー!」というと、人形に向かって「がんばれー!」と言ってくれるんです。
人形やぬいぐるみと人とは、自然にコミュニケーションができるんだと思います。
願いをこめたトイズたち
ー今まで、たくさんのトイズを作られてきたと思いますが、どのように楽しまれてきましたか?
国内外の子どもたちに贈ることができるのも素敵なことですが、同じキットで2つめ、3つめをつくって、家族や友人に贈ったりしています。
技術は下手だったとしても、心温まる贈りものになりますよ。
私はトイズとおそろいのワンピースのセットを作って、孫の誕生日祝に贈ったことがあります。
次の年の初めにはトイズとツーショットの年賀状が送られてきました。
こういうエピソードがある方は、私以外にもたくさんいらっしゃると思います。


ーすごいですね!手作りのぬいぐるみと、おなじワンピースを着れるなんて、わくわくします。ほかにも、大山さんがトイズを作られる際、どんな工夫をしてますか?
ファッション美術館で展示をするので、ファッションとの関連を考えるのも楽しいです。
美術館で結婚衣装展をしたときには、トイズに結婚式の衣装を着せたり、浮世絵展のときには、時代劇風のぬいぐるみのコスチュームを作成して、ご来場された方に見ていただきました。
着物は着付け方などもこだわって作ったんですよ。



おひろめ展示会から国内外の子どもたちへ
ー型紙は一緒だけど、作る方によって布選びやコスチュームなど、無限に個性がでるのもハッピートイズを作る楽しみです。おひろめ展示では、たくさんの方のトイズが集まりますよね。
毎年参加してくださる方もたくさんいらっしゃって、同じアクセサリーを付けていたり、同じ作風で作られているぬいぐるみを見つけると、つい「また会いましたね」と話しかけてしまいます。
ほかにも、過去にはトイズを制作するワークショップも何回か開催しました。
お客さまの中には、お子さまの着られなくなった服や、給食で使っていたナプキンなどをご持参されて、思い出をぬいぐるみに作り変えている方もいらっしゃいます。5人子どもがいるからと、毎年5つ作られている方もいらっしゃいました。
作り手の方それぞれに、トイズに対する気持ちの込め方は多様にありますね。

ーおひろめ展示は、そんな願いのこもったトイズが集まる場所なんですね。
それはもう、個性豊かで楽しいですし、これから国内外に旅立つみんなが集まる、決起会のような雰囲気です(笑)
ぜひ、たくさんの方に見に来ていただきたいです。
ー最後に、大山さんが感じるハッピートイズプロジェクトの魅力を教えてください。
今の時代、工場で安価に大量生産でぬいぐるみは作れるけれど、トイズにはひとつひとつに個性があって、ドラマがあって、愛がこもっています。
だからこそ受け取った子どもたちも、それぞれにかわいがってくれていると思うんです。
つくることで終わらないしあわせの連鎖の夢がある企画に携われるのが、トイズの魅力ですね。
ーありがとうございます。
自分だけの願いを込めたトイズを作って、ハッピートイズプロジェクトに参加してくださる方が増えたらうれしいです。

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