場の雰囲気ってなんだろう。

あの人の素敵暮らしを拝見 2019.10.09

こんにちは。暮らしの装飾家のミスミノリコです。
この夏から夫の故郷である山形県鶴岡市に移住して新しいお店の開店準備中です。前回は私の仕事「ディスプレイデザイナー・暮らしの装飾家ということ」についてお話ししました。

お店づくりのその後

今回は現在取り組んでいる場づくりについてお話ししたいと思います。今、私たちは初めてのお店づくりに奔走していますが、次から次へ立ちはだかる「手続き」というハードルにヘトヘトになりながらも初めて過ごす鶴岡の夏の美しさに心打たれています。田んぼの緑、空の青、白い雲。海に落ちる壮大な夕日。何を見ても美しくかけがえのない風景の連続です。これだけ緑色ばかり見る毎日は人生で初めてかもしれません。光の雰囲気も何か違う。

この風景をみんなにも見せたい!と思っていたところ、お店の準備中にもかかわらず仕事で、プライベートで、各地からお客さまが何組も鶴岡まで来てくれました。ありがたく、喜ばしい限りです。

その中で特にうれしかったことは、長い付き合いの友人が準備中のお店を見て開口一番、「前に住んでいたお家のリビングみたいだね」と言ってくれたこと。以前住んでいた部屋は決して広くはないけれど、たくさんの人が集う場所でした。自分も初めて訪れた人も心地よいと感じる空間づくりを目指してきましたが、場所が変わってもあの頃と同じ雰囲気を出せたようです。〇〇みたい、と思わせる、その場の雰囲気って何でつくるのでしょう。

場を包む心地よさ

お店づくりは、「私たちはこういうものです」という空間丸ごと自己紹介の場であると思います。予算も限りがあるので、足りないものがあれば工夫で乗り切るしかない。でも長く過ごす場所なので妥協はあまりしたくない。それは今までしてきた部屋づくり、空間づくりと変わりません。

その場所の雰囲気は何でつくられるのでしょうか。選んでいる物のセレクトもあると思いますがそれ以前のところで光も重要な要素だと考えています。自然光の入る部屋なのか、照明が必要なのか。照明なら明かりの色はどんな色が良いのか。自分が包まれたい光をイメージしてみてください。光は壁に反射しますが、壁は一番大きな面積を占めるパートでもあるので光の影響を受けやすい場所です。壁に光が反射してできた空間の持つ空気……〇〇っぽいってわかりやすくいうと空気感なのかな、と思います。

お店をつくる際にトライしたかったことの1つとしてウォールペイントがあります。居抜きで入ったお店の壁は白。このままでもオープンはできますが、もっとここが気持ち良く感じる色があるんじゃないかと思ったのです。今あるツヤ感を抑えてマットにすれば、影も美しくなるのでは。この土地の美しい自然の色と共存するような白はどうだろうか。冬、晴れの日の少ない日本海側特有のグレイスカイをイメージしてみてはどうか。でもどのくらいのグレーの濃度が合うのだろう?色々アイデアが湧いてきました。

助っ人と紡いだインスピレーション

そんな時に心強い助っ人が現れました。鎌倉でペイントの会社をしているCOATの明子さんです。わざわざ鶴岡まで来てくれて、カラープランの相談に乗ってくれたのです。それは楽しい時間でした。

今のドアの赤も可愛いけど明るめなのですこし渋めにブリックっぽい色に。これはこのあたりの赤土のイメージ。トイレはmisty mountainという色に決めました。月山を歩いた時の霧のイメージ。そうやってこの土地からインスピレーションを受けた色を基本軸にするカラープランニングが面白そうだと思いました。

何事もテーマが大切

何かを決める時にテーマを言葉にするのは大切です。家族と共有するために、また、自分がブレないためにも。言葉があって、テーマカラーがあって、参考にするビジュアル(画像)もあれば完璧です。これは雑誌の切り抜き、写真集やインターネットで色々探せますね。家づくりなら施工会社さんや業者さんに説明をするときに欠かせないでしょう。
家づくりみたいな大ごとでない場合でも、自分のテーマを持つのは大切だと思います。買い足したいインテリアアイテムがあったとして、本当にそれが必要なものなのか、探しているものなのかは普段から明確なイメージがあれば迷うことは少なくなります。私は仕事柄、このディスプレイのテーマはなんですか?などはよく聞かれる質問です。「なんとなく良いと思ったから……」が答えでは話はそこで終わってしまいます。
テーマがきちんと決まっていれば人にも説明ができるし、迷ったときに自分にも説明ができる。各々が好きなものを持ち寄って自然と素敵になれば一番ですがなかなかそうはいきません。なのでテーマを共有するのは大切だと思います。

今回だったら鶴岡、という場所がテーマになりましたが、この土地から受けたインスピレーションを色に置き換えて壁を塗るというのは意味のあることだなと思い実行する力が湧きました。

とは言うものの、この広い店内を自分たちだけで本当に塗れるのか?

塗装の時はわざわざ鎌倉からペインターさんもいらしてくれるとのことでしたので、この機会を独り占めするのはもったいない。せっかくならワークショップ形式にして、この体験を共有しようと思いました。ペイントのハウツーを教えてもらって壁塗りにチャレンジし、参加してくれた方々と変化するこのお店の過程を楽しめばお客様もこのお店に愛着を持っていくださるかもしれない。。。

次回はワークショップの様子をお伝えできればと思います。お楽しみに。

Profile

季節の「暮らしびと」

ミスミノリコさん

ミスミノリコさん

ディスプレイデザイナー/暮らしの装飾家
店舗のディスプレイや雑誌、書籍のスタイリングなどで幅広く活躍する一方でふだんの暮らしに取り入れられる、デコレーションアイデアや手作りの楽しさを発信している。著書として『繕う暮らし』『小さな暮らしのおすそわけ』『繕う愉しみ』(主婦と生活社)がある。また、ダーニングマッシュルームをはじめとした繕いワークショップも各地で開催している。

※「暮らしのBlog」にて内容ご覧ください。