忘れられない夏の宝物

あの人の素敵暮らしを拝見 2020.09.16

ヘルシンキ在住のテキスタイルデザイナー、島塚絵里と申します。

2007年からフィンランドに移住し、4歳の娘と夫の3人で、フィンランドの首都、ヘルシンキに暮らしています。
フィンランドの暮らし、テキスタイルデザインの仕事、北欧の子育てなど、幅広いテーマで楽しく綴っていけたらと思っています。よろしくお願いします!

今月は「集めることの喜び・楽しみ」として、いくつか夏のアクティビティをご紹介しています。今回は花を集める楽しみ、そして、もらう喜びについて綴ろうと思います。
 

4月生まれの4歳の娘は、石や花を集めるのが大好きです。

この夏は家族でロードトリップに出かけたのですが、毎日のように道端に咲くお花を摘んでは、「まま、はい!」とプレゼントしてくれました。
小さいころには、摘んでいい花といけない花の区別が難しかったのですが、近ごろはようやく「植えられた花は摘んではいけない」ということがわかってきたようで、はらはらすることが少し減りました。
 

■予期せぬハプニング

この夏、レンタカーを借りて、ヘルシンキから北へ目指しました。北極圏の街、ロバニエミからさらに220キロ北上した人口約10名の村に、小さな電気も水道もない夏小屋があり、3年前から毎年訪れています。

今回はそこに1週間ほど滞在して、のんびりする予定でしたが、ある日の午後、突然原因不明の腹痛に襲われました。痛み止めも一向に効かず、一睡もできませんでした。

次の日の朝、1時間ほど離れたところにある医療センターに家族で行き、お医者さんに診てもらうことになりました。

 

結局、虫垂炎の可能性があるとのことで、タクシーに乗り、150キロ南のロバニエミの病院に一人で向かうことになりました。

医療センターで検査している時、娘は花を摘んでくれました。そして、タクシーに移動する時にはぴったり私に寄り添い、ぎゅっと手を握りました。
言葉はありませんでしたが、「ママ、大丈夫だよ」という思いが伝わりました。

娘からもらったお花は、なかなか読もうと思っても読む暇が見つからなかった、トーべ・ヤンソンの「サマーブック」に挟んで、お守り代わりに総合病院に持って行きました。
 

■小さく、あたたかな、心の支え

家族と遠く離れた2日間は心細くもありましたが、遠くにいる家族の愛情が胸にしみる時間でもありました。

手術の翌日には退院することになり、再び220キロの距離をタクシーに乗って北上し、家族が待つ夏小屋に戻りました。
夏小屋に着くと、娘が自分で摘んだお花を持って、迎えにきてくれました。

その日、娘は点滴や採血の跡でいっぱいの腕を心配そうに見つめ、紙で作ったバンドエイドを貼ってくれました。小さな我が子が、いつのまにか心の支えになってくれていることに気づき、心が温まりました。

夜は蚊のせいで、寝つきが悪かったのですが、家族の寝息を聞いて、なんだかほっとしました。娘からもらったお花は本に挟んで、ドライフラワーにしました。
私の一生の宝物です。

Profile

島塚絵里さん

島塚絵里さん

ヘルシンキ在住のテキスタイルデザイナー。
2007年に移住し、アアルト大学でテキスタイルデザインを学ぶ。マリメッコ社のアートワークスタジオでデザイナーとして勤務したのち、2014年より独立。現在はマリメッコ、サムイ、キッピスなど国内外のブランドにデザインを提供している。Pikku Saari(コッカ社)というテキスタイルブランドをプロデュースしている。サントリー、オールフリーのCMの衣装デザインを担当。2018年、宮古島にオープンしたHotel Locusのオリジナルテキスタイルをデザイン。