手仕事は推し活! 「好き」が導くパンチニードル

作成日:
更新日:

編み物、毛糸、羊、糸紡ぎ、手織り、そしてパンチニードル。「好き!」な気持ちと好奇心を胸に自分の道をひた走る井上 直美さんの手づくり遍歴は、まるでスーパーハッピーな推し活トークを聞いているよう!

幼いころからの毛糸愛、さまざまな経験を経て出会ったパンチニードルのこと、ご自身のお店「WOOLY(ウーリィー)」に込めた想いまで、たっぷりと伺いました。

 

人生を切り開く「好き」のチカラ

小さなころから編み物が大好きで、近所の手芸店で売られている毛糸に胸をときめかせていたという井上 直美さん。社会人になってからもその情熱は冷めることなく、気の合う友人とmixiの手芸コミュニティを立ち上げて仲間を増やし、手芸イベントを行う規模にまで育て上げたり、仕事終わりの時間を利用してニットスクールの夜間コースへ通ったりと、「好き!」を追求し続ける日々を送ります。

「着実に知識が増え、編み物の腕が上達していく中、そのことにあまり喜びを感じていない自分がいて。そこでようやく、複雑な技法を習得することより、シンプルな編み方で毛糸そのものの魅力を味わうことの方が好きだということに気がついたんです。そんなときに友人から『毛糸って、自分で紡げるらしいよ』と聞き、いても立ってもいられず糸紡ぎを習ってみたら驚くほど楽しくて。家でもやりたい!と意を決し、紡ぎ車を購入したのがひとり目の出産直前でした(笑)」

左:羊毛をほぐして整えるカーダーは、手紡ぎに欠かせない道具。/右: 紡ぎ車でリズミカルに羊毛を紡ぐ井上さん。

臨月の大きなおなかを抱えて夜な夜な糸を紡ぎ、そのまま出産。産後も子育ての合間、深夜や早朝に糸を紡ぎ続ける日々。
「頭を空っぽにして作業に没頭できる時間は、忙しい子育ての合間の大きな癒やしや息抜きになりました。糸紡ぎにはゴールがなくて、やろうと思えばいつまででもやれる。その自由さも魅力でした」

左:大好きな羊と羊毛にまつわる2冊。「毎晩お風呂場に持ち込んで、ふにゃふにゃになるまで読んでいました」/右: 紡ぐ前の羊の原毛。「羊の毛のような」「ふわふわの」などの意味を持つ「WOOLY」には「羊がもたらすすべてが好き」という井上さんの想いが込められている。

紡いだ毛糸は、オンラインストアや手づくり市などで販売。当時は手紡ぎの糸があまり流通していなかったこともあり、たくさんの人に喜ばれたそう。さらに手織りの技術も習得し、羊毛への愛と興味がどんどんふくらんでいく中、不思議なご縁とタイミングが重なり、紡ぎ車と織り機の輸入販売店のスタッフに。お客さまの前でデモンストレーションをするうちに、手紡ぎと手織りの知識はさらに確固たるものになっていきました。

そして2015年、職場の移転をきっかけに独立し、ワークショップと雑貨のお店「WOOLY」をオープン。手仕事のワークショップや作家を招いた個展のディレクションなど、スペースを生かした多彩なイベントを次々と行い話題を集めます。

自宅の庭小屋を改装してスタートした「WOOLY」は、3年前に埼玉県北本の「まちの工作室“てと”」の一角に場を移し、今年で10周年を迎える。
「WOOLY」が一角を占める「まちの工作室“てと”」。あたたかなロゴは書家の鎌村 和貴氏によるもの。

「『モノ』を売るというよりは、夢中で作業に没頭できる『時間』や、ものづくりの『喜び』、初めての『体験』など、目に見えないものを届けることのできるお店にしたかった」という井上さん。ワークショップで大切にしていることは、初心者でも楽しめる内容であること。必ず時間内に完成させられるものであること。それから、完成後に部屋に飾りたくなるような、本当に自分が欲しいと思えるものを提供することだそう。

「子育てやお仕事で多忙な方にとって、ひとりで作業に没頭できるワークショップは貴重な時間。やり残して持って帰らせてしまったら、未完成のままになってしまうかもしれない。それにせっかくなら、作って終わりじゃなくて、作品を部屋に飾ったり、日常的に使ったりして楽しんでほしい。作る喜びと達成感をしっかり感じていただけるよう、そのあたりは熟考しながら毎回企画をしています」

「できた!」の積み重ねが自信に

羊と羊毛への熱い思いを語る井上さん。背後の大きなタペストリーは、ポーランドのヤノフ村に伝わる二重織り。

井上さんのワークショップで特に人気があるのが、専用の針を使い、絵を描くようにザクザクと布に糸を刺して形作っていくパンチニードル。今は国産の道具やキットも簡単に手に入りますが、井上さんがパンチニードルに出会った2017年当時はまだ日本では普及しておらず、独学での研究の日々が始まったのだそう。

井上さんが初期に作ったパンチニードル作品。

「海外のサイトでパンチニードルを見かけて、『これは何!?』と衝撃を受けて。今までに得た手芸の知識を総動員して、写真を手がかりに分析し、海外から専用の針を取り寄せて、見様見真似で試作を重ねました。だんだん作り方がわかってくると、これがまた楽しくて楽しくて。試しにワークショップに取り入れてみたところ、とても喜んでいただけました」

鳥と花のモチーフがかわいいクッションカバーは、NHKのテレビ番組「すてきにハンドメイド」で紹介したもの。

2024年に出版された『いちばんわかりやすいパンチニードルの教科書』は、初心者でも挫折せずに楽しめる工夫をこらした井上さん渾身の一冊。「動画サイトを見てもわからなかったところがこの本で理解できた!」という感想も多く、今も版を重ねるヒット作となりました。

マット、コースター、ブローチ、ポシェットなど、すぐに使いたくなるパンチニードルの作品がずらり。

「今はパンチニードル人口も増えてきましたが、編み物や刺しゅうに比べるとまだまだマイナーな分野。これからもっと広がって、手づくりの1ジャンルとして当たり前に語られるようなものになったらいいなと思っています。パンチニードルの普及に、私の活動が少しでも貢献できていたらうれしいです」

パンチニードル専用針と、洋裁好きのお母さまから受け継いだ裁ちばさみ。

そしてこのたび井上さんに監修を務めていただいた「目指せ! もこもこマスター『はじめてさんのきほんのき』パンチニードルレッスンの会」は、初心者でも段階的にパンチニードルの技法が学べるステップアップ式のレッスンキット。ワークショップやレシピ監修を 年近く続けてきた井上さんならではの創意工夫がぎゅっと詰まった、とっておきの内容になっています。

「パンチニードルは、仕組みが単純で技法もおおらか。初心者の方でも絵を描くように気軽に楽しめるところが魅力です。コツは、少しずつでもいいので、焦らずに楽しみながら取り組むこと。少し根気のいるステップもあるけれど、プスプスと針を刺していくうちにだんだん柄や形が見えてくる楽しさは格別です。『できた!』の積み重ねで少しずつ自信がついてくると思うので、ぜひ全6回のレッスンで作る喜びを堪能してください」

WOOLY井上さんと作ったパンチニードルレッスン

井上さんが監修した、やればやるほど楽しくなるパンチニードルのレッスン。ぜひチャレンジしてみてくださいね。

WOOLY 井上さんと作った目指せ!もこもこマスター「はじめてさんのきほんのき」パンチニードルレッスンの会

パンチニードルの技法をさらに知りたいなら、こちらもチェックしてみてくださいね

 

WOOLY 井上 直美 さん
紡ぎ車、織り機の輸入販売店スタッフを経て、パンチニードルを中心としたワークショップと雑貨の店「WOOLY」を埼玉県にオープン。著書に『いちばんわかりやすいパンチニードルの教科書』(山と渓谷社)。

Instagram:@w_o_o_l_y

関連記事

最近読んだ記事

おすすめコンテンツ

手芸・手づくりキット、ハンドメイド雑貨のお買い物はこちら