バスケット形のお裁縫箱にはこんな物語が

2016年7月1日(金曜日)

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かつて日本の多くの家庭にあったバスケット形のお裁縫箱。昭和レトロなかわいさと軽く丈夫な使いやすさから、今も全国から修理の依頼や受注があるという隠れた名品。このお裁縫箱を60年以上作り続けている職人さんがいると聞き訪ねてきました。

発祥は自然豊かな鞄の生産地、兵庫県豊岡市

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コウノトリの郷として知られる兵庫県豊岡市は、日本でも有数の鞄(かばん)の生産地。もともと湿地帯に自生するコリヤナギ(行李柳)を編んだ杞柳(きりゅう)製品の発祥地であったことから、それらの技術がもととなり、昭和40年代ごろにバスケット形お裁縫箱の一大ブームを起こしました。

実はヨーロッパを起源とした日本オリジナル!?

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原型は「スウェーデンバスケット」と呼ばれるヨーロッパを起源とするデザイン。そのバスケットが日本独自の進化をとげて、国内で爆発的にヒット。豊岡で生産されたものが海外にも輸出されるようになり、アメリカやヨーロッパで当時使われていたもののほとんどが日本製だったそうです。

「お裁縫」から「手芸」へと変わりゆく時代の中で

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一大ブームが過ぎた昭和40年代中期を境に、バスケット形お裁縫箱の需要は下降の一途をたどります。高度経済成長を経て、物があふれる時代に。その変化とともに、家事として生活に密着していた「お裁縫」が、「手芸」という趣味のひとつになっていきました。

安価な海外品に追われる、ていねいな「ものづくり」

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家庭からお裁縫が消えていくのと同時に、安価な海外品がどんどん輸入されるように。当然、国産の材料を使い、すべて手作業で仕上げる日本のバスケット形お裁縫箱は採算が合わなくなり、相当数あった編み元も、次々となくなっていきました。

たったひとりの職人さんの手で生き続けていた!

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市場から消えてしまったかと思われていたバスケット形お裁縫箱を、全国で唯一作り続けていた職人さんがいらっしゃいます。佐藤商店の佐藤昭治さんは、この道60年以上の職人さん。現在86歳の佐藤さんの技術を絶やしたくないと、ある地元の鞄メーカーが立ち上がることになりました。

次回は、佐藤さんの技術を受け継ぐために立ち上がった地元の鞄メーカーさんについてご紹介していきます。

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